ANAスーパーフライヤーズカード(SFC)が2028年4月から大改定——ラウンジ利用に年300万円決済が必要に

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ANAのステータスカードとして航空旅行者に人気のスーパーフライヤーズカード(SFC)が、2028年4月から特典の構造を大きく変えます。これまで年会費を払うだけで維持できていたANAラウンジの利用権やスターアライアンス・ゴールド資格が、年間決済額300万円を超えるかどうかによって左右されるようになります。2026年4月にANAが公式に発表した内容で、判定期間は2026年12月16日から始まります。

SFCが「一生もの」と呼ばれてきた理由

SFCはANAのプラチナステータス(年間フライト実績に応じて付与される上位資格)を一度取得した際に申し込めるクレジットカードです。

通常のANAステータスは翌年末で失効します。しかしSFCは、いったん取得して年会費を払い続けるかぎり、フライトしなくてもプラチナ相当の特典が継続されます。ANAラウンジへの入室、スターアライアンス・ゴールドによる海外提携ラウンジの利用、優先搭乗・チェックイン・手荷物サービスなどが「一度修行すれば一生使える」として、旅行好きやビジネス旅行者の間で広く支持されてきました。

この「永続性」こそがSFCの最大の魅力で、1年間の集中的なフライトで必要ポイントを稼ぐ「SFC修行」が旅行者の間でひとつの文化になっていた理由でもあります。

何が変わるのか——「PLUS」と「LITE」の分岐

2028年4月以降、SFCの特典は年間決済額によってSFC PLUSSFC LITEの2区分に分かれます。分岐点となるのは、ANAカードまたはANA Payによる年間決済額300万円です。

SFC PLUS(年間300万円以上決済の場合)

  • ANAラウンジ:利用可
  • スターアライアンス・ゴールド資格:維持(海外提携ラウンジも利用可)
  • 優先チェックイン・優先搭乗・手荷物優先受け取り・専用保安検査場:引き続き利用可

SFC LITE(年間300万円未満の場合)

  • ANAラウンジ:利用不可
  • スターアライアンス資格:ゴールドからシルバーに格下げ(海外提携ラウンジも利用不可)
  • ANA便利用時の優先チェックイン・優先搭乗・手荷物優先・専用保安検査場:引き続き利用可
  • スターアライアンス加盟他社便での優先サービス:対象外

SFC LITEになっても、ANAグループ便を利用する際のラウンジ以外の優先サービスは維持されます。大きく変わるのは「ラウンジ利用権」と「海外での提携航空会社ラウンジ・優先サービス」です。

判定スケジュール

新制度の適用は2028年4月1日からです。最初の判定期間は2026年12月16日〜2027年12月15日の1年間で、この期間のANAカード・ANA Pay決済額の合計が2028年度の区分を決定します。

2026年12月15日以前の決済は判定に含まれません。判定期間の開始まではまだ半年以上ありますが、開始後は「気づかないまま1年が経っていた」という事態を避けるため、年末を前に自分の月々の決済ペースを把握しておくことをおすすめします。

なお、ANAマイルのライフタイム積算数が100万マイルを超えているミリオンマイラーは、決済額にかかわらず自動的にSFC PLUSの対象となります。

ANAはなぜこの改定を行うのか

今回の改定を一言で表すなら、SFCを「フライトへの忠誠心に報いるカード」から「ANAの経済圏に財布を預けるカード」へと転換する、という戦略上の判断です。

決済額を軸にする理由

従来のSFCは、過去のフライト実績(プラチナ取得の苦労)に対する終身保証という設計でした。しかし会社側から見ると、年会費だけを払って搭乗もカード決済もほとんどしない「休眠SFC会員」が積み上がっても、収益にはつながりません。年間300万円の決済を条件に据えることで、SFCホルダーをANAカード・ANA Payの安定的な利用者として囲い込む狙いがあります。

アゴラ(言論プラットフォーム)の分析によれば、この改定は「航空ロイヤリティ」から「決済ロイヤリティ」への移行であり、ANAが目指すのは単なるエアラインではなく、顧客の日常的な消費行動ごと取り込む「プラットフォーマー」としての立ち位置です。

海外航空会社が先行している

実はこの方向性、日本より先に米国の大手航空会社が実践してきました。デルタ航空はすでにステータス取得の基準を「飛行距離」から「Medallion Qualification Dollars(MQD)」という金額指標一本に絞り込んでいます。乗った距離より「いくら使ったか」を重視する仕組みで、ユナイテッド航空なども同様の方向に舵を切っています。

ANAの改定はこのグローバルトレンドへの追従とも読めます。日本市場でも「フライトするかどうかよりも、ANAカードで日常的に使い続けるかどうか」で上級会員の価値を測る時代に移りつつあります。

JALは追随するか

気になるのは、ANAの競合であるJALの動向です。JALにはSFCに相当する終身型の上級会員カード「JGC(JALグローバルクラブ)」があります。

JALは2024年にすでに大きな制度変更を行っています。従来のJGC取得は1年間の集中修行(FOPの年間積算)で達成できましたが、新制度では「Life Status Points(LSP)」を生涯かけて1,500ポイント以上貯める方式に移行し、取得難度を大幅に引き上げました。

この変更はまだ施行から日が浅く、会員も運用に慣れている最中です。取得後の継続特典についても現時点で変更は発表されておらず、JGCは対象JALカードを保有し続けるかぎり、年間決済額にかかわらずサファイア相当の特典(ラウンジ利用含む)が維持されます。制度を刷新したばかりのタイミングで、さらにANAと同様の特典分割に踏み切るのは考えにくく、当面はJGCの現行制度が続くとみるのが自然です。

ただし、「一度取れば永続」という設計が世界的に見て異例であることは、JALも承知しているはずです。ANAがこの一歩を踏み出したことで、業界全体の前提が変わりつつある面もあります。近い将来に追随する可能性は低いとしても、数年先の方向性まで断言はできません。JGC会員の方も、長期的な動向として頭の片隅に置いておくのはよいかもしれません。

旅行者への影響と対処の考え方

年間300万円の決済は月平均25万円相当です。カードをメインカードとして日常的に使っている方でも、これだけの金額を達成するにはある程度の意識的な集約が必要になります。

ANAカードへの決済集約:公共料金・保険料・定期購入・ネットショッピングなどをANAカード払いにまとめる方法です。

SFC LITEを受け入れる:ANA便の優先搭乗・手荷物サービスは引き続き利用できます。国内旅行がメインで、海外の提携ラウンジをほとんど使わない方であれば、LITEでも実用上の不便は少ないかもしれません。

SFC保有の継続を見直す:ラウンジ利用を主な目的にSFCを維持してきた方にとって、LITEのままでの年会費支払いが費用対効果に合うかどうかを改めて考える機会でもあります。

SFC修行を検討中の方にとっても、状況は変わりました。SFCを取得しても、ラウンジを使い続けるためには毎年の決済管理が必要になります。「一度取れば一生ラウンジが使える」という前提は2028年4月以降成立しなくなります。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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