上海を拠点とする中国のLCC、春秋航空が、札幌/新千歳〜上海/浦東線を2026年10月25日から増便します。現在は週2便で運航している路線に2曜日を追加し、週4便体制とする計画です。増便分の航空券はすでに販売が始まっています。中国系航空会社による日本路線の運休・減便が1年近く続いてきたなかで、北海道路線を増やす動きが出たのは目を引きます。
なお、ここで取り上げる春秋航空は上海を拠点とする中国の航空会社で、便名は「9C」です。成田を拠点に日本国内線などを運航するスプリング・ジャパン(便名「IJ」)とは別の会社です。
増便の内容と運航スケジュール
現在、札幌/新千歳〜上海/浦東線は両都市発とも火曜日と土曜日の週2便で運航しています。2026年10月25日に始まる冬ダイヤからは、ここに木曜日と日曜日を追加して週4便になります。
| 便名 | 区間 | 時刻 | 運航曜日 |
|---|---|---|---|
| 9C8792 | 新千歳 → 上海/浦東 | 13:50発 → 17:15着 | 火・木・土・日(火・土は15分早着) |
| 9C8791 | 上海/浦東 → 新千歳 | 08:20発 → 12:50着 | 火・木・土・日(火・土は10分遅発) |
使用機材はエアバスA320型機です。この路線は中国東方航空も週3便で運航しているため、増便が実現すれば両都市間は週7便で結ばれることになります。曜日の重なり方によっては毎日どちらかの便が飛ぶ形になり、日程を組みやすくなります。
中国系航空会社の日本路線は1年近く縮小が続いてきた
今回の増便が目立つのは、日中間の航空路線がここ1年で大きく縮んだ後だからです。
2025年11月の高市早苗首相による台湾有事をめぐる国会答弁を受けて中国政府が自国民に日本への渡航自粛を呼びかけたことをきっかけに、中国系航空会社は日本路線の運休・減便に踏み切りました。2026年1月には、中国本土から日本へ向かう便のうち約40.4%にあたる2,195便が欠航または販売停止となり、運休した路線は50を超えました。
北海道も直撃を受けています。北京首都航空の新千歳〜北京/大興線は2025年11月18日、海南航空の新千歳〜西安線は11月21日、深圳航空の新千歳〜深圳線は12月13日をそれぞれ最後に運休しました。四川航空が2026年1月に予定していた新千歳〜成都線の就航も取りやめになっています。日本の地方空港と中国の地方都市を結ぶ路線が集中的に整理された結果、新千歳に残った中国本土路線はごく限られた本数になりました。
旅客数の側も戻っていません。日本政府観光局によれば、2026年6月の訪日中国人数は34万700人で前年同月比57.3%減、7カ月連続で前年同月を下回っています。同じ月の訪日外客数全体は314万8,600人で前年同月比6.8%減にとどまっており、台湾・韓国・米国・インドなど15の市場が6月として過去最高を記録しました。落ち込んでいるのは中国市場に限られた現象だといえます。
春秋航空はなぜこの時期に増便するのか
撤退が相次いだ市場で残った側に需要が集まる
供給が半分近くまで減っても、日中間を移動したい人がゼロになったわけではありません。ビジネス出張、留学、親族訪問、在留邦人の一時帰国といった需要は、観光需要ほど政治情勢に左右されません。運航を続けている便に需要が集中すれば、搭乗率は運休前より高くなります。春秋航空が増便に踏み切れる状況が生まれているのは、競合が退いたことで残った側の採算が改善しているからだと考えられます。
新千歳〜上海線に残っているのは春秋航空と中国東方航空の2社だけです。他社が戻ってくる前に便数を増やして曜日を押さえておけば、路線が正常化したときに有利な位置を確保できます。運休した路線の再開には時間がかかるとされており、その空白期間は先に動いた側の取り分になります。
日本人の中国旅行という逆方向の需要がある
見落とされがちですが、この路線は中国から日本へ来る人だけのものではありません。中国は日本の一般旅券保持者に対するビザ免除措置を2024年11月25日に再開し、その後延長して2026年12月31日まで、30日以内の滞在ならビザなしで入国できる状態が続いています。観光・商用・親族訪問・交流が対象です。
訪日中国人が減っている一方で、日本から中国へ向かうハードルはむしろ下がっています。上海はLCCでも数時間で着く距離にあり、ビザ取得の手間がないことは個人旅行者にとって大きな意味を持ちます。中国系航空会社にとって、日本発の旅客は自国の政治的な呼びかけの影響を受けにくい需要でもあります。増便分の2曜日を木曜と日曜に置いたことで、週末を絡めた短い旅程が組みやすくなる点も、この層を意識した設定に見えます。
冬の北海道は個人旅行の目的地として残っている
10月25日という増便開始日は冬ダイヤの初日にあたり、その先には雪のシーズンが控えています。中国からの北海道旅行は団体ツアーの印象が強いものの、近年は個人旅行の比率が上がってきました。渡航自粛の呼びかけが効きやすいのは旅行会社が売る団体商品で、自分で航空券と宿を手配する個人客までは一律に止まりません。実際、2026年の春節期間には道内のホテルで中国人客が半数を超えた例も報じられています。
団体需要が細っても、雪や温泉を目的にした個人客は一定数動きます。春秋航空はもともと価格を武器にする航空会社で、団体客向けの大量座席よりも個人客の実需を積み上げる形に向いています。冬季の北海道路線は、この会社にとって相性のよい市場だといえます。
週2便から週4便という「小さく増やす」やり方
今回の増便は、いきなりデイリー化するのではなく2曜日の追加にとどまっています。日中関係が正常化したわけではなく、渡航自粛の呼びかけも解除されていない状況では、大きく張ることのリスクが残ります。まず週4便で需要の戻り具合を測り、手応えがあれば冬ダイヤの途中や夏ダイヤでさらに積み増すという段取りが読み取れます。低いリスクで市場を試しながら、他社不在の間に足場を作っておく判断ではないでしょうか。
旅行者への影響と使い方
日本発で考えると、10月25日以降は新千歳から上海への直行便が週4便になり、中国東方航空の週3便と合わせて選択肢が広がります。北海道在住の人はもちろん、道内を旅行したついでに上海へ抜ける、あるいは上海から入って北海道を回るといった組み立てもしやすくなります。
ダイヤは上海発が朝8時20分、新千歳着が12時50分、折り返しの新千歳発が13時50分、上海着が17時15分です。日本発で使う場合、午前中は札幌市内で過ごしてから空港へ向かえるうえ、上海には夕方に着くので当日中に市内へ移動して夕食を取れます。帰りの便は上海を朝に出るため、最終日の朝はゆっくりできませんが、新千歳に昼過ぎに着けばその日のうちに道内の別の街まで移動できます。
利用にあたっては、LCCならではの点に注意してください。預け入れ手荷物や座席指定は原則として別料金で、運賃タイプによって変更・払い戻しの条件が大きく変わります。乗り継ぎが必要な旅程では、遅延が発生した場合の保護も限定的です。上海/浦東で春秋航空の国内線に乗り継いで中国各地へ向かうこともできますが、乗り継ぎ時間には余裕を持たせておくほうが安全です。
もうひとつ、この路線には政治情勢による運航計画変更のリスクが残っています。2025年秋以降、日中間では実際に多数の路線が短期間で運休に追い込まれました。増便分の航空券がすでに販売されているとはいえ、旅行の日程が動かせない場合は、変更・払い戻しの条件を確認したうえで予約する、出発が近づいたら運航状況を確認する、といった備えをしておくと安心です。
まとめ
新千歳〜上海線の週4便化は、便数だけを見れば小さな変化です。ただ、1年近く縮小一方だった日中路線で増便の話が出てきたこと自体が、この市場が底を打ちつつある兆しかもしれません。日本人にとってはビザなしで行ける上海への選択肢が増えるということでもあります。北海道と中国を行き来する予定がある人は、10月25日以降のダイヤを前提に日程を組み直してみる価値があります。


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