山口デスティネーションキャンペーンが10月開幕 SLやまぐち号のC57形が6年ぶり復活、周遊パスは3日間5000円

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おいでませ山口観光キャンペーン推進協議会とJRグループは2026年8月24日、「山口デスティネーションキャンペーン(山口DC)」を10月1日から12月31日まで開催すると発表しました。キャッチフレーズは「万福の旅 おいでませ ふくの国、山口」です。目玉は、SLやまぐち号を牽引するC57形蒸気機関車の6年ぶりの復活運行と、山口県内のJR在来線が3日間乗り放題になる5,000円のデジタルパスです。県内全域に加えて島根県の益田市と津和野町も対象に入り、186団体が参加する規模になります。

山口DCとは何か

デスティネーションキャンペーンは、JRグループ6社が地元の自治体・観光事業者・旅行会社と組んで行う広域観光宣伝事業です。1978年11月に当時の国鉄が和歌山県と実施した「きらめく紀州路」が始まりで、現在は四半期ごとに対象地域を決めて実施しています。

山口県での開催は1991年の「ドラマチック山口」から数えて今回が5回目です。前回は2017年9月から12月の「維新の風が誘う。おもしろき国 山口」で、明治維新150年に向けた企画でした。9年ぶりの開催ということになります。スペシャルアンバサダーは山口県出身の卓球選手・石川佳純さんが務めます。

キャンペーン期間は2026年10月1日から12月31日までです。すでに2025年10月から12月にプレキャンペーンが行われており、2027年10月から12月にはアフターキャンペーンが予定されています。3年がかりの構成です。

観光列車はどう動くのか

今回の発表でもっとも注目されるのは、SLやまぐち号です。「貴婦人」の愛称で知られるC57形蒸気機関車が、10月3日から6年ぶりに復活運行します。運転日は10月3日から12月20日までの土休日(特定日を除く)で、区間は新山口駅と津和野駅の間を1日1往復です。運転日によっては牽引機関車が変更になる場合があります。

山陰線を走る「〇〇のはなし」には、DC期間限定の特別運行が加わります。通常の「〇〇のはなし」は土休日に新下関駅から東萩駅までを1日1往復(復路は仙崎駅経由)で走りますが、これとは別に「〇〇のはなし81・82号」が10月9日から12月21日までの金曜と月曜(特定日を除く)に新下関駅から長門市駅まで運行されます。滝部駅で下関オープントップバスの角島ラインと接続する設定です。

西日本各地を走る観光列車「はなあかり」は、初めて新山口駅から岩国駅の間を走ります。運転日は10月10日から12月20日までの土休日(特定日を除く)で、1日1往復です。全席がグリーン車以上の設備で、岩国市・柳井市・防府市・山口市によるおもてなしが予定されています。10月2日と5日には「はなあかり」が山陰線を走る設定もあります。

長距離観光列車「WEST EXPRESS 銀河」は、この秋も山陽コースを走ります。下り(下関行き)は10月・11月・12月の金曜と月曜出発、上り(京都行き)は水曜と土曜出発です。京都駅から下関駅までを夜行で結びます。

これらの観光列車は、きっぷの通常発売に先行して「tabiwaトラベル」で旅行商品が売り出されます。発売開始はWEST EXPRESS 銀河が8月25日13時、SLやまぐち号が8月27日13時、はなあかりが9月1日13時、3列車を乗り継ぐ商品が9月3日13時の予定です。予約にはWESTERの会員登録(無料)が必要です。

新幹線の臨時停車と二次交通

山陽新幹線では、期間中の一部の土曜日に「さくら783号」が厚狭駅に臨時停車します。新大阪駅を7時29分に出て厚狭駅に9時33分に着く便で、運転日は10月3日・17日・24日、11月7日・14日・28日、12月5日の予定です。厚狭駅は美祢線の起点で、ここから仙崎方面へ向かう動線を関西から作る狙いです。

その美祢線は2023年の豪雨災害で運休が続いており、現在は代行バスで運行しています。DC期間中は、厚狭駅から道の駅「センザキッチン」(長門市仙崎)まで乗り換えなしで行ける快速便が10月3日から12月27日までの土休日に3往復設定されます。

下関市では、山口県エリアで初となるオープントップバスが走ります。角島ラインは10月2日から12月21日までの月曜と金曜に滝部駅を発着して角島灯台公園などを巡る2便、関門海峡ラインは10月3日から12月20日までの土休日に下関駅から赤間神宮・みもすそ川公園・長府観光会館などを回る3往復です。

おトクなきっぷと割引

期間中は複数の商品が用意されます。使い方によって効きどころが違うので、整理して見ていきます。

山口ふくの国周遊パス

山口県内のJR在来線全線に加えて、観光に便利な二次交通と観光施設の入場券をセットにしたデジタルパスです。tabiwaで発売され、価格はおとな5,000円、こども2,500円、有効期間は連続する3日間です。発売期間は9月1日から12月31日まで、利用期間は10月1日から2027年1月2日までとなっています。

セットに含まれる施設は、秋芳洞の入洞、萩・明倫学舎2号館の観覧、長府毛利邸の入場、錦帯橋の往復渡橋(1往復)、金子みすゞ記念館の入館、オーヴィジョン海峡ゆめタワーの入場、狐の足あとの足湯入浴、やない西蔵の柳井金魚ちょうちんづくり体験、カモンワーフの500円お買物券などです。発売枚数には上限があり、上限に達した時点で発売終了となります。

WESTERポイント超特典きっぷ

e5489専用の商品で、所定の運賃・料金の約35%相当のWESTERポイントで山陽新幹線に乗れます。設定区間は山陽新幹線の各駅と山口県内各駅(新岩国・徳山・新山口・厚狭・新下関)を発着する区間で、山口県内どうしの利用は対象外です。

必要ポイント数の例は、新大阪駅から新山口駅までが4,750ポイント(所定13,590円)、博多駅から徳山駅までが2,370ポイント(同6,790円)、広島駅から新山口駅までが1,980ポイント(同5,690円)です。発売期間は9月1日から12月24日まで、利用期間は10月1日から12月24日までで、席数限定です。こどものみの購入・利用はできません。

ふくふくポイントキャンペーン

特設サイトからエントリーしたうえで、10月1日から12月24日までにエクスプレス予約やスマートEXで山陽新幹線の山口県内各駅を発着する区間を使うと、抽選で2,929名に2,929WESTERポイントが当たります。グリーン車を使った場合は当選確率が10倍になります。山口ふくの国周遊パスをtabiwaで購入した人には、さらに500ポイントがもれなく付きます。

関門ふくフク三昧

JRの往復きっぷとふぐ料理をセットにした駅プランです。9月2日から発売され、発地は山陽・山陰発と京阪神発、設定期間は10月1日から2027年3月31日までです。購入は利用日の3日前までで、12月26日から2027年1月4日の設定はありません。

駅レンタカーの特別プラン

山口DC専用の旅行商品や、山口県内着となる新幹線・特急のe5489・EXサービスの商品、山口ふくの国周遊パスを買った人は、駅レンタカーが1暦日3,600円(税込、免責補償料・NOCサポート・ロードサービス込、Sクラス限定)で使えます。新山口駅から津和野駅への片道レンタカープランもあり、基本料金10%割引と乗捨料金の最大50%割引が付きます。

なぜ山口県で、なぜ今なのか

DCは全国を持ち回りで巡る仕組みなので、順番が回ってきたという説明もできます。ただ、今回の設計を見ると、山口県とJR西日本がこの時期を選んだ理由がいくつか読み取れます。

ひとつは、山口県の観光が抱える構造の問題です。2025年に山口県を訪れた観光客は3,342万人で前年比3.1%増と伸びました。外国人観光客も約38万人、うち延べ宿泊者数は16万人あまりで過去最多となっています。ところが同じ年の延べ宿泊者数全体は、物価高騰などの影響でおよそ7万人減っています。人は来ているのに泊まっていない、という状態です。

山陽新幹線の山口県内には新岩国・徳山・新山口・厚狭・新下関の5駅がありますが、博多と広島という2つの大きな都市に挟まれた区間にあるため、通過されやすい位置にあります。今回のきっぷ設計が「山口県内各駅を発着する区間」に限定され、県内どうしの移動を対象外にしているのは、県外から山口県で降りる人を増やすことに狙いを絞っているからだと考えられます。WESTERポイント超特典きっぷが所定額の約35%相当という強い設定になっているのも、現金の値引きではなくポイントの消化という形で、空席を埋めつつ単価の下落を抑える狙いがあるのではないでしょうか。

ふたつめは、外部の追い風のタイミングです。NHKの連続テレビ小説「ブラッサム」が2026年9月28日から放送されます。岩国市出身の作家・宇野千代をモデルにした作品で、DCの開幕と1週間もずれていません。プレスリリースにも、宇野千代ゆかりの錦帯橋が一層注目を集めることが期待されると書かれています。錦帯橋は現在、世界文化遺産登録に向けた取り組みが進められている場所でもあります。加えて、秋吉台と秋芳洞を含む「Mine秋吉台ジオパーク」が2026年4月にユネスコ世界ジオパークに認定されました。国宝の瑠璃光寺五重塔も、約70年ぶりとなる檜皮葺屋根の全面葺き替え、いわゆる「令和の大改修」を終えています。看板になる素材が同じ年に揃ったわけです。DC期間中は瑠璃光寺五重塔の秘仏が特別に御開帳され、10月3日から12月12日までの土・祝日に1日4回、1,700円で塔内を拝観できる企画も用意されています。

みっつめは、JR西日本にとっての実験場としての意味です。今回のDCには、美祢線代行バスの延伸運行、次世代モビリティe-Paletteを使った美祢市内の周遊バス、運休中の美祢線の線路を軌道自転車で走る「Rail Run!」といった、通常の観光キャンペーンには入らない企画が並んでいます。いずれも実証運行・実証実験という位置づけです。DCは全国から人が集まり、報道量も増える期間なので、新しい移動サービスの需要を測るには都合がよい機会です。観光振興と、不通路線をどう扱うかという経営課題の検証を、同じ3か月に重ねて走らせていると見るのが自然です。

C57形の6年ぶりの復活も、この文脈に置くと意味が見えてきます。SLやまぐち号は近年、ディーゼル機関車による代走が続いていました。蒸気機関車の維持には多額の費用と人手がかかるため、通年で走らせ続けるのは容易ではありません。それでもDCという最大の集客機会に合わせて復活させたのは、C57が山口線の集客力そのものだと判断されているからでしょう。

旅行者はどう動けばいいか

まず押さえるべきは発売日です。観光列車の旅行商品はきっぷの通常発売より先にtabiwaトラベルで売り出されます。WEST EXPRESS 銀河は8月25日13時、SLやまぐち号は8月27日13時、はなあかりは9月1日13時、3列車の乗継商品は9月3日13時です。C57形の復活は注目度が高く、10月3日の初日や紅葉期の土休日は早い段階で埋まる可能性が高いので、狙う日が決まっている方はこの時刻に合わせて動いてください。予約にはWESTERの会員登録(無料)が事前に必要なので、発売当日に慌てないよう先に済ませておくとよいです。

きっぷは目的によって選び分けるのが効率的です。県内をあちこち回るなら山口ふくの国周遊パス(3日間5,000円)が軸になります。秋芳洞と萩・明倫学舎と錦帯橋を回るだけでも入場料の合計はそれなりの額になるので、施設をいくつか押さえる行程なら十分に元が取れます。9月1日発売で枚数に上限があるため、連休を狙う方は早めの確保が安全です。

一方、往復の新幹線代を抑えたい方はWESTERポイント超特典きっぷを検討してください。ただしこれはポイントを持っている人だけが使える商品で、必要ポイント数(利用人数分)を保有していないと予約できません。新大阪から新山口までで4,750ポイントが必要です。ポイントが足りない場合は、エクスプレス予約やスマートEXで普通に予約したうえで、ふくふくポイントキャンペーンにエントリーしておく方法があります。エントリーしないと抽選の対象にならないので、予約前に特設サイトで手続きを済ませておいてください。スマートEX利用者やJR東海エクスプレス・カード会員、JQ CARDエクスプレス会員は、WESTER IDとの紐づけが別途必要です。

日帰りでふぐを目当てにするなら、9月2日発売の「関門ふくフク三昧」が手軽です。設定期間が2027年3月31日までと長いので、DC期間にこだわらず冬のふぐの時期に合わせる選択もできます。

移動の組み立てでは、曜日の縛りに注意してください。SLやまぐち号とはなあかりは土休日、「〇〇のはなし81・82号」と下関オープントップバスの角島ラインは金曜と月曜、関門海峡ラインは土休日と、走る日が分かれています。複数の観光列車を組み合わせたい場合は、先に運転日を並べてから宿を押さえたほうが無駄がありません。

厚狭駅発着で仙崎方面へ向かう方は、10月3日から12月27日の土休日に走る美祢線代行バスの山口DC快速便が使えます。ただしこの運行計画は8月24日時点で認可申請中とされているため、行程に組み込む前に最新の時刻を確認してください。

まとめ

山口DCは、C57形の6年ぶりの復活という鉄道側の目玉と、周遊パス・ポイント特典・駅レンタカーという実用的な割引が同時に並ぶ3か月です。朝ドラの舞台、世界ジオパーク認定、国宝の大改修完了という条件が重なった年に当てられており、山口県が「通過される県」から抜け出すために持ち札を全部出してきた形といえます。蒸気機関車に乗りたい方、秋の山陰海岸を列車から眺めたい方、萩や津和野をまとめて回りたい方は、8月末から9月初旬の発売開始が最初の勝負どころです。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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