JR九州は、熊本〜三角間を結ぶ観光特急「A列車で行こう」が2026年10月10日に運行開始15周年を迎えるのに合わせ、熊本駅5番のりばで記念出発式を開催すると発表しました。対象は同日10時21分発の1号で、くまモンも出席します。あわせて、15周年オリジナルデザインの車内スタンプを同日から1年間設置するほか、限定グッズの販売も行われます。
大人の遊び心を詰め込んだ「大航海時代」の列車
「A列車で行こう」は2011年10月8日、熊本市と天草諸島を結ぶルートの一角として運行を開始しました。三角線にとっては1986年11月のダイヤ改正以来、実に30年近くぶりとなる優等列車で、同線初の特急列車でもあります。デザインを手がけたのは、JR九州の観光列車を数多く手がけてきた水戸岡鋭治氏。16世紀に天草地方へ伝わった南蛮文化を大航海時代のヨーロッパ風にアレンジし、大人がゆったり楽しめる旅の空間として作り上げました。
列車名の「A」には「Adult(大人)」と「Amakusa(天草)」という二つの意味が込められています。車内には音楽家・向谷実氏がアレンジしたジャズの名曲「A列車で行こう(Take the A Train)」のBGMが流れ、木材をふんだんに使った内装とあわせて、移動そのものを目的にしたくなる空間を作り出しています。現在は熊本〜三角間を1日4本、全車指定席で運行しており、所要時間は約1時間9分、運賃は2,650円(2025年4月改定後)です。DXグリーン車のような上位クラスの設定はなく、日帰りで気軽に楽しめる観光特急という位置づけです。
三角駅では観光船「天草宝島ライン」の定期航路と接続しており、鉄道と船を組み合わせた周遊きっぷ「A列車&SBきっぷ」も用意されています。15周年の記念出発式では、宇土駅通過後に限定デザインステッカーなどのプレゼントが配られ、三角駅では上天草市特命大使「上天草しろくん」の出迎えも予定されています。記念グッズとしては、150個限定のオリジナルコースター(2,500円)やフレークシール(2,000円)、150セット限定のウイスキーセット(500円)、記念ドリンク(850円・600円)、先着プレゼントの記念マシュマロなどが販売されます。
JR九州の観光列車群の中での役割
JR九州には「D&S列車(デザイン&ストーリー列車)」と呼ばれる観光列車が約20種類あり、「A列車で行こう」もその一つです。同じD&S列車でも、博多〜由布院間を走る「或る列車」や、9県を周遊する最上位クラスの「36ぷらす3」は、食事付きプランで数万円規模の料金設定になっており、特別な旅の体験を売り物にしています。それに対して「A列車で行こう」は普通運賃と指定席特急料金を合わせて2,650円という手頃な価格帯で、熊本市内から気軽に日帰りで乗りに行ける点が大きな違いです。
JR九州が観光列車に力を入れる背景には、鉄道単体の収益だけでなく、沿線への宿泊・周遊需要を生み出す狙いがあります。観光列車は「乗ること自体が旅の目的」になるため、乗客を熊本や天草エリアに呼び込み、駅の周辺や船の乗り継ぎ先での消費につなげる役割を担っています。天草エリアでは近年、民間資本による観光リゾート開発も進んでおり、地域全体で滞在型の観光地づくりが進められている中で、「A列車で行こう」はその入り口となる交通手段の一つに位置づけられます。なお、2016年の熊本地震で三角線や本列車がどの程度の影響を受けたかについては公式な記録が確認できず、本記事では言及を控えます。
15年という節目のタイミングで記念イベントを行う狙いは、単なる周年行事にとどまりません。「A列車で行こう」は運行開始から一定の年数が経過し、車両や設備の更新時期を迎えつつある観光列車でもあります。記念イベントであらためてメディア露出を作り、地元住民や県外の鉄道ファンの双方に存在感を再認識させることは、今後の利用継続やリニューアル投資の後押しにもつながると考えられます。
旅行者への影響と、行くなら押さえておきたいポイント
記念出発式が行われる2026年10月10日の1号(熊本発10時21分)に乗車できれば、通過駅でのプレゼントや三角駅での出迎えといった、この日限定の体験を楽しめます。当日は多くの鉄道ファンや家族連れが集まることが予想されるため、確実に乗車したい場合は早めの指定席予約をおすすめします。記念グッズの多くは150個・150セットといった数量限定のため、手に入れたい方は始発から乗車するなど、時間に余裕を持って行動すると安心です。
15周年記念スタンプは2026年10月10日から1年間、車内に設置される予定なので、記念日当日に都合がつかない方でも、この1年間であれば「A列車で行こう」に乗車した記念として押すことができます。熊本市内から日帰りで天草方面の海や街並みを楽しみたい方、あるいは三角港から観光船に乗り継いで島めぐりをしたい方にとって、今回の周年イベントは、これまで乗ったことがなかった観光特急に足を運ぶ良いきっかけになるはずです。


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