ANAとJALが羽田〜岡山線で初のダイヤ調整|冬ダイヤで4往復の時刻をずらす狙いと影響

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ANAとJALは2026年8月18日、冬ダイヤの羽田〜岡山線で出発時刻を調整すると正式に発表しました。冬ダイヤの期間は2026年10月25日から2027年3月27日までです。

対象は出発時刻が近接している4往復8便で、これらの時刻をずらして1時間程度の間隔ができるようにします。国内線で航空2社がダイヤを調整するのは初めてです。競合する会社同士が時刻を話し合って決めるという、これまでの国内線ではあり得なかった取り組みが始まります。

5〜25分差だった便が15〜40分ずらされる

羽田〜岡山線は現在、ANAとJALがそれぞれ1日5往復、合計10往復を運航しています。このうち調整の対象になるのは両社2往復ずつです。

2025年冬ダイヤでは、対象便の運航間隔は5分から25分しかありませんでした。ほぼ同時刻に2社の便が飛んでいた形です。2026年冬ダイヤではこれを15分から40分ずらし、結果として1時間程度の間隔を確保します。

羽田発岡山行きの変更内容

便名 2026年冬ダイヤ 前年からの変更
NH651 羽田7時25分発 → 岡山8時45分着 20分早発着
JL231 羽田8時20分発 → 岡山9時40分着 20分遅発着
JL239 羽田17時00分発 → 岡山18時20分着 30分早発
NH657 羽田18時00分発 → 岡山19時20分着 20分遅発着

朝の便は、前年は7時45分発と8時5分発で20分しか違いませんでした。これが7時25分発と8時20分発になり、55分の差がつきます。夕方の便も17時30分発と17時40分発で10分差だったものが、17時発と18時発で1時間の差になります。

岡山発羽田行きの変更内容

便名 2026年冬ダイヤ 前年からの変更
NH654 岡山9時30分発 → 羽田10時45分着 20分早発着
JL234 岡山10時35分発 → 羽田11時45分着 20分遅発着
JL242 岡山19時00分発 → 羽田20時10分着 40分早発着
NH660 岡山20時00分発 → 羽田21時15分着 15分遅発着

こちらも同様で、午前は9時50分発と10時15分発の25分差が、9時30分発と10時35分発の65分差に広がります。夜は19時40分発と19時45分発というわずか5分差だった2便が、19時発と20時発になります。岡山発の最終便はNH660便のままです。

調整の対象にならない便もあります。羽田発ではNH653・JL233・NH655・JL237・JL241・NH659、岡山発ではNH652・JL232・JL236・NH656・JL240・NH658が従来どおりの時刻で運航されます。

競合他社との時刻調整が可能になった経緯

これまで、競合する航空会社同士がダイヤを話し合って決めることは独占禁止法上の問題がありました。その整理が2026年に変わったことが、今回の発表の前提にあります。

国土交通省航空局の「国内航空のあり方に関する有識者会議」は、2026年5月29日に報告書をまとめました。この報告書は、複数社の便が同じ時間帯に集中する路線について、利用者の利便性向上や新たな需要の掘り起こしという観点から、過度に重複しないダイヤが望ましいとしています。そのうえで、一定の要件を満たす航空会社間のダイヤ調整は、原則として独占禁止法上の問題にならないとの整理を示しました。運賃を調整しないことなどが条件になります。

ただし、便数そのものを調整したり運航会社を1社に集約したりする場合は扱いが異なります。供給量の調整は原則として独占禁止法上の問題となり、実施するには航空法に基づく適用除外を使う必要があります。対象は将来の見通しを含めて赤字で事業継続が困難と見込まれる重要路線などに限定され、個別路線ごとに国土交通省の認可と公正取引委員会への協議が求められます。

今回の羽田〜岡山線は、あくまで出発時刻をずらすだけの調整です。便数は両社5往復ずつのまま変わらず、運賃も各社が独自に決めます。制度上いちばん手前にある取り組みから始めた形です。

なぜ最初の1本が羽田〜岡山線だったのか

10往復も飛んでいる路線で、なぜわざわざ時刻をずらす必要があったのか。ここには国内線が置かれている環境が関係しています。

高単価の出張需要が戻らないまま、コストだけが上がった

新型コロナウイルスの流行後、オンライン会議が定着したことで、国内線の柱だった出張需要は以前の水準に戻っていません。一方で燃油費、整備費、人件費、そして外貨建てで調達する機材や部品の費用は軒並み上がりました。座席が埋まっても以前ほど利益が出ない構造になっています。

この状況で2社の便が5分差で飛んでいると、限られた乗客を奪い合うだけになります。どちらかの便に乗るはずだった人を取り合っても、路線全体の乗客は増えません。時刻をずらして選べる時間帯を広げれば、これまで「その時間には便がないから新幹線にした」という人を取り込める可能性が出てきます。

東京〜岡山は鉄道が優位な区間で、航空はその隙間を埋める立場にある

東京〜岡山は、東海道・山陽新幹線の「のぞみ」で最短3時間8分です。所要4時間を切る区間では鉄道が優位に立つとされており、実際に東京〜岡山でも新幹線が主要な移動手段になっています。航空はその補完という位置づけです。

岡山空港の2025年度の利用者は約147万人で、前年度比106.9%と伸びています。決して不振な空港ではありません。しかし新幹線が3時間で結んでいる以上、航空が勝てるのは「新幹線の便より早い時間に着きたい」「新幹線の最終より遅く帰りたい」といった時間帯の勝負になります。

そう考えると、2社が同じ時間帯に固まっているのは最も効率が悪い状態です。朝7時25分と8時20分に1本ずつあれば、7時台に着きたい人と9時台に着きたい人の両方を拾えます。5分差で並べていたときには取れなかった需要です。

便数を減らさずに済む形を選んだことに意味がある

今回の調整でとくに注目したいのは、便数が減っていない点です。両社とも5往復のまま、時刻だけを動かしました。

制度上は便数調整や運航会社の集約という、より踏み込んだ選択肢も用意されています。しかしそれらは赤字で事業継続が困難な路線に限られ、国の認可と公正取引委員会との協議が必要です。手続きが重いうえに、実施すれば実質的な減便になり利用者の選択肢は狭まります。

羽田〜岡山線は、10往復飛べる程度には需要がある路線です。ここで供給を絞る必要はなく、並べ方を変えるだけで改善の余地があった。そういう路線から手を付けたのは、順当な進め方だと考えられます。ANAは今後、国土交通省の有識者会議での到達点を踏まえ、競合他社間でのコードシェア路線拡大や運航社集約といったさらなる協調の深化を検討していくとしています。羽田〜岡山線は、その最初の一歩という位置づけになります。

この動きは他路線にも広がる可能性が高い

複数社が同じ路線で近接した時間帯に飛んでいる例は、羽田〜岡山線だけではありません。地方路線を中心に、似た状況の路線はいくつもあります。

今回の調整がうまく機能すれば、同じ手法が他の路線にも適用されていくでしょう。逆に、乗客が増えず単に不便になったという結果に終われば、次の段階である便数調整や運航社集約の議論が前に出てくることになります。羽田〜岡山線の冬ダイヤの結果は、その意味で試金石になります。

旅行者への影響と、いま気をつけること

まず、選べる時間帯は確実に広がります。これまで朝の羽田発は7時45分と8時5分の2択でしたが、7時25分と8時20分になります。早く着きたい人にも、少し遅く出たい人にも、以前より合う便が見つかりやすくなります。夕方の羽田発も17時と18時の1時間差になり、仕事を終える時間に応じて選びやすくなります。

一方で、これまで使っていた便の時刻が動く点には注意が必要です。とくに岡山発のJL242便は40分早くなり、19時40分発だったものが19時発になります。岡山での用事を終えてから空港へ向かう行程を組んでいた方は、40分の前倒しが響く可能性があります。羽田発のJL239便も30分早くなり、17時30分発が17時発になります。

反対に遅くなる便もあります。羽田発のNH657便は20分遅い18時発、岡山発のNH660便は15分遅い20時発です。岡山発の最終便が20時発になるため、夜まで岡山にいたい方にはわずかながら有利になります。

冬ダイヤの予約を取る際は、前年と同じ便名でも時刻が違うという前提で確認してください。便名は変わらず時刻だけが動くケースがほとんどなので、いつもの便名で予約して時刻を見落とすと、空港に着いたら出発済みという事態になりかねません。

なお、運賃については各社が独自に設定します。ダイヤを調整したからといって運賃が揃うわけではありませんので、これまでどおり両社の運賃を比較して選ぶことができます。

まとめ

ANAとJALは、2026年10月25日からの冬ダイヤで羽田〜岡山線の出発時刻を調整します。対象は4往復8便で、5分から25分しか違わなかった便を15分から40分ずらし、1時間程度の間隔を確保します。便数は両社5往復ずつのまま変わりません。

背景には、国土交通省が2026年5月にまとめた報告書で、一定の条件下でのダイヤ調整が独占禁止法上問題にならないと整理されたことがあります。出張需要が戻らないなかでコストが上がり続ける国内線を維持するための、新しい枠組みの最初の適用例です。

羽田〜岡山線を使う方は、選べる時間帯が広がる点でメリットがあります。ただし従来使っていた便の時刻がずれるため、冬ダイヤの予約では必ず時刻を確認してください。とくに岡山発の夕方以降の便を利用する方は、40分前倒しになる便がある点に注意が必要です。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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