四国を鉄道で回る訪日外国人向けのフリーパスが、2026年10月1日から形を変えます。JR四国は2026年8月6日、四国内の鉄軌道会社と共同で発売している「ALL SHIKOKU Rail Pass」について、Trip.comでのQRチケット販売を始めるとともに、利用区間・パスの種類・価格を見直すと発表しました。あわせて「KAGAWA Mini Rail & Ferry Pass」を2026年9月30日で発売終了することも明らかにしています。
日本在住者は使えないきっぷですが、訪日する家族や知人に旅程を提案する場面では知っておく価値があります。特に小豆島を絡めた旅程を考えている場合は、9月末が区切りになります。
10月1日から変わること
Trip.comでQRチケットが買えるようになります
2026年10月1日から、オンライン旅行代理店のTrip.comでQRチケットの取り扱いが始まります。「ALL SHIKOKU Rail Pass」では2025年4月からKlookとの連携でQRコードによるチケットサービスが始まっていましたが、これがTrip.comにも広がる形です。
QRチケットで購入した場合、紙のチケットに引き換える必要がなく、購入後そのまま自動改札を通って乗車できます。購入日から90日以内に1回だけ、端末上で有効開始の操作をすると使えるようになります。従来どおり旅行会社や駅の窓口で購入した場合は、これまでと同じく紙チケットへの引き換えが必要です。
小豆島のフェリーとバスは対象から外れます
利用できる範囲が変わります。小豆島フェリー(高松〜土庄航路)と小豆島オリーブバスの利用が終了します。ただし2026年9月30日までに購入したパスについては、引き続きこの2つを利用できます。
4日間用・5日間用がなくなります
パスの種類が整理され、4日間用と5日間用の発売が終了します。10月1日以降は3日間用と7日間用の2種類になります。
3日間用・7日間用は値下げされます
国内発売と、JR西日本の訪日外国人向けインターネット予約サービス「JR-WEST ONLINE TRAIN RESERVATION」での価格が見直されます。
| タイプ | 現行価格(2026年9月30日まで) | 改定価格(2026年10月1日から) |
|---|---|---|
| 3日間用 | 12,500円 | 12,000円 |
| 7日間用 | 20,500円 | 20,000円 |
10月1日以降の発売価格は、3日間用が大人12,000円・小児6,000円、7日間用が大人20,000円・小児10,000円です。
なお、2026年10月1日発売分からは、きっぷの名称が「四国鉄道共通フリーパス」(英文名:ALL SHIKOKU Rail Pass)になります。
KAGAWA Mini Rail & Ferry Passは9月30日で発売終了
香川県内向けの「KAGAWA Mini Rail & Ferry Pass」は、2026年9月30日発売分をもって終了します。名称にFerryとあるとおり、フェリーを含む商品でした。小豆島フェリーがALL SHIKOKU Rail Passの対象から外れることと合わせて考えると、鉄軌道会社が共同で発売するパスから航路を切り離す整理が同時に進んでいると読めます。
パスの内容
10月1日以降の「四国鉄道共通フリーパス」で乗れる範囲は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有効期間 | 3日間、7日間 |
| 価格 | 3日間12,000円(小児6,000円)、7日間20,000円(小児10,000円) |
| 乗れる路線 | JR四国および土佐くろしお鉄道の全線(特急列車・快速・普通列車の普通車自由席)、阿佐海岸鉄道、高松琴平電気鉄道、とさでん交通の鉄道・軌道全線 |
| 乗れないもの | 「サンライズ瀬戸号」、各社のバス路線 |
| 利用資格 | 「短期滞在」の入国資格で日本を訪れる外国人旅行者 |
| 発売期間 | 通年(利用開始日の1か月前から当日まで) |
阿佐海岸鉄道については、土日祝運行の室戸発着便を除くDMV(鉄道・路線バスの両方)に乗車できます。当日空席がある場合に限られ、満席で乗れないこともあります。
購入場所は、海外での引換証発売、国内の駅・JR四国ツアー支店、JR-WEST ONLINE TRAIN RESERVATION、そしてKlookとTrip.comのオンライン旅行代理店という4つの経路です。
JR四国がこの見直しに踏み切った理由
一見すると細かな商品改定ですが、四国の観光をめぐる数字と重ねると、意図が見えてきます。
香川に集中する訪日客を四国全体へ広げたい
四国運輸局のまとめによると、2025年の四国における外国人延べ宿泊者数は前年比24%増の206万人泊で、比較可能な2011年以降で最多となりました。ただし内訳を見ると、香川が111万人泊と半分以上を占め、愛媛58万人泊、徳島23万人泊、高知13万人泊と続きます。高知は香川の8分の1程度です。
四国のインバウンドは、高松空港と瀬戸内の航路を入口とする香川への一極集中という形になっています。JR四国の側から見れば、高松に着いた客をいかに松山・高知・徳島へ動かすかが課題です。鉄道パスは、そのための道具として最も直接的な商品といえます。
この文脈で見ると、小豆島フェリーを外して4日間・5日間用を廃止し、3日間と7日間に絞った意味が読み取れます。3日間では香川と近隣を回るのが精一杯で、四国を一周しようとすれば7日間が必要になります。中間の選択肢を消すことで、より長い滞在へ誘導する設計と考えられます。差額は8,000円ですが、四国を一周する移動量を考えれば、7日間用のほうが1日あたりの単価は下がります。
Trip.comとの連携は中国語圏への販路です
QRチケットの取り扱いをKlookからTrip.comへ広げたことにも意味があります。Klookは香港発、Trip.comは上海発のプラットフォームで、どちらも中国語圏の旅行者が日常的に使う経路です。四国のように知名度で東京・京都に劣る地域にとって、こうしたプラットフォームの中に商品が並ぶかどうかは集客に直結します。
同時に、QRチケットには紙への引き換えが不要という運用上の利点があります。引換箇所は高松駅・松山駅・徳島駅・高知駅・琴平駅などに限られており、そこでの窓口業務は係員の手を取ります。JR四国の2025年度の単体の鉄道事業は、営業収益281億円に対して137億円の営業赤字でした。グループ全体では営業収益788億円で3期連続の黒字ですが、それを支えているのは駅ビルやホテル、不動産などの鉄道以外の事業です。鉄道の現場でコストを増やさずに販売を伸ばす手段として、QRチケットは理にかなっています。
500円の値下げは価格競争ではありません
3日間用も7日間用も値下げ幅は500円で、12,000円・20,000円という価格に対して2%から4%程度にとどまります。為替の影響で外国人にとっての割安感が大きい今、この程度の値下げが購入の決め手になるとは考えにくいところです。
むしろ意味があるのは、12,500円という中途半端な数字を12,000円に、20,500円を20,000円に整えたことのほうでしょう。オンラインの一覧で並んだときに、桁の見え方が変わります。パスの種類を4つから2つに減らしたことと合わせて、商品を選びやすくすることが今回の主眼だったと考えられます。
小豆島を外したことをどう見るか
小豆島フェリーと小豆島オリーブバスの除外については、公式発表に理由の説明がありません。「四国内鉄軌道会社と共同で発売している」というパスの性格に立ち返る整理という見方はできます。KAGAWA Mini Rail & Ferry Passの発売終了と同時に発表されていることからも、航路を含む商品構成そのものを見直したと読むのが自然です。
利用者の目線では、小豆島へ渡る予定があるかどうかで判断が分かれます。小豆島を旅程に入れるなら、9月30日までにパスを買っておけば従来どおり乗れます。10月以降に訪れる場合は、フェリー代を別に見込む必要があります。
旅行者への影響と、確認しておきたいこと
日本在住者はこのパスを買えませんが、訪日する知人の旅程を組む場合には次の点が判断材料になります。
| こんな場合 | 対応 |
|---|---|
| 小豆島を旅程に入れたい | 2026年9月30日までにパスを購入する |
| 4日間・5日間で組みたい | 10月以降は3日間用か7日間用のどちらかを選ぶ |
| 窓口での引き換えを省きたい | KlookまたはTrip.comでQRチケットを購入する |
| 香川県内だけ回りたい | KAGAWA Mini Rail & Ferry Passは9月30日発売分まで |
QRチケットには「購入日から90日以内に1回限り、端末上で有効開始の操作を行う」という条件があります。購入してから使い始めるまでの期間に余裕があるように見えますが、90日を超えると使えなくなるので、旅行日程が確定してから買うほうが安全です。
もうひとつ注意したいのが「サンライズ瀬戸号」に乗れない点です。東京から寝台特急で四国に入る旅程を考える人は多いのですが、この列車はパスの対象外です。高松までの運賃・料金を別に用意する必要があります。
払いもどしは、未使用で原則として有効期間開始日の前日までであれば扱われます。ただし購入方法によって取扱箇所や手数料が異なるため、購入した経路の条件を確認しておいてください。
まとめ
今回の見直しは、四国を7日間かけて一周したい人にとっては使いやすくなり、4日間から5日間で区切った旅程を考えていた人にとっては選択肢が減る変更です。小豆島を含めるかどうかも、9月30日を境に扱いが変わります。
訪日する家族や知人に四国を勧める予定がある人は、旅行時期が10月をまたぐかどうかをまず確認してみてください。9月中に購入すれば、小豆島フェリーが使える現行の条件のまま旅程を組めます。


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