2026年お盆の空は国内線5.4%減 ハワイとLCC国際線だけが伸びた理由

auto-eyecatch-29694c404c 交通・観光ニュース

国内の航空11社が2026年8月17日、お盆期間(8月7日〜16日の10日間)の利用実績を発表しました。11社合計の旅客数は国内線が前年同期比5.4%減の346万9052人、国際線が3.5%減の63万7429人で、どちらも前年を下回っています。同じ日にJR旅客6社が発表した鉄道の実績はほぼ横ばいでしたから、お盆の移動需要そのものが縮んだわけではありません。数字を細かく見ると、伸びた領域と減った領域がきれいに分かれています。

11社合計は国内線・国際線ともマイナス

まず全体の数字です。国内線は旅客数346万9052人(前年比5.4%減)に対し、提供座席数が393万3522席(同3.2%減)で、11社平均の搭乗率は88.2%と2.1ポイント下がりました。国際線は旅客数63万7429人(同3.5%減)、提供座席数74万2734席(同1.1%減)、搭乗率85.8%(2.2ポイント低下)です。

注目したいのは、旅客数の減り方より提供座席数の減り方です。国内線は座席そのものが3.2%減っています。つまり「売れなかった」だけでなく「そもそも売る席が少なかった」という側面があります。

区分 旅客数 前年比 提供座席数 搭乗率
国内線(11社計) 346万9052人 5.4%減 393万3522席 88.2%
国際線(11社計) 63万7429人 3.5%減 74万2734席 85.8%

ANAはハワイがお盆として過去最高、JALは5方面すべて前年割れ

ANAの旅客数は国際線が26万1115人(前年比0.7%減)、国内線が146万7546人(同7.7%減)でした。国際線はほぼ前年並みで踏みとどまっており、方面別では北米・欧州・ハワイが前年を上回り、中国大陸とアジア・オセアニアが下回っています。ハワイ路線は旅客数2万3465人(同1.1%増)でお盆として過去最高を記録し、搭乗率は92.7%に達しました。国内線は北海道方面を除いてすべて前年割れです。

JALグループは国際線が21万1955人(同8.1%減)、国内線が109万8816人(同5.8%減)と、ANAより下げ幅が大きくなりました。国際線は5方面すべてで前年を下回っています。ハワイ・グアム線の旅客数は2万3624人(同7.1%減)でしたが、提供座席数を8.8%減らしたため搭乗率は87.2%と前年を1.5ポイント上回りました。国内線の搭乗率は北海道・関西方面が90%を超えています。

中堅・LCCではエア・ドゥが搭乗率94.6%(0.7ポイント上昇)、スターフライヤーが92.5%(0.2ポイント上昇)と、旅客数を減らしながら搭乗率を上げました。スカイマークは国内線24万7214人(同0.3%増)と数少ないプラスです。

LCCの国際線が伸び、中国路線を持つ会社が沈んだ

国際線で最も伸びたのはジェットスター・ジャパンで、旅客数2万8469人(前年比48.7%増)、提供座席数も50.0%増でした。ZIPAIRも4万369人(同2.8%増)と伸ばし、搭乗率は84.9%で4.6ポイント上昇しています。一方でピーチの国際線は7万9157人(同3.0%減)でした。

対照的なのがスプリング・ジャパンです。国際線は1万6364人(同39.1%減)と大きく落ち込み、提供座席数も38.3%減らしています。その代わり国内線は1万7489人と前年の2.47倍、提供座席数は2.75倍になりました。中国路線を主力としてきた会社が、国際線の座席を国内線に振り替えている構図がはっきり出ています。

数字が示す3つの背景

台風で消えた便が国内線の減少を押し下げた

お盆期間の国内線には、はっきりした外的要因があります。台風13号(ドルフィン)が沖縄に接近し、ANAだけで8月7日に120便・約2万6000人、8日に100便・約2万1300人の欠航が決まりました。この2日間はお盆期間の初日と2日目にあたります。さらに台風15号(チャンホン)が11日に関東へ接近し、ANAの国内線58便、JALの6便が欠航して約1万1900人に影響が出ました。判明しているだけで約6万人分です。国内線全体の減少幅は約19万人ですから、この2社の欠航だけで3割前後を占めます。他社の欠航や、天候を理由に旅行そのものを見送った分を加えれば、減少の大半は天候要因と考えて差し支えないでしょう。搭乗率が88.2%と依然高い水準にあることも、需要が落ちたのではなく便が飛ばなかったことを示しています。

供給側の制約が国内線を細らせている

もう一つ見逃せないのが、提供座席数の減少です。ANAの国内線は座席数を5.1%、ソラシドエアは10.0%減らしました。パイロット不足と機材繰りは業界共通の制約になっており、収益性の高い国際線へ機材と乗員を回す判断が続いています。国内線は座席を絞って搭乗率を保つ運用に寄っているとみるのが自然です。これは旅行者にとっては「便が少なく、割引運賃の席も少ない」状態が続くことを意味します。

日本人の海外旅行はフルサービスからLCCへ移っている

国際線の内訳は、需要の消滅ではなく移動を示しています。JALが5方面すべてで減らす一方、ジェットスター・ジャパンが48.7%増、ZIPAIRが2.8%増というのは、同じ人が同じ方面へ安い座席で飛んでいると考えるほうが説明がつきます。円安と燃油サーチャージの高止まりが続くなかで、旅行そのものをやめるのではなく単価を下げて行く選択が広がっているのではないでしょうか。ハワイだけが例外的に強いのは、高価格帯でも予定を崩さない層が一定数いるためで、需要が二極化していると見ています。中国大陸方面の落ち込みは、この価格の話とは別に日中関係を背景とした供給縮小の結果であり、両者を混ぜて「海外旅行が不調」とまとめるのは正確ではありません。

旅行者が次の繁忙期に備えてやるべきこと

搭乗率の数字は、旅行者にとってそのまま「取りにくさ」を意味します。エア・ドゥ94.6%、スターフライヤー92.5%、ピーチ国内線89.6%という水準は、繁忙期にほぼ空席がないということです。しかも提供座席数が減っているので、来年以降も同じか、それ以上に取りにくくなると考えたほうがいいでしょう。年末年始の航空券は、発売開始日に押さえる前提で予定を組むのが現実的です。

台風の季節に旅行する場合は、欠航そのものよりも「振替が取れないこと」が問題になります。満席に近い状態では、欠航後に空席を探しても翌日以降まで空いていません。8月・9月に沖縄・九州方面へ行くなら、帰りの便を最終日の最終便にせず、1本前倒しして予備日を1日作っておくと安全です。航空会社は台風接近時に手数料無料の変更・払い戻しを事前に案内するので、天気予報が怪しいと感じたらその発表を待たずに公式サイトの特別対応ページを確認する習慣をつけておきたいところです。

海外旅行の予算を抑えたい場合は、LCCの国際線が伸びている今の流れが追い風になります。ジェットスター・ジャパンやZIPAIRは座席を増やしているため、フルサービス各社より価格の選択肢が広い状態です。逆にハワイ方面は搭乗率が90%を超えており、値下がりを待つ意味は薄いと考えられます。行き先が決まっているなら早期に確保し、行き先を選べるなら供給が増えている路線から選ぶ。この使い分けが、今の航空市場では効きます。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

ぴりかをフォローする
交通・観光ニュース

コメント