JR北海道と上川地域公共交通活性化協議会は2026年10月9日、JR線と路線バスを1枚の電子チケットで乗り放題にする「かみくるパス」の実証事業を発表しました。2026年11月9日から12月27日までの期間限定で、旭川駅を起点に富良野・名寄・上川方面のJR普通・快速列車と、上川管内を走る旭川電気軌道・道北バス・ふらのバスの路線バスが乗り放題になります。冬の旭川・富良野エリアを周遊したい旅行者にとっては、鉄道とバスをまとめて使える珍しい機会になりそうです。
輸送密度1000人前後の路線が抱える事情
JR北海道が富良野線・宗谷線といった区間でこうした取り組みを重ねる背景には、路線そのものの厳しい利用状況があります。2024年度の輸送密度は、旭川〜名寄間を含む宗谷線が1,120人/日、旭川〜富良野間の富良野線が1,233人/日、新旭川〜上川間の石北線が791人/日、上川〜網走間はさらに少ない608人/日にとどまっています。JR北海道が公表している線区別の収支でも、利用者の少ない区間全体の営業赤字は128億円に達しており、単独の施策で大きく利用者を増やすのは簡単ではない水準です。
この状況で鉄道会社がバス会社と手を組む意味は、単独では成立しにくい観光需要を、エリア全体で面として受け止めることにあります。「かみくるパス」は今回が初めての取り組みではなく、2025年2月と2026年1〜2月にも同様の実証が行われており、今回で3回目です。過去2回はバスのみの乗り放題から始まり、その後JR区間を加える形に発展してきました。今回はさらに一歩進んで、英語・繁体字・簡体字・韓国語の多言語対応を新たに導入しています。これまで国内の個人旅行者を主な対象にしていた実証から、訪日外国人観光客の取り込みを本格的に意識した段階に移ったと考えられます。
11月9日という開始日にも狙いが読み取れます。富良野スキー場が11月29日に営業開始し、旭川〜富良野間のスキーバスも12月2日から運行が始まる時期と重なっており、ウィンターシーズンの観光需要に合わせて実証期間を設定したとみられます。
「かみくるパス」の料金と使い方
「かみくるパス」は1日券・2日券・3日券の3種類があり、料金は大人が1日券4,000円、2日券6,500円、3日券8,000円です(小人はそれぞれ半額の2,000円・3,250円・4,000円)。JR区間は旭川駅〜富良野駅・名寄駅・上川駅間の普通・快速列車が対象で、特急列車には別途特急料金が必要です。バスは上川管内4市13町を走る旭川電気軌道・道北バス・ふらのバスの3社が対象になります。
販売はジョルダンのスマホアプリ「乗換案内」限定で、駅やバス車内の窓口では購入できません。利用時はJRの駅ではQRコードを改札にかざし、バスでは運転士に画面を提示する仕組みです。沿線の観光施設や飲食店など約60カ所で割引などの特典を受けられるクーポンも付いています。
旅行者が気をつけたいポイント
このパスを使う最大のメリットは、JRとバスの乗車券を別々に買う手間と料金を一本化できることです。旭川を拠点に富良野・美瑛・層雲峡方面を周遊したい旅行者には、移動のたびに料金を気にせず乗り降りできる利点があります。
一方で注意したいのは、紙の乗車券が存在せず、スマートフォンに「乗換案内」アプリを事前にインストールしておく必要があることです。現地に着いてから探すと通信環境によっては手続きに時間がかかる可能性があるため、出発前の準備をおすすめします。また特急列車は対象外のため、旭川〜富良野間などで特急を使う場合は別途料金がかかる点も覚えておく必要があります。販売期間にも注意が必要で、1日券は12月27日、2日券は12月26日、3日券は12月25日が販売の最終日となっており、各日14時50分で販売終了です。期間終盤に旅行を計画している場合は、早めにチケットを確保しておくと安心です。
実証事業という位置づけのため、今回の取り組みがそのまま定例化されるとは限りません。ただ、過去2回を経てJR区間や多言語対応を段階的に広げてきた経緯を踏まえると、冬の旭川・富良野エリアを訪れる旅行者にとって、今後も似たような企画が繰り返される可能性は十分にあります。この冬旭川方面への旅行を計画している人は、実際に使ってみる価値がありそうです。


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