JR西日本が2025年度の輸送密度を公表 芸備線東城〜備後落合は25人、2,000人未満は19路線32線区

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JR西日本は2026年8月6日、2025年度の区間別平均通過人員(輸送密度)を公表しました。輸送密度は、その区間を1日1キロあたり何人が利用したかを示す数字で、路線の使われ方を比べるときの基本になる指標です。

今回の数字で、輸送密度2,000人/日未満となったのは19路線32線区です。この線区については、収支率などの経営状況が別途公表される予定になっています。2024年度のデータでも対象は19路線32線区でしたから、対象の範囲は変わっていません。

最も利用の少ない区間

2025年度に輸送密度が最も低かったのは、芸備線の東城〜備後落合と、木次線の出雲横田〜備後落合で、どちらも25人/日でした。1日1キロあたり25人という水準は、1両の列車に数人が乗っている状態が続いているとイメージすると近くなります。

路線・区間 2025年度 2024年度
芸備線 東城〜備後落合 25人 19人
木次線 出雲横田〜備後落合 25人 23人
芸備線 備中神代〜東城 83人 81人
芸備線 備後落合〜備後庄原 89人 76人
姫新線 中国勝山〜新見 95人 99人
因美線 東津山〜智頭 109人 137人
大糸線 南小谷〜糸魚川 135人 150人
福塩線 府中〜塩町 144人 158人
木次線 宍道〜備後落合 157人 144人
山陰線 益田〜長門市 197人 210人

芸備線の東城〜備後落合は前年度の19人から25人に増えていますが、水準そのものが変わったとは言えません。もともとの母数が小さいため、数人の増減で比率が大きく動きます。この区間は再構築協議会での議論が続いており、注目が集まって訪れた人が数字を押し上げた面もあると考えられます。

逆に目を引くのが因美線の東津山〜智頭で、137人から109人へと2割ほど減りました。姫新線の中国勝山〜新見、福塩線の府中〜塩町、大糸線の南小谷〜糸魚川も前年度を下回っています。

数字を読むときに気をつけたい区間

輸送密度の数字は、その年度に列車が走っていたかどうかに左右されます。今回の公表でも、2つの区間に注記が付いています。

美祢線の厚狭〜長門市は300人/日となっていますが、この区間は2023年6月30日から7月1日にかけての大雨で被災し、現在も列車の運転を見合わせてバスによる代行輸送を続けています。数字は運転を見合わせている期間も含めて算出されたものです。2025年8月には山口県と沿線3市(美祢市・長門市・山陽小野田市)がBRTでの復旧で一致しており、鉄道としての運転再開は予定されていません。

山陰線の長門市〜小串・長門市〜仙崎は207人/日ですが、この区間も2023年の大雨で長期にわたって運転を見合わせていました。長門市〜人丸と滝部〜小串が2024年6月22日に再開し、被害の大きかった人丸〜滝部の復旧により山陰線が全線で運転を再開したのは2025年9月27日です。つまり2025年度のうち、およそ半年は一部区間が不通のままでした。翌年度の数字はこれより上がると見ておくのが自然です。

新幹線と都市部は伸びています

利用の少ない区間ばかりが注目されがちですが、全体としては増加傾向が続いています。

路線・区間 2025年度 2024年度
山陽新幹線 新大阪〜博多 86,716人 81,316人
山陽新幹線 新大阪〜岡山 124,261人 115,937人
山陽新幹線 岡山〜広島 97,652人 91,230人
北陸新幹線 上越妙高〜敦賀 25,268人 24,188人
東海道線 大阪〜神戸 343,164人 339,152人
大阪環状線 天王寺〜新今宮 282,177人 272,423人

山陽新幹線は新大阪〜博多で6.6%増えました。区間別では新大阪〜岡山が7.2%増、岡山〜広島が7.0%増と、東側ほど伸びが大きくなっています。関西と中国地方を結ぶ移動、それに関西空港や大阪から山陽方面へ向かう訪日客の流れが押し上げていると考えられます。

北陸新幹線の上越妙高〜敦賀は25,268人で、区間別に見ると上越妙高〜富山28,103人、富山〜金沢27,459人、金沢〜福井22,438人、福井〜敦賀20,688人と、西へ行くほど少なくなる形が続いています。敦賀での乗り換えが定着した2年目として、全区間で前年度を上回りました。

在来線でも、関西線の亀山〜加茂が978人から1,065人へ、加古川線の西脇市〜谷川が293人から345人へと増えた区間があります。すべての地方路線が一様に減っているわけではありません。

この数字が地域の議論を動かしていきます

JR西日本がこうしたデータを毎年出すこと自体に、意味があります。

開示が協議のスタート地点になっています

輸送密度2,000人/日未満という線引きは、単なる分類ではありません。この基準に入った線区については収支率などの経営状況が別に公表され、その数字が地元自治体との協議を始める根拠になります。実際、芸備線では再構築協議会が設けられ、2026年3月25日の第6回では鉄道として再構築する場合と路線バスとして再構築する場合の参考費用が示されました。2026年7月16日には第7回が開かれています。

大糸線の糸魚川〜南小谷でも、2026年4月28日に「大糸線(糸魚川・南小谷間)地域公共交通検討会議」の初会合が糸魚川市で開かれました。糸魚川市・小谷村・新潟県・長野県・JR西日本で構成され、2026年度末までに方向性を出すことを目指しています。この区間の輸送密度が150人から135人へ下がった今回の数字は、その議論に持ち込まれることになります。

存続か廃止かの二択で考える必要はありません

輸送密度25人という数字が出ると、廃止の是非という話に直行しがちですが、この議論はもう少し細かく考えたほうが実情に合います。鉄道、路線バス、小型バス、需要に応じて走らせるオンデマンド交通と、輸送手段には幅があります。1日1キロあたり25人という規模に対して、線路と橋りょうとトンネルを維持し続ける形が最適なのかという問いは、地域の足を守ることと矛盾しません。

美祢線がBRTでの復旧に落ち着いたのは、この考え方に沿った結論といえます。被災した鉄道施設をそのまま復旧するには多額の費用がかかる一方、輸送量は300人規模です。鉄道の形を残すことではなく、移動手段を残すことを優先した判断でした。

一方で、廃止すべきという結論を急ぐ必要もありません。因美線の東津山〜智頭のように前年度から2割減った区間がある反面、関西線の亀山〜加茂のように増えた区間もあります。数字が動く理由を見ずに基準値だけで機械的に処理すると、伸びしろのある区間まで失うことになります。年に1度の公表を、そのための材料として見るのが妥当でしょう。

新幹線の伸びが地方路線を支える構図

見落とされやすいのは、山陽新幹線の6.6%増という数字が、赤字の地方路線を維持する原資になっているという点です。JR西日本の収益構造では、新幹線と京阪神の都市圏が稼ぎ、その一部が地方路線の維持に回っています。逆に言えば、新幹線と都市圏の利用が落ち込めば、地方路線を支える余力も減ります。

訪日客が増えている今は、この構図が比較的うまく回っている時期です。ただし特定の需要への依存は、そのまま脆弱さにもなります。訪日客の流れが何らかの理由で細れば、真っ先に影響を受けるのは輸送密度の低い線区への配分でしょう。今回の数字が安定して見えるからといって、地方路線の議論が先送りできる状況ではないということです。

旅行者への影響と、乗るなら意識しておきたいこと

旅行の計画という観点では、押さえておくべき点がいくつかあります。

美祢線の厚狭〜長門市は現在も鉄道の運転がなく、代行バスでの移動になります。BRTでの復旧が決まっているため、鉄道として乗ることは今後もできません。時刻表アプリで検索すると鉄道路線として表示される場合がありますが、実際の移動手段はバスです。所要時間も鉄道時代とは異なるので、乗り継ぎを計画する際は代行バスの時刻表を直接確認してください。

山陰線は2025年9月27日に全線で運転を再開しており、観光列車「〇〇のはなし」も同日から運転を再開しています。下関から益田まで日本海沿いを走る区間は、いま乗れる状態にあります。

輸送密度が100人を下回るような区間は、そもそも列車の本数が極端に少ないという実務的な問題があります。芸備線の東城〜備後落合や木次線の出雲横田〜備後落合は1日数往復の世界で、乗り遅れると数時間待つことになります。訪れるなら、時刻表を先に見てから旅程を組むのが前提です。

将来的な議論が進んでいる区間に乗っておきたいという人は、大糸線の糸魚川〜南小谷が2026年度末に方向性を出す予定であることを覚えておくとよいでしょう。結論が出てすぐ列車が止まるわけではありませんが、議論の節目は近づいています。

まとめ

2025年度の輸送密度は、山陽新幹線と都市部が伸びる一方、輸送密度100人未満の区間がそのまま残るという構図を改めて示しました。2,000人未満の線区は19路線32線区で前年度と同数、対象の顔ぶれも大きくは変わっていません。

数字だけを見て存廃を語るより、その数字が運休期間を含むのか、議論がどの段階にあるのかを合わせて見るほうが実態に近づきます。旅行者としては、美祢線が代行バスであること、山陰線は全線で乗れる状態に戻っていることを押さえたうえで、本数の少ない区間は時刻表から旅程を組み立てるのが確実です。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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