「飛鳥・藤原の宮都」今夏にユネスコ審査。登録前の奈良・明日香村を今訪れるべき理由

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奈良県南部に広がる「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」が、2026年夏のユネスコ世界遺産委員会での審査という正念場を迎えています。2026年5月現在、諮問機関ICOMOSの評価報告書が公表される時期にあたり、地元・奈良では期待と緊張が入り混じった空気が続いています。登録が実現すれば日本で26件目の世界遺産となり、奈良県内では「法隆寺地域の仏教建造物」「古都奈良の文化財」に続く3件目の登録になります。

「飛鳥・藤原の宮都」とはどんな場所か

「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」は、奈良県明日香村・橿原市・桜井市にまたがる古代遺跡群で、6世紀後半から8世紀初頭の約150年間に営まれた日本最初の古代国家の痕跡が集中しています。推薦書に記載された構成資産は19件で、おもなものは以下の通りです。

  • 飛鳥宮跡(明日香村):飛鳥時代の天皇の宮殿が置かれた中枢エリア
  • 藤原宮跡(橿原市):日本最初の本格的な中国式都城、694〜710年に機能した
  • 高松塚古墳(明日香村):国宝指定の極彩色壁画で知られる飛鳥時代の古墳
  • キトラ古墳(明日香村):四神図と東アジア最古の天文図が発見された古墳

推薦書が訴える「顕著な普遍的価値」は、中国大陸・朝鮮半島との緊密な交流を通じて、日本列島で初めて中央集権国家が誕生・成立した過程を示す唯一の考古学的遺跡群である、という点です。大化改新(645年)、壬申の乱(672年)、大宝律令(701年)といった日本史の教科書にある出来事の舞台が、19か所の資産として地表に残っています。

世界遺産登録への道のり

推薦候補への選定は2024年9月9日のことです。国の文化審議会が、2026年の世界遺産委員会での登録を目指す推薦候補として「飛鳥・藤原の宮都」を選定しました。その後、政府は2025年1月末にユネスコへ正式な推薦書を提出しました。

推薦書を受け取ったユネスコは、諮問機関であるICOMOS(国際記念物遺跡会議)に評価を委託します。ICOMOSは独自に現地調査を行い、登録の可否について「登録勧告」「情報照会」「登録延期」「不登録勧告」の4段階で評価を示します。「飛鳥・藤原の宮都」については、2025年秋に現地調査が実施されました。

その後、評価報告書が2026年5月のGW前後に公表されるスケジュールとなっており、夏に開催予定の第48回世界遺産委員会での審議へと移ります。今まさにその評価が示される時期を迎えています。

ICOMOSの評価が世界遺産登録を左右する

世界遺産委員会での最終判断は、理論上は委員国の投票によりますが、実際にはICOMOSの勧告内容が決め手になることがほとんどです。過去の事例を見ると、「百舌鳥・古市古墳群」(2019年登録)は「登録勧告」を受けて委員会でも可決、「北海道・北東北の縄文遺跡群」(2021年登録)も同様のプロセスを経ています。一方、過去に「情報照会」や「登録延期」が出た場合は、追加資料の提出を経て翌年以降に再挑戦するケースが多く、1〜2年のタイムラグが生じます。

「飛鳥・藤原の宮都」は、地域的な遺産の保護状況や、複数の市村にまたがる構成資産の管理体制など、ICOMOSが着目しやすいポイントが複数あります。長年にわたる発掘調査の蓄積と、推薦書の精度が評価の鍵を握っています。

世界遺産登録後に何が変わるか

世界遺産への登録は、国内外からの観光客が増加するきっかけになります。2019年の「百舌鳥・古市古墳群」の事例では、登録決定後の1〜2か月で国内外の訪問者数が顕著に増え、仁徳天皇陵(大仙陵古墳)周辺の渋滞や入場待ちが発生しました。

明日香村・橿原市エリアでも、登録後の混雑は避けられないとみられています。地域側もすでに受け入れ体制の整備を進めており、2026年2月から電動アシスト自転車の導入が始まっています。また、ゴルフカート型の小型電動車による遺跡間の周遊ルートの運行も計画されており、足の不自由な方や体力に不安がある方でも遺跡巡りがしやすい環境が整いつつあります。

今が訪れる理由とアクセス情報

登録後の混雑を考えると、今のうちに訪れておくのは現実的な選択です。5月の明日香村は、田植え前の水田が広がり、飛鳥の古代田園風景に近い落ち着いた雰囲気が楽しめます。藤原宮跡は整備された広大な史跡公園で、晴れた日には大和三山(耳成山・畝傍山・天香久山)を一望できます。高松塚壁画館ではレプリカによる壁画の見学ができ、実際の壁画を見ているかのような精巧な展示です。

アクセスは近鉄橿原線の橿原神宮前駅または近鉄吉野線の飛鳥駅を起点にするのが一般的です。大阪難波から近鉄特急を利用すると橿原神宮前まで約50分、橿原神宮前から飛鳥駅まではさらに約10分です。構成資産が広いエリアに分散しているため、電動アシスト自転車(飛鳥駅周辺でレンタル可)かコミュニティバス「明日香周遊バス」を組み合わせると効率よく回れます。

世界遺産の審査結果がどちらに転んでも、飛鳥・藤原が日本古代史の舞台であることに変わりはありません。ただ、夏の委員会決定後は観光客が急増するとみられます。静かに遺跡を歩きたいなら、ICOMOSの評価が出るこの時期から夏の委員会までの間が、絶好のタイミングといえます。

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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