JR北海道釧路支社は2026年8月7日、観光列車「くしろ湿原ノロッコ号」の運転を2026年限りで終えると発表しました。あわせて、37年間の感謝を込めたラストランを10月9日と10日の2日間にわたって実施することも明らかにしています。釧路湿原をゆっくり走り抜けるあの独特の乗り味は、今年で見納めになります。
定期運転は10月4日まで、ラストランは2日間
「くしろ湿原ノロッコ号」の2026年の定期運転は、10月4日(日)で終わります。その後、10月9日(金)と10日(土)に特別なラストラン列車が走ります。
10月9日は「ノロッコ川湯温泉号」として、釧路駅〜川湯温泉駅間を1往復します。標茶駅では上り下りとも24分間停車し、川湯温泉駅では上りの到着から下りの発車まで38分の時間が取られています。停車時間が長めに設定されているので、ホームに降りて写真を撮る余裕があります。
| ノロッコ川湯温泉号(上り) | 時刻 |
|---|---|
| 釧路 | 11:06発 |
| 東釧路 | 11:12発 |
| 釧路湿原 | 11:32発 |
| 細岡 | 11:38発 |
| 塘路 | 11:53発 |
| 標茶 | 12:17着/12:41発 |
| 摩周 | 13:10発 |
| 川湯温泉 | 13:32着 |
| ノロッコ川湯温泉号(下り) | 時刻 |
|---|---|
| 川湯温泉 | 14:10発 |
| 摩周 | 14:32発 |
| 標茶 | 15:01着/15:25発 |
| 塘路 | 15:51発 |
| 細岡 | 16:04発 |
| 釧路湿原 | 16:08発 |
| 東釧路 | 16:34発 |
| 釧路 | 16:39着 |
10月10日は本来の姿である「くしろ湿原ノロッコ号」として、釧路駅〜塘路駅間を1往復します。くしろ湿原ノロッコ2号は釧路11時06分発、東釧路11時12分、釧路湿原11時32分、細岡11時38分、塘路11時51分着。折り返しのくしろ湿原ノロッコ1号は塘路12時17分発、細岡12時32分、釧路湿原12時38分、東釧路12時59分、釧路13時05分着です。この10月10日が、「くしろ湿原ノロッコ号」として走る最後の運転日になります。
ラストランの2日間は、機関車と4号車の最後部に「くしろ湿原ノロッコ号ラストランヘッドマーク」を装着して走ります。2日間限定のデザインです。当日のイベントやおもてなしの詳細は、9月下旬ごろにあらためて案内される予定です。
記念入場券は10月10日まで発売中
ラストランに合わせて、「感謝を込めて くしろ湿原ノロッコ号記念入場券」も引き続き販売されています。4月25日から発売されているもので、10月10日までが発売期間です。発売箇所は釧路駅のみどりの窓口のみで、郵送での販売はありません。券種は普通入場券、発売額は210円で、小児用の設定はありません。ラストラン当日も購入できます。
1989年から続いた37年
「くしろ湿原ノロッコ号」は1989年に初代車両でデビューし、1998年からは現行の2代目車両に引き継がれて運転を続けてきました。ディーゼル機関車が客車を引く編成で、窓を大きく取った車内から釧路湿原の景色をゆっくり眺められることが最大の売りでした。時速がゆっくりであることをそのまま列車名にしてしまうという発想も、この列車を長く愛される存在にしてきた理由でしょう。
JR北海道は運転終了の理由として、車両の老朽化を挙げています。2代目車両でも運用開始から28年が経っており、部品の確保や修繕の負担は年々重くなっていたはずです。
なぜこのタイミングで引退なのか
ここで見ておきたいのは、引退の背景に後継車両の存在があることです。JR北海道は新しい観光列車「赤い星」「青い星」を準備しており、2025年8月に公表された計画では、当初2026年内としていた運行開始時期を2027年に変更しています。改造の対象となるキハ143形について、想定していた以上に補修へ時間を要することが判明したためと説明されています。
つまり、ノロッコ号は後継車両の遅れによって、結果的に1年ほど延命されていたことになります。2026年シーズンをもって終えるという判断は、後継のめどが立ったからこそ下せたものと考えるのが自然です。老朽化した車両を延々と引っ張るリスクと、新造・改造車両の投入時期をすり合わせた結果が今回の日程だと読めます。
もう一つ、運転方式そのものの負担も無視できません。ノロッコ号は機関車が客車を引く方式で走っています。この方式は終点で機関車を反対側に付け替える機回し作業が必要で、そのための線路設備と作業要員が要ります。気動車であれば運転士が反対側の運転台に移るだけで折り返せますから、手間の差は小さくありません。後継となる「赤い星」「青い星」がいずれも気動車のキハ143形をベースにしていることは、この運用効率の問題と無関係ではないでしょう。
さらに、収益構造の転換という視点もあります。2025年に公表された計画では、「赤い星」は乗車とランチがセットのプランで大人1人3万円台から4万円台、乗車のみで2万円台から3万円台、「青い星」は乗車のみで5,000円程度が予定されています。一方、ノロッコ号は指定席料金1,000円を運賃に加えるだけで乗れる列車でした。安い運賃で多くの人を運ぶ方式から、単価の高い商品で確実に稼ぐ方式へ、JR北海道の観光列車事業が舵を切りつつあると見てよさそうです。厳しい経営環境が続く同社にとって、1本あたりの収益を上げられる商品への転換は避けて通れない選択だったのではないでしょうか。
その意味で、今回の引退は「地方路線の観光列車が消える」という単純な話ではありません。釧網本線には2027年4月から7月にかけて「赤い星」が釧路〜知床斜里間で入り、2028年1月から3月には「青い星」も同区間で運行される計画です。観光列車が走らなくなるわけではなく、走る列車の性格が大きく変わる、というのが実態です。
乗りたい人が今からすべきこと
まず、乗るなら残された機会は多くありません。定期運転は10月4日まで、ラストランは10月9日と10日の2日間だけです。ラストラン列車は全国から人が集まることが確実ですので、指定席は発売開始と同時に埋まると考えておいたほうがよいでしょう。JRの指定席は乗車日1か月前の10時から発売されますので、10月9日の列車なら9月9日、10日の列車なら9月10日の10時が勝負どきです。えきねっとの事前受付を使う、あるいはみどりの窓口に開店前から並ぶといった備えが要ります。
日程の都合がつかない場合は、10月4日までの定期運転を狙うほうが現実的です。こちらのほうが席は取りやすく、釧路湿原の景色そのものを楽しむという目的なら十分に満足できる選択になります。9月下旬から10月上旬の道東は空気が澄み、湿原の草紅葉が色づき始める時期でもあります。
車窓を最大限に楽しむなら、釧路湿原駅や細岡駅で降りて展望台に立ち寄る行程もおすすめです。細岡展望台からは湿原を蛇行する釧路川を一望できます。ラストラン当日は列車を降りずに往復するほうが確実ですが、定期運転の期間中であれば途中下車を組み込む余裕があります。
宿泊と足の確保も早めに動いたほうがよさそうです。10月上旬の釧路は観光シーズンの終盤にあたり、ラストラン需要が重なれば宿の確保は難しくなります。川湯温泉まで足を延ばすなら、そのまま摩周湖・屈斜路湖と組み合わせる行程が組みやすくなります。
まとめ
「くしろ湿原ノロッコ号」の引退は、車両の寿命という物理的な事情と、後継車両の投入時期、そして観光列車の収益モデル転換が重なった結果です。37年間走り続けた列車が終わるのは寂しい話ですが、釧網本線から観光列車が消えるわけではありません。それでも、ゆっくり走る客車列車の窓から湿原を眺めるという体験は、これが最後になります。道東の鉄道旅を考えている方は、今年の秋を逃さないようにしてください。


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