美祢線代行バスが10月に停留所7か所を新設 BRT復旧を見据えた検証と道の駅への直通運行へ

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JR西日本は2026年8月24日、2023年の豪雨災害で運休が続く美祢線の代行バスについて、10月1日から停留所を7か所新設し、5か所の位置を見直すと発表しました。あわせて、山口デスティネーションキャンペーン(山口DC)の期間中は、道の駅「センザキッチン」まで運行ルートを延ばす快速便を走らせます。これらに伴い代行バスのダイヤも変わります。単なるバス停の移設の話に見えますが、内容を読むと、美祢線をBRTで復旧させる方向に向けた実地検証がそのまま始まることがわかります。

何が変わるのか

変更は3つに分かれます。

停留所の新設

実施期間は2026年10月1日から2027年3月31日までです。新設されるのは、横坂・山川口・厚狭平原・厚保本郷・四郎ケ原・宮の前・東中村の7か所です。地域住民からの意見や要望をもとに設置し、BRTを見据えた停留所設置場所の検証を行うとしています。この7か所は2027年3月末をもって一旦廃止される予定です。

停留所の位置の見直し

実施期間は2026年10月1日から当面の間です。対象は、松ヶ瀬(湯ノ峠駅)、川東(四郎ケ原駅)、南大嶺(南大嶺駅)、助行(重安駅)、観月橋(板持駅)の5か所です。現在の代行バスは美祢線の鉄道駅前に乗り入れていますが、一部に道路幅が狭い箇所があるため、停留所の位置を変えて安全性と速達性を高めるという説明です。板持停留所は観月橋停留所へ位置が変わります。今後さらに変更される可能性もあるとされています。

道の駅センザキッチンへの延伸と快速便の増便

運行期間は2026年10月3日から12月27日までの土休日です。「山口DC快速」として、道の駅「センザキッチン」(山口県長門市仙崎)まで延伸する快速便を3往復運行します。厚狭駅から乗り換えなしでアクセスできるようになります。

このほか、厚狭駅と湯ノ峠間で運行している代行タクシーも時刻が変わります。なお、これらの運行計画は8月24日時点で認可申請中とされています。

美祢線はいまどうなっているのか

美祢線は厚狭駅と長門市駅を結ぶ46.0キロの路線です。2023年に発生した豪雨災害で被災し、以来、全線で運休が続いています。現在は代行バスと代行タクシーによる輸送が行われています。

被災前の利用状況を見ると、2022年度の輸送密度(1日1キロあたりの平均通過人員)は377人でした。JR西日本が経営状況の情報開示を行っている輸送密度2,000人未満の線区に該当します。JR西日本は鉄道による復旧費を58億円と見積もっており、この額をどう負担するかが議論の出発点になりました。

山口県、美祢市、長門市、山陽小野田市などとJR西日本で構成する「美祢線沿線地域公共交通協議会」では、美祢線のBRT(バス高速輸送システム)による復旧に向けた検討が進んでいます。同協議会は地域公共交通計画とその実行計画を2026年12月末までに策定することにしています。今回の停留所の新設・移設は、その検討の一環という位置づけです。

停留所を「駅前から離す」ことの意味

今回の発表で注目すべきは、移設の理由として「鉄道駅前に乗り入れているが、一部道路幅が狭い」と明記されている点です。

代行バスは、鉄道が走っていた頃の利用者の流れを保つために、できるだけ駅前に着けるという発想で運行されてきました。駅は鉄道の線路の都合で位置が決まっており、集落の中心や幹線道路沿いにあるとは限りません。狭い道を大型のバスで入っていけば、時間もかかりますし、安全上の負担も大きくなります。

BRTに転換するということは、この制約から自由になるということです。線路の位置に縛られず、道路の走りやすさと利用者の分布に合わせて停留所を置き直せます。今回、7か所を新たに設けて既存の5か所を動かすのは、その効果を実地で測るための作業です。新設分を2027年3月末で一旦廃止すると明示しているのも、これが恒久的なサービス改善ではなく期間を区切った検証だという意思表示だといえます。

停留所を増やせるのはバスの強みです。鉄道は駅を1つ増やすだけで用地取得やホーム建設が必要になりますが、バス停なら標識1本で済みます。輸送密度377人という規模の路線で、より細かく人を拾えるようになることの価値は小さくありません。裏を返せば、鉄道という手段が輸送量に対して過大になっているという判断が、この検証の前提にあります。

BRT専用道をめぐる議論の行方

BRTと聞くと、バス専用道を新たに整備して定時性を確保する方式を思い浮かべる方が多いと思います。ただ、美祢線の協議ではその方向は否定的に見られています。

2026年3月30日に開かれた協議会の会合では、於福駅と長門湯本駅の間13.8キロに専用道を整備した場合、整備費が100億円を超えると示されました。しかも、専用道を経由する便は一般道を走る場合より所要時間が5分半ほど余計にかかるという試算でした。100億円を投じて、かえって遅くなるという結果です。鉄道復旧費の58億円を上回る額を専用道に使う理屈は立ちません。

復旧時期の見通しも示されており、専用道を設ける場合は計画決定から3〜4年、専用道を設けない場合は2年以内とされています。専用道なしのBRTは、実態としては停留所と運行本数を作り直した路線バスに近いものになります。それでも本数を鉄道時代より増やせるのであれば、日常の使い勝手はむしろ上がります。

ここは冷静に見ておきたいところです。鉄道での復旧を選べば58億円をかけて1日377人規模の輸送に戻すことになり、専用道つきBRTを選べばさらに大きな額をかけて所要時間が伸びます。需要の規模に見合った手段を選ぶという観点では、専用道を持たないバス転換が合理的だという結論に落ち着くのは自然な流れです。鉄道の線路が残るかどうかという点だけを取り出して惜しむよりも、置き換わった後の便数と停留所の配置が生活の役に立つかどうかを見るほうが、沿線にとっては実際的ではないでしょうか。

観光需要をどう測ろうとしているのか

もうひとつ、今回の発表で見逃せないのが、道の駅センザキッチンへの延伸を山口DCの期間に合わせている点です。

被災前、美祢線の列車は長門市駅から先の仙崎地区まで一体的に運行されており、厚狭や美祢から乗り換えなしで仙崎まで行くことができました。今回の延伸は、その直通の流れを代行バスで再現するものです。センザキッチンは中国地方の道の駅の中でも人気が高い施設で、青海島観光の拠点にもなっています。

山口DCは10月から12月の3か月間、県全体で集客が高まる期間です。JR西日本はこの時期に、山陽新幹線「さくら783号」を一部の土曜に厚狭駅へ臨時停車させる措置も取ります。新大阪駅を7時29分に出て厚狭駅に9時33分に着く便で、10月3日・17日・24日、11月7日・14日・28日、12月5日が予定日です。関西から新幹線で厚狭に降り、そこから代行バスの快速便で仙崎まで直通するという動線が、DC期間中だけ成立することになります。

沿線人口が減り続けている路線で、日常利用だけを見れば需要は増えません。そこに観光需要をどれだけ乗せられるかは、転換後の路線をどの規模で維持するかを決めるうえで重要な材料になります。土休日3往復という限定的な設定は、需要を測るための小さな実験としてちょうどよい規模です。DC期間中の利用実績が、2026年12月末に策定される実行計画の内容に反映される可能性は十分にあります。

美祢線では、このほかにも運休中の線路を軌道自転車で走る「Rail Run!」の実証実験や、次世代モビリティe-Paletteを使った美祢市内の周遊バス事業が同じ期間に予定されています。線路も、道路も、車両も、使えるものは一度全部試してみるという姿勢が見て取れます。

利用者はどう動けばいいか

10月1日から代行バスのダイヤが変わります。美祢線の代行バスを日常的に使っている方は、9月中に新しい時刻を確認してください。停留所の位置が変わる5か所については、これまで駅前で待っていた場所とは別の位置になるため、乗り遅れを避けるためにも事前の確認が必要です。時刻や停留所の詳細はJR西日本が案内している美祢線代行バスの専用サイトで公開されています。

秋吉台・秋芳洞や長門湯本温泉、青海島といった山口県北部の観光地を鉄道と組み合わせて回る予定の方は、10月3日から12月27日までの土休日に走る山口DC快速便が選択肢になります。厚狭駅から乗り換えなしでセンザキッチンまで行けるので、山陽新幹線からの乗り継ぎが1回で済みます。ただし、この運行計画は8月24日時点で認可申請中です。行程に組み込む前に、運行が確定しているかどうかを必ず確認してください。

新設される7か所の停留所を目当てにする場合は、期間が2027年3月31日までである点に注意が必要です。翌年度以降も残るかどうかは、この半年の利用実績次第ということになります。逆にいえば、使いたい停留所がある方は、実際に使うことがそのまま存続の材料になります。

まとめ

今回の発表は、美祢線が鉄道として戻ってくる可能性が実務のうえでかなり小さくなったことを示す内容でもあります。停留所を駅前から動かし、駅のない場所に新しく停留所を置き、道の駅まで直通させる。どれも鉄道ではできなかったことばかりです。2026年12月末に策定される計画を前に、その効果を数字で確かめる半年が始まります。沿線を訪ねる予定のある方は、10月1日のダイヤ変更と、土休日3往復の直通快速を押さえておいてください。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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