ANAが2026年8月7日、2026年6月の輸送実績を公表しました。国際線の旅客数は前年比113.2パーセントと二桁の伸びを見せた一方、国内線は97.6パーセントと前年を下回っています。同じ会社の同じ月でも、国境をまたぐかどうかで景色がはっきり分かれた1か月でした。旅行の予約を取る側から見ても、どの路線が混んでいてどこに余裕があるかを読む材料になります。
国際線と国内線の数字
| 区分 | 旅客数 | 前年比 | 利用率 |
|---|---|---|---|
| 国際線 | 758,531人 | 113.2% | 84.0% |
| 国内線 | 2,988,581人 | 97.6% | 74.7% |
利用率で見ると、国際線が84.0パーセント、国内線が74.7パーセントと、9ポイント以上の開きがあります。この差は、単に人が多いか少ないかというより、供給された座席に対してどれだけ売れたかの差です。国際線のほうが席を売り切っている状態に近いと言えます。
方面別に見た国際線
国際線を方面ごとに分解すると、構造がよく見えてきます。
| 方面 | 旅客数 | 前年比 | 利用率 |
|---|---|---|---|
| アジア/オセアニア | 468,765人 | 119.1% | 79.8% |
| 北米/ホノルル | 215,763人 | 105.1% | 88.4% |
| ヨーロッパ | 74,003人 | 104.2% | 83.5% |
つまり、旅客数の伸びを牽引しているのはアジア/オセアニアで、単独で国際線全体の6割以上を占めています。一方、利用率が最も高いのは北米/ホノルルです。人数の伸びと席の埋まり具合で、上位に来る方面が異なっている点は押さえておきたいところです。
羽田発着の主要国内線と運航実績
羽田発着の主要路線の搭乗率も公表されています。
| 路線(羽田発着) | 搭乗率 |
|---|---|
| 新千歳 | 83.1% |
| 伊丹 | 76.4% |
| 那覇 | 76.1% |
| 福岡 | 71.2% |
運航面では、国際線の運航率が96.2パーセント、定時到着率が88.2パーセント。国内線は運航率96パーセント、定時到着率77.0パーセントでした。国内線の定時到着率が国際線より10ポイント以上低いのは、便数が多く空港での折り返し時間が短いこと、そして6月という時期が梅雨と重なることが影響していると考えられます。
国内線の前年割れをどう読むか
伸びている国際線より、むしろ前年を下回った国内線のほうが考えるべき点は多そうです。
まず、6月という月の性格があります。祝日がなく、梅雨に当たるため、国内旅行としてはもともと動きの鈍い時期です。利用率74.7パーセントという数字自体は、閑散期としては極端に悪いわけではありません。
ただ、前年比97.6パーセントという減少をこの季節要因だけで説明するのは早計でしょう。ここ数年、国内線には構造的な向かい風が吹いています。人口減少で移動の総量が細っていくことに加え、オンライン会議の定着で出張が完全には戻っていません。北陸新幹線の敦賀延伸をはじめとする鉄道網の整備も、一部の区間では航空需要を削っています。
さらに、航空会社側の事情も見ておく必要があります。機材と乗員には限りがありますから、利用率84.0パーセントで単価も高い国際線と、利用率74.7パーセントの国内線があれば、経営としては国際線に資源を振り向けたくなります。国内線の旅客数が減ったのは需要が減ったからだけでなく、供給を絞った結果という側面もあり得ます。実際、この数か月でANAが発表してきた内容を見ても、国際線の増便や機材のグレードアップに関するものが目立ちます。
人数の伸びだけでは測れないもの
アジア/オセアニア方面が前年比119.1パーセントと大きく伸びた点も、人数だけで評価すべきではありません。
注目したいのは、この方面の利用率が79.8パーセントと、3方面の中で最も低いことです。旅客数が2割近く増えているのに利用率が最も低いということは、それ以上に座席を増やしている、つまり供給が旅客の伸びを上回っているということになります。路線を広げ、便数を増やしている拡大局面にあると読めます。
逆に北米/ホノルル方面は、旅客数の伸びが105.1パーセントと控えめである一方、利用率は88.4パーセントと最も高くなっています。座席がほぼ埋まっているため、これ以上増やすには機材を大型化するか便数を増やすしかない状態です。米系航空会社が相次いで日本路線を強化している背景には、こうした需給の逼迫があると考えるのが自然でしょう。デルタ航空が同じ8月7日に成田〜シアトル線の開設を発表したのも、この文脈の中にあります。
もう一つ、人数の増減だけでは見えない点として、乗っている客層の変化があります。訪日需要が伸びる局面では、日本発の旅行者と訪日客では単価も座席クラスの選び方も異なります。旅客数が同じでも、どちらが多いかで収益はかなり変わってきます。今回公表された数字は人数と利用率だけですので、その中身までは分かりません。輸送実績を見るときは、人数の伸びをそのまま業績の伸びと重ねないほうがよさそうです。
旅行者はこの数字をどう使えばよいか
まず、予約の取りやすさを見積もる材料になります。利用率88.4パーセントという北米/ホノルル方面は、直前になって席を探しても選択肢が限られる可能性が高い路線です。ハワイや北米西海岸を考えているなら、早めの予約が前提と考えておいてください。特に夏休みや年末年始のピークは、この数字よりさらに厳しくなります。
一方、アジア/オセアニア方面は利用率79.8パーセントと相対的に余裕があります。便数と路線が増えている局面ですので、価格競争が働きやすく、セール運賃が出てくる可能性も比較的高いと見てよいでしょう。行き先を決めきっていない段階なら、この方面のほうが選択の幅は広くなります。
国内線については、利用率74.7パーセントという数字が示すとおり、繁忙期を外せばまだ余裕があります。羽田発着で見ると、新千歳線の83.1パーセントが突出して高く、福岡線の71.2パーセントが最も低いという差もありました。福岡方面は新幹線という競合があるぶん、航空側が運賃で勝負せざるを得ない構図になっています。逆に言えば、旅行者にとっては割安な席を見つけやすい路線ということです。
定時性の面では、国内線の定時到着率77.0パーセントという数字を頭に入れておくと役立ちます。4便に1便近くが定時到着していない計算になりますので、到着後すぐに大事な予定を入れる行程は避けたほうが無難です。特に梅雨や台風の時期は、乗り継ぎに余裕を持たせてください。
まとめ
2026年6月のANAの数字は、国際線が伸び、国内線が縮むという構図をはっきり示しました。ただ、その中身を分けて見ると、方面ごとに需給の状況はかなり違います。北米・ホノルルは席が埋まっていて取りにくく、アジア・オセアニアは供給が増えて選びやすい。国内線は繁忙期を外せば余裕がある。こうした違いを踏まえて予約のタイミングを決めれば、同じ旅行でも取れる席と払う金額は変わってきます。月次の輸送実績は業界向けの資料に見えますが、旅行の計画にも十分使える材料です。

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