北陸新幹線新大阪延伸、8ルートの費用対効果(B/C)が判明 小浜・京都ルートが最高評価の理由

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2026年6月10日、北陸新幹線の敦賀〜新大阪間延伸をめぐり、国土交通省が試算した8つのルート案の費用対効果(B/C)が明らかになりました。2016年に正式決定された「小浜・京都ルート」は、その後の再計算で1.0を下回るとされてきましたが、今回の新しい評価基準では8案中最高の「1.1」となり、注目を集めています。

この記事では、8ルート案の内容とB/Cの一覧、そして評価がこれまでと大きく変わった背景を整理します。

北陸新幹線敦賀〜新大阪間、延伸ルート再検証の経緯

北陸新幹線は2024年3月に金沢〜敦賀間が延伸開業しましたが、敦賀から先、新大阪までの区間は2016年12月に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(与党PT)が「小浜・京都ルート」を採用すると決定したものの、依然として未着工の状態が続いています。

建設費の見積もりが2016年当時の約2兆円から、その後の物価上昇や工事の難航もあって3兆円台後半〜5兆円台後半まで膨らんだことや、京都市内の駅位置・ルートが固まらないことから、整備新幹線着工の5条件をクリアできず、2026年度予算でも着工は見送られています。

こうした状況を受けて2025年12月、自民党と日本維新の会による新しい与党PTが発足し、現行の小浜・京都ルートを含めた8つのルート案を改めてデータに基づいて再検証することで合意しました。今回判明したB/Cの試算は、この再検証の一環として国土交通省がまとめたものです。

再検証の対象となっている8ルート案

ルート名概要
小浜・京都ルート(南北案)2016年決定の現行計画。敦賀〜小浜を経由し、京都駅地下に南北方向のホームを新設して新大阪へ
小浜・京都ルート(桂川案)同じ敦賀〜小浜経由だが、京都駅の西約5kmにあるJR桂川駅付近に地下駅を新設
米原ルート(乗換)敦賀から米原駅まで新幹線を新設し、東海道新幹線に乗り換えて新大阪へ
米原ルート(乗入・直通)敦賀から米原駅を経て、東海道新幹線に直通乗り入れ
湖西ルート(新設)敦賀から琵琶湖西岸を経由する新線を建設
湖西ルート(改軌・中速)在来線の湖西線を新幹線サイズの軌間に改造し、中速で運行
舞鶴ルート(京都経由)敦賀から舞鶴を経由し、京都へ向かう
舞鶴ルート(亀岡経由)敦賀から舞鶴・亀岡を経由する
亀岡ルート敦賀から亀岡を経由(京都駅は通らない)

今回判明した費用対効果(B/C)

国土交通省は今回、東京〜新大阪間が全線開業した場合の効果を考慮する「一体評価」という新しい基準でB/Cを試算しました。判明した主な数値は以下の通りです。

ルートB/C(一体評価)建設費(物価上昇込み試算)
小浜・京都ルート(南北案)1.1最大5兆8,000億円
小浜・京都ルート(桂川案)1.1最大5兆5,000億円
米原ルート(乗換)1.01兆3,000億円超
米原ルート(乗入・直通)0.72兆1,000億円超
上記以外の5ルート(亀岡・湖西新設・湖西改軌・舞鶴2案)1.0前後8案全体で1兆7,000億円〜7兆9,000億円の範囲

整備新幹線の着工条件である「5条件」では、原則としてB/Cが1を上回ることが求められます。今回の一体評価では、小浜・京都ルートのみが1.1でこの基準を上回り、8案中で唯一「1を超えるルート」となりました。

なお、2016年の試算(敦賀〜新大阪間のみを評価する旧基準)では、小浜・京都ルートは1.1、米原ルートは2.2とされていました。その後、2025年に国会議員有志が建設費の高騰や敦賀開業を踏まえて再計算したところ、小浜・京都ルートは0.5程度まで低下し、米原ルートが1を上回るとする試算も示されていました。今回の一体評価によって、両ルートの優劣が再び逆転したことになります。

なぜ評価基準が「一体評価」に変わったのか

これまでのB/C試算は、未着工区間(敦賀〜新大阪間)だけを切り出して費用と便益を計算する方式でした。この方式では、建設費がかさむ小浜・京都ルートのB/Cは0.5程度まで落ち込み、建設費の安い米原ルートが優位という結果になっていました。

これに対して今回の一体評価は、北陸新幹線が東京から新大阪まで全線開業した場合に、新規区間だけでなく東京〜敦賀間の既存区間を含めた路線全体でどれだけ利用者が増え、便益が生まれるかを試算する方式です。国はこの方式について、東京〜新大阪間が全線開業した効果を踏まえて検討する考えを以前から示していました。

小浜・京都ルートのB/Cが最高となった理由

一体評価で小浜・京都ルートだけが1.1となった背景には、大きく2つの要因が考えられます。

1つ目は、8案の中で唯一、新幹線が京都駅(または京都駅近郊の桂川駅)を直接通る点です。京都は国内有数の観光・ビジネス需要があり、北陸方面から京都への移動需要を新幹線にそのまま取り込める効果は、他のルートにはない強みです。

2つ目は、評価方法そのものが「新規区間の利用者だけ」ではなく「東京〜敦賀間を含む全線の利用者便益の増加」を計算に含めるようになった点です。小浜・京都ルートが開通すれば、北陸〜京都間の新規利用者の一部は東京〜敦賀間の既存区間も乗り継いで利用することになり、その分の便益も全線評価に上乗せされます。京都という大きな目的地を直接結ぶルートほど、この「既存区間への波及効果」も大きくなりやすいと考えられます。

つまり、小浜・京都ルートが「単純に最も効率の良いルートだから」というよりも、評価のものさしが「新大阪までの新規区間の収支」から「東京〜新大阪全体のネットワーク効果」に変わったことで、京都を通るルートの強みがより大きく反映されるようになった、というのが今回の結果の本質といえそうです。

米原ルートのB/Cが下がった理由

一方、2016年に2.2という高いB/Cを示していた米原ルートは、一体評価では乗換案で1.0、乗入(直通)案では0.7まで下がりました。

確認できる範囲でまず言えるのは、建設費の差です。米原駅で乗り換える案の建設費が1兆3,000億円超であるのに対し、東海道新幹線に直通する案は2兆1,000億円超と、8,000億円ほど高くなっています。乗り換えをなくすことで利用者の利便性は高まりますが、その便益の増加分よりも、東海道新幹線への乗り入れに必要な設備投資(軌間や信号システムの統合など)の増加分の方が大きかった可能性があります。

なお、東海道新幹線は世界でも有数の過密ダイヤで運行されており、北陸新幹線が乗り入れることで東海道新幹線側の運行本数や利便性に何らかの影響が生じる可能性も指摘されています。こうした影響が今回のB/C試算にどこまで反映されているかは、現時点の公表情報からは確認できませんでしたが、米原ルート(乗入)のB/Cが乗換案よりもさらに低くなった一因である可能性も考えられます。

今後の見通しと旅行者への影響

与党PTは、沿線自治体やJRの意向、今回のB/C試算なども踏まえながら、今国会中のルート絞り込みを目指すとされています。関西経済界は従来から小浜・京都ルートを「最も望ましい」としており、今回の一体評価の結果はこの立場を後押しする材料となりそうです。一方、日本維新の会は建設費の安さや工期の短さを理由に米原ルートなど他案の検討を求めており、与党PTでの議論は今後も続く見通しです。

旅行者にとって最も気になるのは、やはり「いつ開業するのか」「敦賀での乗り換えはいつまで続くのか」という点だと思います。今回の試算でルートの方向性に一定の材料は示されたものの、ルートの最終決定や着工5条件のクリアにはまだ時間がかかる見通しです。少なくとも数年単位では、関西方面へは敦賀での特急サンダーバードへの乗り換えが続くと考えておくのが現実的でしょう。今後もルート決定に関する続報が出た際には、改めてご紹介したいと思います。

まとめ

2026年6月10日に判明した北陸新幹線敦賀〜新大阪間8ルート案のB/Cは、評価方法を「一体評価」に変更した結果、現行の小浜・京都ルートが8案中唯一1を超える1.1となりました。これは京都駅を直接結ぶルートとしての強みと、新規区間だけでなく既存区間も含めた全線の便益を評価する新基準が組み合わさった結果と考えられます。一方で米原ルートは建設費の増加もあって順位を落とす結果となりました。ルートの最終決定にはまだ時間がかかりそうですが、引き続き今後の動向を注視していきたいと思います。

参考リンク

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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