JR四国は2026年8月26日の社長会見で、2026年7月の鉄道営業概況を発表しました。7月の全体収入は29億6200万円で前年比100.3%、金額にして800万円の増加です。全体収入が前年を上回るのは2026年3月以来4か月ぶりとなります。
数字だけ見れば「わずかに前年超え」ですが、内訳を追うと四国内と本州方面で正反対の動きが出ていることが分かります。四国へ旅行を計画している方にとっても、列車の混み具合を推し量る材料になる内容です。
7月の収入は四国内が伸び、本州方面が落ち込みました
収入の内訳は次のとおりです。
- 普通収入(計):25億6000万円(前年比100.2%、+400万円)
- うち四国内:7億3100万円(前年比103.0%)
- うち本州方面:18億2900万円(前年比99.1%)
- 定期収入:4億200万円(前年比100.9%)
- うち通勤:2億100万円(前年比98.3%)
- うち通学:2億100万円(前年比103.5%)
四国内の普通収入は103.0%と伸び、2026年5月以来2か月ぶりに前年を上回りました。一方で本州方面の普通収入は99.1%と、2026年5月から3か月連続で前年を下回っています。JR四国は7月の普通収入について「比較的天候に恵まれたことから」前年並みになったと説明しています。
輸送障害の状況も収入に影響します。2026年7月は予讃線の西大洲〜伊予平野間で盛土崩壊が発生し、7月2日と3日に影響が出ました。前年の2025年7月は土讃線が7月8日、14日、18日に大雨の影響を受けています。障害の規模としては前年のほうが日数が多く、この差も今年の数字を押し上げた一因と考えられます。
年度累計で見ると、全体収入は110億6000万円で前年比97.9%です。本州方面の年度累計が96.5%と落ち込んでいるため、単月で前年を超えても年度としてはまだマイナス圏にあります。
地区別に見ると高知と徳島が健闘しています
四国内の普通収入を県別に見ると、動きの違いがはっきりします。
- 香川:2億3100万円(前年比101.9%)
- 愛媛:2億5500万円(前年比100.0%)
- 徳島:1億2200万円(前年比104.8%)
- 高知:1億円(前年比109.2%)
高知が109.2%と突出し、徳島が104.8%で続きます。一方、本州方面の収入では愛媛が97.6%と落ち込んでおり、四国内と本州方面を合わせた愛媛の合計は98.4%と前年割れです。前述の予讃線の輸送障害が愛媛県内で発生したことを踏まえると、この落ち込みには一定の説明がつきます。
特急列車の利用は多くの区間で伸びました
1日平均の利用人員(上下計)も公表されています。
- 瀬戸大橋線の特急合計:6,257人(前年比102.3%)
- うち「しおかぜ」:3,981人(前年比102.2%)
- うち「南風」:2,276人(前年比102.4%)
- 瀬戸大橋線「マリンライナー」:13,656人(前年比101.1%)
- 高徳線(高松〜徳島)「うずしお」:1,844人(前年比107.4%)
- 土讃線(多度津〜阿波池田)「南風」「しまんと」:1,994人(前年比104.5%)
- 予讃線(多度津〜伊予三島)「しおかぜ」「いしづち」:4,561人(前年比102.7%)
主要3線区の合計は8,399人で前年比104.1%と、堅調な伸びを示しました。「うずしお」の107.4%という伸びが目を引きます。
一方、その他3線区は苦戦しています。予讃線(松山〜宇和島)の「宇和海」は1,759人で前年比98.9%、徳島線の「剣山」は267人で前年比96.4%と前年を下回りました。土讃線(高知〜窪川)の「あしずり」「しまんと」だけが645人・前年比106.3%と伸びています。
この数字から何が読み取れるでしょうか
本州方面の3か月連続前年割れが構造的な課題です
JR四国の収入の柱は本州方面です。7月の普通収入25億6000万円のうち、本州方面が18億2900万円と71%を占めます。この主力が3か月連続で前年を下回っている状況は、四国内の103.0%という伸びでは埋め合わせきれません。
本州方面の落ち込みは、瀬戸大橋を渡る需要そのものの減少を意味します。ただし瀬戸大橋線の特急は102.3%、マリンライナーは101.1%と、いずれも利用人員では前年を上回っています。人は乗っているのに収入が減っているというこのねじれが、今回の数字で最も注目すべき点です。
考えられる要因は、単価の低下です。JR四国は7月のスマえき(チケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」)の発売実績が前年比132.7%だったと発表しています。デジタルきっぷの利用が3割以上伸びているということは、割引の効いた商品を選ぶ利用者が増えている可能性があります。乗客数を維持しながら1人あたりの単価が下がれば、収入は前年を割ります。
これは事業者にとって難しい状況です。デジタル化を進めて手軽に買える割引商品を増やせば利用者は増えますが、単価は下がります。かといって割引を絞れば、高速バスや自家用車に流れます。四国の交通市場は自家用車の分担率が高く、鉄道が価格で競争せざるを得ない構造にあるためです。
インバウンドは伸びていますが規模はまだ限定的です
訪日外国人向けの「ALL SHIKOKU Rail Pass」は7月に1,064枚を発売し、前年比106.4%、枚数にして64枚の増加でした。伸びてはいるものの、月あたり1,000枚台という規模は、全体収入29億円に対して大きな比重を占めるものではありません。
JR四国は2026年8月19日に台湾鉄道観光協会と鉄道観光促進に関する連携協定を締結しており、8月6日には同パスのQRコード乗車サービス拡大も発表しています。インバウンド需要を取りに行く姿勢は明確ですが、それが収支を動かす規模になるまでにはまだ距離があると考えられます。
通学定期の伸びは何を意味するでしょうか
定期収入の内訳で、通勤が98.3%と落ちる一方、通学が103.5%と伸びている点も見逃せません。四国4県はいずれも人口が減少しており、通学定期の利用者が構造的に増える環境にはありません。この伸びは、運賃改定の影響や、通学手段として鉄道を選ぶ世帯が増えたことなど、別の要因を考える必要があります。
通勤定期の減少は、テレワークの定着や、そもそもの就業者数の減少を反映しているのではないでしょうか。定期収入は景気変動に左右されにくい安定収入とされてきましたが、その前提が崩れつつあるとすれば、JR四国にとってはより厳しい話です。
旅行者への影響
この発表は旅行者が直接何かをしなければならない内容ではありませんが、四国旅行を計画する際の参考にはなります。
「うずしお」が前年比107.4%と伸びていることから、高松〜徳島間は混み合う傾向にあります。高徳線の特急は編成が短いため、繁忙期に指定席を取らずに乗ると座れない可能性があります。この区間を使う予定があるなら、事前に指定席を押さえておくのが無難です。
一方、「宇和海」(松山〜宇和島)や「剣山」(徳島線)は前年を下回っており、比較的余裕があると考えられます。愛媛県南部や徳島県西部をゆったり回りたい方には、今が狙い目といえます。
料金面では、スマえきの利用が前年比132.7%と大きく伸びていることが示すとおり、デジタルきっぷに割安な商品が揃っています。四国内を移動する予定があるなら、駅で普通に乗車券を買う前に「しこくスマートえきちゃん」の商品を確認してみてください。
まとめ
JR四国の7月の収入は4か月ぶりに前年を上回りましたが、内訳は四国内の伸びと本州方面の落ち込みが相殺した結果です。利用人員は増えているのに本州方面の収入が減るというねじれは、単価の低下を示唆しています。
旅行者の立場では、割安なデジタルきっぷが充実している今の状況は歓迎できます。四国内の移動を計画するときは、アプリで発売されている商品を先に調べてみることをおすすめします。


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