日本を代表する港町・横浜は、開港によって国際的な玄関口となり、近代日本の歩みを支えてきました。小さな漁村から始まった町は、外国文化や技術の流入、鉄道の誕生、震災からの復興、そして現代の都市開発を経て大きく発展してきました。街を歩けば、その歴史の痕跡を今も数多く見つけることができます。ここでは、初めて訪れる方でも横浜の歴史を理解しながら楽しめる観光ガイドをご紹介します。
1. 横浜の歴史解説
開港の舞台裏(1859年〜)
1858年に結ばれた日米修好通商条約では、開港地として「神奈川(現在の横浜市神奈川区周辺)」が指定されていました。ところが神奈川宿は東海道に面した宿場町で、人々の往来が多く外国人との接触を幕府が警戒したため、実際の開港地には神奈川の入江にあった小さな漁村・横浜が選ばれました。
こうして「神奈川港」ではなく「横浜港」として開港。これが現在の神奈川県横浜市の名の由来にもつながっています。
横浜の名前の由来
「横浜」という地名は、かつて入江に細長く伸びる砂州(州浜)が「横に長く突き出した浜」のように見えたことに由来すると言われています。小さな漁村が、数年のうちに世界とつながる港町へと変貌しました。
象の鼻防波堤(1859年〜)
開港に伴い整備された最初の港湾施設が象の鼻防波堤です。横に曲がった形が象の鼻に似ていたためこの名がつきました。ここが横浜港の原点です。
日本初の鉄道と港(1872年〜)
1872年には、日本初の鉄道が新橋〜横浜(現在の桜木町駅)間に開通しました。横浜が終着駅に選ばれたのは、港から首都へ物資や人を迅速に運ぶ必要があったためです。鉄道と港は一体となって横浜の発展を支えました。
大さん橋の建設(1894年〜)
貿易拡大に対応して1894年に大さん橋が完成。大型外国船を直接接岸できる鉄桟橋で、日本を代表する国際港湾施設となりました。
新港埠頭の整備(1911–1913年〜)
20世紀初頭には貨物量の急増に対応して新港埠頭が埋め立てられ、赤レンガ倉庫(1911・1913年竣工)が建設されました。また、桜木町駅から埠頭を結ぶ貨物線汽車道が開通し、鉄道と港を直結する近代的な物流システムが整いました。
関東大震災と復興(1930年〜)
1923年の震災で港は壊滅的な被害を受けましたが、瓦礫を埋め立てて山下公園が造成されました。1930年には貨客船氷川丸も竣工し、国際航路の象徴として横浜に寄港しました。
戦後からみなとみらいへ(1980年代〜)
戦後、港の中心は本牧・大黒ふ頭へと移り、コンテナ港として発展しました。旧港湾地区は役割を終え、再開発によりみなとみらい21が誕生。帆船日本丸や横浜みなと博物館が整備され、港の歴史と未来志向の都市景観が融合するエリアとなっています。
2. 実際の観光ルート
① 桜木町駅(旧横浜駅)

1872年に新橋と横浜を結ぶ日本初の鉄道が開業した終着駅。港から東京へ物資や人を運ぶための最重要拠点であり、横浜を国際都市へと押し上げる原動力となりました。現在はみなとみらいの玄関口として多くの観光客が訪れます。
② 横浜みなと博物館 & 帆船日本丸

横浜港の歴史と仕組みを展示する博物館。最初に訪れることで散策全体の理解が深まります。隣接する帆船日本丸(1930年建造)は実際の練習帆船で、横浜の海事史を象徴する存在です。
③ 汽車道


桜木町から赤レンガ倉庫へ続く旧貨物線跡。レンガ橋脚や線路跡が遊歩道に残り、物流の歴史を感じながら歩けます。
④ 赤レンガ倉庫

1911・1913年竣工の保税倉庫。近代港湾建築の代表で、現在は文化・商業施設に生まれ変わり、当時の面影を残しています。
⑤ 横浜開港資料館

旧英国総領事館を活用した資料館。開港の経緯を示す文書や地図が展示され、中庭にはペリー来航を見届けた「玉楠の木」が立っています。
⑥ 象の鼻パーク

復元された象の鼻防波堤が開港当時の姿を伝えます。横浜港の出発点として必見の場所です。
⑦ 大さん橋国際客船ターミナル

豪華客船の寄港地。屋上デッキからは横浜港全体とベイブリッジを一望でき、国際港としての発展を実感できます。
⑧ 山下公園 & 氷川丸

震災復興で生まれた市民公園。海を望む遊歩道と、1930年竣工の貨客船氷川丸が当時の国際航路の歴史を物語ります。
⑨ みなとみらい21

旧港湾地区の再開発で誕生した未来都市。ランドマークタワーやクイーンズスクエアが建ち並ぶ中、帆船日本丸と保存ドックは歴史と現代都市が融合する象徴的なスポットです。
所要時間の目安
徒歩+観光で約4〜5時間。博物館や資料館をじっくり巡るなら半日〜1日プランに。
まとめ
横浜は、条約港として選ばれた政治的背景、天然の良港という地形条件、鉄道で首都と直結した交通の利便性に加え、近代港湾施設の整備や震災からの復興、再開発によって発展してきました。
ぜひこの散策ルートを歩いて、「横浜がなぜ国際都市となったのか」を感じてみてください!

