ANAグループは2026年8月18日、2026年度下期の航空輸送事業計画の一部変更を発表しました。冬ダイヤの期間は2026年10月25日から2027年3月27日までです。
国内線で目を引くのは伊丹発着路線の再編です。札幌・函館・那覇を増便する一方、羽田・福岡・松山・大分の4路線を減便します。国際線は成田〜ムンバイ線と羽田〜ミラノ線をデイリー化し、成田〜バンコク・シンガポールの2路線を通期で増便します。国内線の運航便数は前年同期比101%、国際線は104%になる計画です。
伊丹発着は「増やす路線」と「減らす路線」がはっきり分かれた
冬ダイヤ初日の2026年10月25日から、伊丹空港発着の路線が大きく組み替わります。
| 路線 | 現行 | 変更後 |
|---|---|---|
| 伊丹〜札幌(新千歳) | 1日5往復 | 1日6〜7往復 |
| 伊丹〜函館 | 1日1往復 | 1日2往復 |
| 伊丹〜那覇 | 1日4往復 | 1日5〜6往復 |
| 伊丹〜羽田 | 1日15往復 | 1日14往復 |
| 伊丹〜福岡 | 1日5往復 | 1日4往復 |
| 伊丹〜松山 | 1日8往復 | 1日7往復 |
| 伊丹〜大分 | 1日4往復 | 1日2往復 |
減便対象はいずれも伊丹発着です。このうち伊丹〜大分線については、同じ10月25日からアイベックスエアラインズ(IBEX)が1日2往復で運航を再開し、ANAはこのIBEX運航便とのコードシェアを開始します。ANA便名で乗れる便数としては維持される形になります。
幹線と成田の国内線も動く
伊丹以外では、羽田〜福岡線が1日19往復から20往復に増便されます。中部〜札幌線と福岡〜札幌線は期間増便、羽田〜札幌・那覇・庄内・長崎の各路線は期間増便を継続します。
成田発着の国内線も強化されます。成田〜福岡線は2027年2月4日から冬ダイヤ最終日の3月27日まで1日1往復を期間運航します。1日1往復の成田〜札幌線は、2027年1月5日から2月14日まで1日2往復に期間増便されます。
機材面では、新機種のボーイング737-8型機を2026年10月以降に受領する予定です。
国際線はアジアとインド、そして欧州の一部に厚みを持たせる
国際線では複数路線で増便が予定されています。
| 路線 | 現行 | 変更後 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 成田〜ムンバイ | 週3往復 | 週7往復 | 2026年9月1日 |
| 成田〜シンガポール | 週7往復 | 週14往復 | 2026年9月1日 |
| 成田〜バンコク | 週7往復 | 週11往復(冬ダイヤで週14往復) | 2026年9月1日 |
| 成田〜パース | 週3往復 | 週7往復 | 2026年10月25日 |
| 羽田〜ミラノ | 週3往復 | 週7往復 | 下期中(開始日は別途案内) |
羽田〜ミラノ線と同時期に開設された羽田〜ストックホルム線・羽田〜イスタンブール線は、いずれも週3往復のまま維持されます。
一方で減便もあります。1日最大2往復の成田〜ホノルル線は、一部の期間で週10〜14往復に減ります。減便の対象は2便目として運航するNH182/181便で、1便目のNH184/183便は通期で1日1往復を継続します。対象期間は2026年10月25日〜11月5日、11月21日〜12月16日、2027年1月11日〜3月18日、3月27日〜4月中旬の4回で、この間は火曜・金曜・日曜のみの運航になります。年末年始をはじめとする多客期は減便されません。
787-9の新仕様機は全クラスが新シートになる
2026年11月以降、全クラスに新シートを搭載したボーイング787-9型機を受領します。ビジネスクラスには新型の個室シート「THE Room FX」を採用します。2019年8月に就航した777-300ER新仕様機の「THE Room」の考え方を引き継ぎつつ、787の機体幅に合わせて設計し直したもので、中型機のビジネスクラス刷新は約10年ぶりです。
座席数は3クラス206席で、内訳はビジネス48席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー137席です。既存機と比べてエコノミークラスの減少は1列9席分にとどめています。投入路線と時期は決定次第、あらためて公表される予定です。
ANAはなぜ伊丹の枠を組み替えたのか
減便4路線がすべて伊丹発着というのは偶然ではありません。同じ空港のなかで、路線を入れ替えているということです。
伊丹の発着枠は1日370回で固定されている
伊丹空港の発着枠は1日370回で、ジェット枠200回、プロペラ・低騒音機枠170回という内訳です。この総枠は1977年に決まって以来変わっていません。2024年度の実績は約13万7000回、1日平均で約376回の発着があり、旅客数は約1545万人でした。すでに枠を使い切っている状態です。
枠が増えない以上、新しい路線や増便を入れるには、どこかを削るしかありません。伊丹〜札幌・函館・那覇を増やすために伊丹〜羽田・福岡・松山・大分を減らすというのは、この制約から出てきた入れ替えです。
削られたのは鉄道が競合する路線、増えたのは空路しかない路線
削減された路線を見ると、共通点があります。伊丹〜羽田は東海道新幹線と、伊丹〜福岡は山陽新幹線と、それぞれ真正面から競合します。所要時間でも運賃でも新幹線に対して優位を取りにくい区間で、単価も伸びにくい路線です。
一方、増便された伊丹〜札幌・函館・那覇には、現実的な鉄道の代替がありません。所要時間で航空機が圧倒的に有利で、割引運賃に頼らなくても座席が埋まります。限られた枠を、鉄道と食い合う路線から、鉄道が入ってこられない路線へ振り替えたと読むのが自然です。
同じ日にJALも伊丹〜帯広線の新設と旭川・女満別線の通年化を発表しています。2社が同じ方向へ動いているのは、伊丹という空港の枠をどう使うのが最も収益になるかについて、両社の判断が一致したということでしょう。
大分線のIBEX移管は、需要に見合った機材へのダウンサイジング
伊丹〜大分線を1日4往復から2往復に減らし、IBEXが2往復で再開してコードシェアするという形は、便数を維持しつつ機材を小さくする組み替えです。
ANAが自社の機材で4往復飛ばすより、地域路線に適した小型機で運航するほうが、座席あたりの収支は改善します。ANAとIBEXは運航受委託で包括提携を結んでおり、こうした振り分けができる関係が先にできていました。路線を残すか廃止するかの二択ではなく、需要の規模に見合った担い手と機材に置き換えるという選択です。
成田の国内線期間運航は、明らかに訪日客の乗り継ぎ狙い
成田〜福岡線を2027年2月4日から、成田〜札幌線を2027年1月5日から増やすという時期の取り方には意図が透けます。1月から3月は、雪を目当てにした欧米豪からの旅行者と、春節前後のアジアからの旅行者が重なる時期です。
成田は国際線の乗り継ぎ拠点であり、そこから福岡や札幌へ国内線でつなぐ需要は、日本人の国内移動というより訪日客の周遊需要です。ANA自身も、訪日旅客の高需要期にあたる1月から3月に成田発着の国内線を増便・期間運航して旺盛なインバウンド需要の取り込みを強化すると説明しています。
ホノルル線の期間減便は、ハワイ需要の二極化を示している
成田〜ホノルル線の2便目を閑散期だけ抜き、年末年始などの多客期は維持するという設計は、需要が時期によって大きく振れていることを意味します。
円安が続くなかで、ハワイ旅行の総費用は以前より重くなりました。それでも年末年始や連休には需要が集中する一方、平常時は2便目を埋め切れません。人数が減ったというより、行ける時期と行ける層が絞られてきたと見るべきでしょう。単純な撤退ではなく、需要が確実に立つ時期だけ供給を残す運用に切り替えたということです。
中東・アフリカは自社で飛ばさず、提携で取りにいく
同じ8月18日、ANAはサウジアラビアのリヤド航空と包括的なパートナーシップに向けた覚書を締結したと発表しています。リヤド経由の中東・アフリカ路線でのコードシェアを想定した内容です。
自社機材は成田〜ムンバイ、成田〜バンコク・シンガポール、成田〜パース、羽田〜ミラノといった需要が読める路線に集中させ、地政学リスクが高く需要も読みにくい中東・アフリカ方面はパートナーの路線網で押さえる。JALが羽田〜ドーハ線の自社運航を止めてカタール航空とのコードシェアで対応しているのと、構図はよく似ています。日本の大手2社が同じ結論に至っているのは、この地域を自社で飛ばすリスクとリターンの計算が共通しているからではないでしょうか。
旅行者への影響と具体的な対応
関西から北海道・沖縄へ向かう方は、選べる便が増えます。伊丹〜函館線は1日1往復から2往復になり、日帰りに近い行程も組みやすくなります。伊丹〜新千歳線と伊丹〜那覇線も増便されるため、時間帯の選択肢が広がります。
反対に、伊丹〜羽田・福岡・松山を使う方は便数が減ります。とくに伊丹〜羽田線は1日15往復から14往復になるため、これまで当日に空席を見つけて乗っていた方は、埋まりやすくなる可能性を見込んでおいてください。東京〜大阪であれば新幹線という選択肢が常にありますので、時間帯によっては最初から鉄道で組むほうが確実です。
伊丹〜大分線を利用する方は、10月25日以降は運航がIBEXに変わります。ANA便名で予約できますが、機材が小さくなるため座席の配置や機内サービスは変わります。予約時に運航会社を確認してください。
成田を発着する国内線を使う予定がある方は、期間運航である点に注意が必要です。成田〜福岡線は2027年2月4日から3月27日まで、成田〜札幌線の2往復目は2027年1月5日から2月14日までです。この期間を外れると設定がありません。
ホノルルへ向かう方は、時期によって便数が変わります。火曜・金曜・日曜しか2便目が飛ばない期間が4回あり、年末年始などの多客期は通常どおりです。閑散期に安く行こうとすると、逆に便が選びにくくなる点は押さえておいてください。
ムンバイ・バンコク・シンガポール・パース・ミラノへ向かう方は、2026年9月1日以降に便数が増えます。とくに成田〜シンガポール線が週7往復から週14往復になることで、往復の日程が組みやすくなります。羽田〜ミラノ線のデイリー化は開始日が別途案内される予定ですので、予約前に確認してください。
新しい787-9の投入路線は未定です。「THE Room FX」を目当てに予約したい方は、路線と時期の発表を待つ必要があります。
まとめ
ANAグループの2026年度下期は、伊丹発着路線の入れ替えが最大の特徴です。鉄道と競合する羽田・福岡・松山を削り、鉄道の代替がない札幌・函館・那覇に振り向けました。大分線はIBEXへ運航を移し、コードシェアで便数を保ちます。
国際線はムンバイ・バンコク・シンガポール・パース・ミラノを増便する一方、成田〜ホノルル線は閑散期に絞って減便します。中東・アフリカ方面はリヤド航空との提携で押さえる方針です。
関西から北海道・沖縄へ行く方、東南アジアやインドへ行く方にとっては便利になる内容です。伊丹から東京・福岡・松山・大分を使う方、閑散期にハワイへ行く方は、便数の減少を前提に早めの予約をおすすめします。


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