近畿日本鉄道(近鉄)は2026年9月7日、平日オフピーク時間帯の名阪特急利用者向けに「名阪”得”急デジタルきっぷ(平日限定)」を発売すると発表しました。発売開始は9月15日、利用できるのは10月5日から12月18日までの平日です。大阪難波・近鉄日本橋・大阪上本町・鶴橋のいずれかと近鉄名古屋を結ぶ直通特急「ひのとり」「アーバンライナー」に、通常より610円安い4,180円で乗車できます。
半年前の試験販売より割引幅を縮めての「本格投入」
このきっぷは、まったくの新規企画ではありません。近鉄は2026年2月27日から4月23日にかけて、同じ平日オフピーク時間帯を対象にした「名阪<平日お試し>特急券付きデジタルきっぷ」を試験的に販売していました。当時の価格は3,980円で、通常運賃4,790円からの割引額は810円でした。今回の「名阪”得”急デジタルきっぷ」は4,180円で、割引額は610円にとどまります。対象列車も対象時間帯も同じ商品でありながら、半年後の「本格版」で割引幅が200円縮んでいる点は見過ごせません。
3月に実施した「お試し」が一定の需要を集めたからこそ、近鉄は同じ枠組みの商品を9月に再投入したと考えられます。同時に、割引幅を縮めても一定の需要が見込めると判断したからこそ、610円引きという水準に落ち着けたとも読み取れます。オフピーク時間帯の空席を埋めるための商品であることに変わりはなく、試験販売で得た反応をもとに、需要と採算のバランスを探っている段階だと考えられます。
新幹線とは正面から戦わない、近鉄の生き残り戦略
名阪間の移動は、所要時間で見れば近鉄に大きな分がありません。東海道新幹線「のぞみ」なら名古屋〜新大阪間は最短48分ですが、近鉄特急は大阪難波〜近鉄名古屋間でアーバンライナーでも2時間5分から2時間10分程度、ひのとりは2時間20分前後かかります。近鉄自身が明らかにしているところによれば、名阪間の移動における新幹線と近鉄特急の利用者比率はおよそ8対2で、東海道新幹線が開業して以来、一貫して新幹線が優勢という状況が続いています。
この差を縮めるため、近鉄は2020年に投入した新型車両「ひのとり」で座席の快適性を前面に押し出し、速さではなく乗り心地で勝負する路線を選んできました。今回の平日限定デジタルきっぷも、同じ発想の延長線上にあります。所要時間で新幹線に対抗するのではなく、価格と快適さで「時間に余裕のある平日昼間の移動」という、新幹線があまり意識しない需要層を掘り起こそうとする施策と見ることができます。
対象列車と購入方法
対象となるのは、大阪難波〜近鉄名古屋間を直通する特急のうち、始発駅を平日9時30分から16時30分の間に発車する便です。ひのとりはレギュラー車両、アーバンライナーはデラックス車両・レギュラー車両のいずれも指定できますが、ひのとりのプレミアム車両や、アーバンライナーのデラックス車両を利用する場合は追加料金が発生します。
きっぷは「近鉄名古屋⇔鶴橋、大阪上本町、近鉄日本橋、大阪難波」の片道乗車券と、対象列車の特急券引換券がセットになったデジタルきっぷで、途中駅での乗降はできません。近鉄名古屋から乗車した場合、鶴橋・大阪上本町・近鉄日本橋・大阪難波のいずれかで降車した時点で、きっぷは使用終了となります。購入は近鉄の「きんてつチケットEモール」限定で、発売開始は2026年9月15日から、乗車日の1か月前から前日まで購入できます。当日の購入はできません。支払いはクレジットカード決済(Google Payを含む)と電子マネー決済のみに対応しており、払い戻しには500円の手数料がかかります。
旅行者への影響と活用法
このきっぷが対象にしているのは、平日の日中に大阪と名古屋を移動する旅行者や出張者です。土日祝日は対象外なので、週末に名阪間を移動する予定の人はこのきっぷを使えません。あらかじめ乗車日を1か月前から前日までの間に指定して購入する必要があるため、直前に予定が変わりやすい人には向きません。逆に、平日に日程を確定できるビジネス出張や、平日の観光・帰省の予定がある人にとっては、通常より610円安く快適な座席で移動できる選択肢になります。
新幹線との比較では、所要時間はおよそ1時間15分から1時間30分ほど近鉄の方が長くなりますが、大阪難波は新大阪よりも大阪の中心部(なんば・心斎橋方面)に近く、近鉄名古屋も名古屋駅に直結しています。移動時間そのものより、目的地までのトータルの利便性や運賃の安さを重視する人には検討する価値があるでしょう。購入は「きんてつチケットEモール」でのデジタル販売に限られるため、事前にアカウント登録や決済手段を準備しておくとスムーズです。


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