エミレーツ航空は2026年9月15日、ドバイで開催中の旅行見本市「アラビアン・トラベル・マーケット」の会期中に、日本政府観光局(JNTO)との間で観光分野の連携に関する覚書(MOU)を締結しました。あわせて、2026年10月26日から成田線を1日1往復から1日2往復に増便すると発表しています。中東と日本を結ぶ路線の選択肢が広がる動きなので、内容を確認しておきましょう。
何が発表されたのか
覚書は、エミレーツ航空のオルハン・アッバース極東地区商業担当上級副社長と、JNTOドバイ事務所の小林大祐所長が署名しました。内容は、日本の認知度向上と訪日旅行の促進、日本と中東地域の間の観光・旅行需要拡大に向けて両者が連携するというものです。
これにあわせて発表されたのが成田線の増便です。エミレーツ航空は現在、成田・羽田・関西の3空港それぞれで1日1往復(3空港合計で1日3往復)を運航していますが、2026年10月26日から成田線が1日2往復に増え、3空港合計で1日4往復・週28便体制になります。成田線と関西線には超大型機のA380型機、羽田線にはボーイング777-300ER(4クラス仕様)が投入されています。関西線へのA380投入は2024年6月に始まっており、ファーストクラスからエコノミークラスまで4クラスを備えた機材です。なお成田線の2便目は当初2026年5月からの開始が予定されていましたが、後述する中東情勢の混乱の影響で10月26日に延期された経緯があります。
このほか、ファーストクラス・ビジネスクラス利用者向けに、空港と自宅やホテルの間を無料で送迎する専用車サービス(片道最大100キロ)が成田・関西の両空港で提供されているほか、大阪・梅田には航空券の予約や旅行相談ができる直営の「トラベルストア」も構えています。今回の覚書は、これらの既存サービスも含めて日本市場への取り組みをあらためて打ち出す位置づけといえます。
なぜ今、日本路線への投資を強化するのか
背景にあるのは、2026年前半に中東情勢が大きく混乱したことです。2026年3月にはイランによる攻撃でドバイ国際空港が事実上の閉鎖状態に陥り、多数の便が欠航しました。この影響でエミレーツ航空は6月末までテヘラン・バグダッド・バスラ便を運休し、カタール航空も6月にイラン・イラク・シリア便を一時欠航しています。中東系各社が運航をホルムズ海峡周辺で見合わせ、中央アジアやサウジアラビア上空を迂回するルートに切り替える事態が続き、成田線の2便目増便もこの混乱のあおりを受けて5月から10月へと延期されました。
この混乱は訪日中東客数にも直接表れています。JETROの統計によると、2026年4月の中東からの訪日外客数は前年同月比21.4%減の2万2,300人まで落ち込みましたが、情勢がいったん落ち着いた5月には前年同月比67.8%増の3万9,000人となり、5月としては過去最高を記録しました。2025年通年では中東からの訪日客数が25万7,197人(前年比54.7%増)と過去最高を更新しており、コロナ後の回復基調そのものは強かったところに、一時的な運休・迂回という逆風が重なった形です。エミレーツ航空にとって、混乱が一段落したこのタイミングでJNTOとの覚書や増便を打ち出すのは、落ち込んだ需要を早期に回復軌道へ戻し、コロナ後最高水準まで押し上げたいという狙いがあると考えられます。
もう一つの背景は、中東系航空会社どうしの競争です。カタール航空は2026年7月15日に羽田線を再開し、8月4日にはデイリー化するなど東京路線を強化しています。エティハド航空も6月18日からA380型機を投入し、成田〜アブダビ線を毎日運航しています。中東情勢の混乱から抜け出すタイミングで各社そろって日本路線への投資を積み増しており、エミレーツ航空の成田線増便とJNTOとの提携強化も、この競争環境のなかで存在感を維持するための一手とみられます。
旅行者への影響と対処法
成田線が1日2往復に増えることで、これまでより座席の選択肢が広がります。特に年末年始やゴールデンウィークなど、これまで早期に満席になりやすかった時期でも予約が取りやすくなることが期待できます。ドバイ乗り継ぎでヨーロッパやアフリカ方面へ向かう長距離旅程を検討している方にとっても、選べる便数が増える分、乗り継ぎ時間の融通が利きやすくなります。
ファーストクラスやビジネスクラスを利用する方は、成田・関西発着であれば無料の専用車送迎サービスが使えるかどうかを予約時に確認しておくとよいでしょう。対象エリアは、成田が東京23区や千葉・埼玉・神奈川の大部分、関西が大阪市を中心に奈良・京都・兵庫の大部分までと幅広く、空港までの移動手段を別途手配する必要がなくなります。関西を訪れる予定があり、対面で航空券の相談をしたい方は、大阪・梅田のトラベルストアを利用するという選択肢もあります。
また、エミレーツ航空だけでなくカタール航空やエティハド航空も同時期に東京路線を強化しているため、中東・ヨーロッパ方面への旅行を計画している方は、複数の中東系航空会社の運賃や便数を比較したうえで選ぶと、希望に近い日程やクラスを見つけやすくなります。中東情勢は依然として流動的な部分もあるため、出発の直前まで運航状況に変更がないか公式サイトで確認する習慣もあわせて持っておくと安心です。


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