JR北海道2025年度線区別収支発表、札幌圏が公表開始以来初の通年黒字に

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JR北海道は2026年7月3日、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の線区別収支とご利用状況を発表しました。全20区間の合計では営業損失が561億68百万円となり、前年度から20億44百万円縮小しています。なかでも目を引くのは、札幌圏4線区がまとめて公表を開始した2014年度以来はじめて通年で黒字になったことです。一方でローカル線区の多くは赤字がさらに拡大しており、明暗がはっきり分かれる結果になりました。北海道の鉄道網が今どう動いているのか、具体的な数字とともに整理します。

札幌圏が初の通年黒字、営業利益は9億73百万円

札幌圏(札沼線桑園〜医療大学、函館線札幌〜岩見沢、千歳・室蘭線白石〜苫小牧、函館線小樽〜札幌の4区間をまとめた区分)は、営業収益が497億21百万円となり、2014年度の公表開始以来で最高額を記録しました。前年度比では39億93百万円の増収です。営業費用も487億47百万円と17億99百万円増えましたが、収益の伸びがそれを上回り、営業利益は9億73百万円の黒字になりました。前年度は12億20百万円の赤字だったため、1年で21億94百万円改善したことになります。

JR北海道はこの増収の要因として、2025年4月に実施した運賃改定の効果に加え、新千歳空港や北海道ボールパーク(エスコンフィールドHOKKAIDO)へのアクセス利用による千歳線の好調な利用状況を挙げています。記録的な豪雪で運休が発生した年でもあったため、悪天候というマイナス要因を運賃改定と観光・イベント需要の増加で相殺した形です。

なぜ札幌圏だけが黒字化できたのか

札幌圏の黒字化を支えているのは、単純な運賃改定の効果だけではありません。新千歳空港駅と北海道ボールパーク最寄りの北広島駅は、いずれも千歳線沿線にあります。北海道ボールパークは2023年開業のファイターズの新拠点で、試合開催日には周辺人口だけではまかなえない規模の集客があり、鉄道利用者を押し上げる要因になっています。新千歳空港駅も、訪日客を含む航空利用者の増加が続けば、恒常的な底堅い需要として積み上がっていきます。

つまり札幌圏の黒字は、通勤・通学需要のような路線本来の利用に加えて、空港利用者やスポーツ観戦客といった、沿線人口の規模だけに左右されない集客要因を持てたかどうかが分かれ目になっているといえます。新千歳空港も北海道ボールパークも、広い範囲から人を呼び込める拠点である点が共通しています。運賃改定は全路線に一律にかかる効果ですが、それを収益に転換できるだけの需要の厚みがあるかどうかで、黒字と赤字の差が生まれています。

ローカル線区は運賃改定の効果を上回るコスト増で赤字拡大

一方、宗谷線名寄〜稚内、根室線釧路〜根室(花咲線)、根室線滝川〜富良野、室蘭線沼ノ端〜岩見沢、釧網線東釧路〜網走、日高線苫小牧〜鵡川、石北線新旭川〜上川、石北線上川〜網走、富良野線富良野〜旭川、留萌線深川〜石狩沼田の10区間(黄線区)をまとめた収支は、営業収益26億16百万円に対し営業費用181億88百万円で、営業損失は155億72百万円となりました。前年度と比べて7億78百万円の赤字拡大です。なお、このうち留萌線深川〜石狩沼田は2026年3月31日の営業を最後に翌4月1日付で全線廃止されており、今回の数字はこの区間が実際に運行していた最後の通年分の記録にあたります。

JR北海道の説明によると、黄線区全体では運賃改定の効果があったものの利用者数の減少で収益はわずかに減り、費用面では宗谷線名寄〜稚内の災害復旧工事による修繕費増加などが響いて744百万円の費用増加になったとしています。輸送密度(1日1kmあたりの平均輸送人員)を見ると、花咲線にあたる根室線釧路〜根室は201人/日、宗谷線名寄〜稚内は276人/日ときわめて低い水準にとどまっています。すでに廃止された留萌線深川〜石狩沼田も253人/日と同程度の水準で、低い輸送密度がそのまま路線廃止につながった実例といえます。運賃を上げても利用者数そのものが少ない路線では増収効果が限られ、修繕費や災害復旧費といった固定的なコストの増加を打ち消せない構造がはっきり表れた形です。

新幹線区間(新青森〜新函館北斗)は、営業収益103億17百万円(前年度比1億51百万円増)、営業費用220億25百万円(同5億55百万円減)で、営業損失は117億8百万円となり、前年度から7億7百万円縮小しました。青函トンネルの電気設備更新費用が一段落したことが費用減の主因で、収益自体は前年度のキャンペーン反動で利用者数が減ったものの、運賃改定効果でわずかに増収となっています。

利用者への影響と知っておきたいこと

旅行者の立場から見ると、今回の発表そのもので運賃やダイヤがすぐに変わるわけではありません。ただし、この収支データは今後のローカル線の維持・見直し論議の土台になる資料であり、輸送密度が極端に低い区間(花咲線、宗谷線名寄〜稚内など)は、今後もバス転換や運行形態の見直しが議論の対象になり続ける可能性があります。実際、同程度の輸送密度だった留萌線深川〜石狩沼田は2026年4月に全線廃止となり、すでに代替バスへの転換が行われています。これらの路線を使った旅行を計画している場合は、運行状況や代替交通の有無を直近の公式発表で確認しておくと安心です。

また、新千歳空港・札幌圏の増収傾向は、裏を返せば繁忙期の混雑が今後も続きやすいことを意味します。北海道ボールパークでの試合開催日や観光シーズンには、千歳線や快速エアポートの混雑が予想されるため、時間に余裕を持った移動計画や、可能であれば時間帯をずらした移動を検討するとよいでしょう。運賃改定によって初乗り運賃や主要区間の料金が2025年4月からすでに引き上げられているため、久しぶりに北海道を訪れる方は、事前に最新の運賃を確認してから旅程を組むことをおすすめします。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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