JR東日本は2026年10月23日、台風25号の影響で運転を見合わせている久留里線の久留里駅〜上総亀山駅間(9.6キロ)について、鉄道としての復旧を断念すると発表しました。この区間はもともと2027年4月1日付での鉄道事業廃止が決まっていましたが、台風による被災からの復旧を待たずに、列車が走ることなく廃止を迎えることになります。何が起きたのか、そして廃止までの残りの期間はどうなるのかを整理します。
被災の実態と「復旧を断念」に至った数字
久留里駅〜上総亀山駅間では、台風25号によって上総松丘駅〜上総亀山駅間を中心に大規模な盛土崩壊が発生しました。崩壊箇所は3カ所あり、それぞれの崩壊延長はおよそ20メートル、50メートル、60メートルにのぼります。崩れた土の量を合計すると約5600立方メートルという規模で、線路を支える基盤そのものが広範囲にわたって失われた状態です。
JR東日本が詳細調査を行った結果、この被害を鉄道として復旧させるには工事着手から半年程度の期間が必要と判明しました。一方で、この区間はすでに2026年3月9日付で鉄道事業の廃止を国に届け出ており、廃止予定日は2027年4月1日です。半年かけて復旧工事を終えても、運行できる期間はごくわずかしか残らない計算になります。
なぜ「廃止前提でも直して走らせる」を選ばなかったのか
ここで注目したいのは、JR東日本が「廃止が決まっているから直さない」という単純な判断だけでなく、復旧に必要な半年という工期と、残りの運行可能期間を具体的に比較した上で結論を出している点です。仮に今すぐ復旧工事に着手しても完了は2027年春以降になり、廃止予定日の2027年4月1日とほぼ重なるか、それを超えてしまう可能性があります。つまり「復旧させても、ほとんど走らせる期間がない」という時間的な制約が、断念の決め手になったと考えられます。
もう一つの視点は、代替バスがすでに用意されている路線だからこそ、この判断ができたという点です。久留里線の久留里〜上総亀山間は、2027年3月25日から日東交通による本格的な代替バスの運行が先行スタートする予定で、18年間・20億円という全額負担での地域交通への移行がすでに決まっています。鉄道の復旧工事に半年をかけて数ヶ月だけ列車を走らせるより、台風前から進めていた代行バスによる輸送体制をそのまま前倒しで本格化させるほうが、投じる資源に対して合理的だという経営判断が働いたとみられます。もし仮に、この区間に廃止計画がなく今後も長期的に鉄道を維持する前提だったなら、半年かけてでも復旧工事に入っていた可能性が高く、今回の断念は「廃止が決まっていたからこそ成立した」判断だと言えます。
旅行者への影響と対処法
最も大きな変化は、この区間を鉄道として体験できる機会が完全に失われたことです。台風25号による運転見合わせが始まった時点から、久留里〜上総亀山間に列車が戻ることはなく、そのまま2027年3月31日の廃止を迎えます。従来は「廃止までの約1年間に乗っておく」という選択肢がありましたが、今回の発表でその選択肢自体がなくなりました。記念列車やラストランのような催しも、運行再開を前提としないかぎり実施が難しい状況です。
現在この区間を訪れる場合は、代行バスでの移動が基本になります。2027年3月31日までは台風被害に伴う代行輸送が続き、4月1日の正式な鉄道事業廃止後は、日東交通による本来の代替バスに運行主体が引き継がれる見込みです。終点だった上総亀山駅周辺には亀山湖や亀山温泉など里山らしい風景が残っており、アクセス手段が鉄道からバスに変わっても、訪問自体は引き続き可能です。久留里線の他区間(木更津〜久留里間)は今回の廃止対象には含まれていないため、久留里駅までは引き続き鉄道で訪れることができます。木更津方面からの旅程を考える際は、久留里駅から先がバス区間になっている点を踏まえて計画を立てることをおすすめします。


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