近鉄「Les Saveurs 志摩」11月1日運行開始 車両公開と料金・予約方法まとめ

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近畿日本鉄道は、新型レストラン列車「Les Saveurs 志摩(レ・サヴール・しま)」の車両を完成させ、内外装を公開しました。同列車は2026年11月1日から近鉄名古屋〜賢島間で運行を開始します。運行は1日1往復で、週6〜7日程度の設定です。料理は志摩観光ホテルの総料理長・樋口宏江氏が監修する本格フレンチで、4号車の「フレンチコース席」は平日33,000円・土休日36,000円、1・2号車の「フレンチ膳席」は平日19,000円・土休日21,000円という料金設定になっています。2026年9月1日10時30分には特設サイトで11月・12月運行分の一般予約受付が始まりました。近鉄にとって初めての本格的なレストラン列車となる今回の投入は、単なる新型車両のお披露目にとどまらず、伊勢志摩エリアの観光戦略そのものを映す動きといえます。

車両と内装 志摩の海をまとった4両編成

近鉄名古屋・京都線系統で活躍してきた12400系「サニーカー」の1編成(NN02編成)を種車に、約8か月の改造工事を経て完成しました。改造後の車両は形式上19400系に改められています。外観は志摩の「海・白砂・太陽」をイメージし、青色部分には光の当たり方によって色調が変化するメタリック塗装を採用しました。

編成は4両で、座席は全50席の全席指定です。1号車はツイン(2名)席5卓で定員10名、車椅子スペース3台と車椅子対応トイレ、女性用トイレ、洗面所、パウダールームを備えます。2号車はツイン席10卓とシングル(1名)席4卓で定員24名です。1・2号車は気軽に楽しめる「フレンチ膳」を提供する車両です。3号車は調理を担うキッチンとカウンターです。4号車はサロン(4名)席2卓とツイン席4卓で定員16名、間接照明と革張りの家具調椅子を配し、本格的なコース料理をゆったり味わう「フレンチコース」専用車両となっています。

料理と料金プラン フレンチコースとフレンチ膳

料理監修を務めるのは、志摩観光ホテルの樋口宏江総料理長です。1991年に同ホテルへ入社し2014年に総料理長に就任、2016年の伊勢志摩サミットではワーキングディナーの調理を担当した経歴を持ちます。ホテル内のフレンチレストラン「ラ・メール」は2019年のミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版で一つ星を獲得しており、2017年には農林水産省の「料理マスターズ」でブロンズ賞、2024年には同賞のシルバー賞と文化庁長官表彰、2023年にはフランスの農事功労賞シュヴァリエを受章しています。

4号車の「フレンチコース」は樋口氏監修の本格コースで、平日33,000円・土休日36,000円です。1・2号車の「フレンチ膳」は近鉄・都ホテルズが監修し、より軽めに楽しめる内容で、平日19,000円・土休日21,000円に設定されています。いずれの料金にも近鉄名古屋〜志摩エリアのフリー区間の乗車券、特急料金相当分、食事、ウェルカムドリンク、食後のドリンクが含まれます。運行区間は近鉄名古屋発11時05分、賢島着13時35分の往路と、賢島発16時35分、近鉄名古屋着19時12分(土休日は19時08分)の復路で、1日1往復の設定です。

なぜ近鉄はいまこのレストラン列車を投入するのか

「しまかぜ」との違いと客層の使い分け

近鉄はこれまでも伊勢志摩方面の観光特急に力を入れてきました。2013年デビューの観光特急「しまかぜ」は、大阪難波・京都・近鉄名古屋の各方面から賢島へ向かう豪華特急で、プレミアムシートを利用する場合、大阪難波〜賢島間で運賃・特急料金・特別車両料金を合わせて片道5,460円程度の追加負担で乗車できます。ただし食事は基本的に車内のカフェ車両や個別の弁当・軽食が中心で、しっかりしたコース料理を前提とした列車ではありません。2016年デビューの「青の交響曲」も特急料金520円・特別車両料金730円という手頃な価格帯で、ラウンジ車両でスイーツやワインを楽しむ大人向けの観光特急という位置づけです。

これに対してLes Saveurs志摩は、移動そのものよりも食事を主目的にした列車です。フレンチ膳席でも19,000円、フレンチコース席は最大36,000円と、しまかぜ・青の交響曲とは一桁近く異なる価格帯に設定されており、乗車のみの利用ができない点も含めて、明確に異なる客層を狙っていることが読み取れます。しまかぜ・青の交響曲が移動の質を上げる列車だとすれば、Les Saveurs志摩は移動時間を高級レストランの営業時間に変える列車で、近鉄の観光特急ラインアップに新しい価格帯・体験価値の階層を作った形です。

高付加価値インバウンド戦略という文脈

伊勢志摩エリアは年間で約1,000万人の観光客が訪れる一方、インバウンド比率は1〜2%程度と低く、全体の1%を下回る年もある地域です。三重県などが事務局を務める伊勢志摩高付加価値インバウンド観光地づくり推進協議会は、G7伊勢志摩サミット(2016年)以降、量よりも単価を重視した誘致を進めており、2024年には伊勢志摩を訪れるインバウンド旅行者の一人当たり消費単価が前年比41.8%増の49,194円まで伸びています。樋口総料理長自身がサミットのワーキングディナーを担当した実績を持つことも、伊勢志摩が国際的なもてなしの舞台としての経験を積んできた土地であることを裏付けています。

Les Saveurs志摩の価格帯は、この高付加価値層を明確に意識したものです。国内の富裕層・シニア層に加え、伊勢志摩を訪れる少数の富裕層インバウンド客にとっても、移動と食事が一体化した非日常体験は魅力的な選択肢になります。近鉄にとっては、輸送人員の量的拡大が難しい地方路線において、単価の高い商品を投入することで収益を確保する狙いが明確です。

通年運行という判断が示す採算性の見立て

Les Saveurs志摩が期間限定の観光企画ではなく、週6〜7日・1日1往復という通年運行の体制で投入される点は見逃せません。改造対象となった12400系1編成は約7.5億円規模の投資が投じられたと報じられており、約8か月の改造期間をかけて専用車両に仕立てています。これだけの投資と手間をかけた車両を、期間限定のイベント列車としてではなく通年の定期運行商品として位置づけたことは、近鉄が一定の稼働率と客単価を見込んでいることの表れです。

全50席という規模は、しまかぜのような大量輸送を前提にした車両ではなく、飲食店に近い稼働管理がしやすい規模でもあります。満席想定でフレンチコース席16名・フレンチ膳席34名、1往復あたり最大50名という客数は、名古屋〜伊勢志摩間という距離と時間(往路約2時間半)を踏まえると、高級レストランの1日の客数に近い水準です。近鉄が乗車のみ不可・食事とセットの旅行商品という販売方式を取っているのも、レストラン経営に近い発想で稼働率と単価を管理する狙いがあるとみられます。

旅行者への影響と予約のポイント

Les Saveurs志摩に乗車したい場合は、近鉄が運営する特設サイトからのインターネット予約が必須です。乗車のみの購入はできず、必ずフレンチコースまたはフレンチ膳とセットになった旅行商品として申し込みます。2026年9月1日10時30分から11月・12月運行分の販売が始まっており、以降は3か月前の1日から1か月分ずつ販売される予定です。予約の締め切りは乗車日の11日前までとされているため、希望する日程が決まっている場合は早めの予約が安心です。キャンセルについては募集型企画旅行の約款に基づく取消料が発生するため、日程に余裕を持って申し込むことをおすすめします。

費用感としては、2名でフレンチコース席を利用する場合、土休日で1人36,000円、2人で72,000円が目安です。フレンチ膳席であれば1人19,000円からとなり、記念日や特別な移動として利用するハードルはしまかぜよりも高くなります。逆に言えば、往復の移動時間そのものをフレンチレストランでの数時間として組み込める点は、伊勢神宮参拝や志摩の観光をセットにした1泊2日・2泊3日の旅程に組み込みやすい商品でもあります。往路で近鉄名古屋から賢島まで移動しながら昼食のコースを楽しみ、志摩で1泊して観光した後、復路の便を使わずに別ルートで帰るといった使い方も可能です。予約時には往復ともにLes Saveurs志摩を利用するのか、片道のみ利用するのかによって旅行商品の内容が変わるため、特設サイトで自分の旅程に合ったプランを確認してから申し込むことが重要です。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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