南海が次期空港特急の導入を決定 デザインはピニンファリーナ、2031年なにわ筋線で大阪駅直結へ

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南海電気鉄道は2026年8月6日、2031年春の開業を予定するなにわ筋線への乗り入れに向けて、次期空港特急を導入すると発表しました。車両デザインを担当するのは、フェラーリやマセラティを手がけてきたイタリアのピニンファリーナです。同社が日本の鉄道車両のデザインを担当するのは今回が初めてで、車両にはピニンファリーナのエンブレムが掲出される予定です。関西空港と大阪都心を結ぶ看板列車が、開港以来はじめて世代交代に向けて動き出しました。

発表されたのは「導入の決定」とデザインの担い手

今回のリリースで確定したのは、なにわ筋線の開業に向けて次期空港特急を導入すること、そしてそのデザインをピニンファリーナが担当することの2点です。車両のデザインやコンセプト、投入時期、両数といった具体的な内容は今後順次発表されるとしており、現段階では姿かたちは明らかになっていません。

南海はあわせて、現行の空港特急「ラピート」が築いてきた価値と精神を次期空港特急へ継承すると説明しています。ラピートは関西空港の開港に合わせて1994年9月4日に運行を開始し、2026年6月末までに延べ約7,600万人が利用してきました。30年以上にわたって関西空港アクセスの顔を務めてきた列車の後継が、公式に位置づけられた形です。

ピニンファリーナは自動車のデザインで知られていますが、鉄道車両も手がけており、イタリアの高速列車やロンドンとパリを結ぶユーロスター「e320」の実績があります。日本の鉄道会社が海外のカロッツェリアに車両デザインを委ねる例はほとんどなく、発表そのものが異例といえます。

なにわ筋線が関西空港アクセスを塗り替える

次期空港特急の前提になっているなにわ筋線は、大阪駅(うめきた地下ホーム)から新今宮駅までを結ぶ7.2kmの新線です。駅は大阪、中之島、西本町、JR難波、南海新難波、新今宮の6つで、西本町から北がJR西日本と南海の共用区間、そこから南がそれぞれの区間に分かれます。開業目標は2031年春です。

総事業費は当初約3,300億円と見込まれていましたが、2026年4月28日に大阪府の吉村洋文知事が、約6,500億円へ倍増する見通しを明らかにしました。増額分のうち2,000億円は資材費・労務費・用地費の高騰によるもので、地中障害物の撤去やシールド工事の工法変更も上乗せ要因になっています。それでも2031年春という開業目標は変えない方針が示されています。

南海の列車の運行計画は、空港急行が大阪駅発着、空港特急は大阪駅を越えてJR新大阪駅まで乗り入れる想定です。実現すれば、新大阪から乗り換えなしで関西空港まで到達できるルートが南海側にも生まれます。大阪都心と関西空港は30分台で結ばれる見込みで、現在より20分ほど短縮されます。

南海がこのタイミングで次期空港特急を決めた理由

「なんば止まり」という構造的なハンデを解消できる

現在のラピートは、なんばと関西空港を最短約37分で結んでいます。運賃は乗車券970円に特急料金700円(レギュラーシート)を加えた1,670円、スーパーシートなら特急料金910円で計1,880円です。割引商品の「関空トク割ラピートきっぷ」を使えばレギュラーシートが1,560円、スーパーシートが1,740円になります。一方、同じ区間を走る空港急行は970円のみで所要時間は約44分です。

つまり南海の場合、特急料金を払って短縮できる時間は7分ほどしかありません。それでもラピートが支持されてきたのは、全席指定で荷物を持ったまま確実に座れるという価値があるからです。ただし、なんばに着いた後で梅田や京都へ向かうには乗り換えが必要で、この一手間がずっと弱点でした。

対するJR西日本の「はるか」は、関西空港から天王寺、大阪、新大阪を経て京都まで直通しています。キタや京都に向かう旅行者にとっては、乗り換えのない選択肢が最初から用意されているわけです。2019年度の関西空港アクセスの分担率は、JRが約40.3%、南海が約38.7%、リムジンバスが約19.8%、船が約1.2%でした。南海はミナミ発着という制約を抱えながらこの水準を維持してきたことになります。

なにわ筋線が開業すれば、この構造的な差は解消されます。南海の列車が大阪駅、さらに新大阪駅まで直通できるようになれば、これまで取りこぼしていたキタ・新大阪方面の需要を正面から取りに行けるようになります。次期空港特急は、その解禁のタイミングに合わせて投入される商品だと考えられます。

車両の更新期限とも重なっている

ラピートに使われている50000系は1994年のデビューで、2031年には37年目に入ります。地下新線であるなにわ筋線に乗り入れるには、保安装置やホーム設備への対応も必要になります。車両の更新は遅かれ早かれ避けられず、その時期がなにわ筋線の開業と重なったという事情もあるはずです。

同じ更新するのであれば、単なる置き換えではなく話題性のある車両にしたほうが投資効率がよくなります。開業の5年近く前にデザイナーだけを先出しする今回の発表の仕方は、そう考えると理解しやすくなります。

デザインそのものを広告として使う成功体験がある

50000系のデザインは建築家の若林広幸氏が担当し、「レトロフューチャー」をコンセプトにした前面は「鉄人28号」に例えられてきました。この見た目は30年以上にわたって話題を提供し続け、雑誌やテレビ、近年はSNSで繰り返し取り上げられてきました。広告費をかけずに露出を生み続けた車両だといえます。

南海はこの成功を再現しようとしているのではないでしょうか。ピニンファリーナという名前と「日本の鉄道車両を手がけるのは初めて」という文脈は、実車が影も形もない段階でもニュースになります。今回の発表がまさにその証明で、開業までの5年間にデザイン公開、実車お披露目、試運転と、段階的に話題を作れる仕込みができたことになります。

事業費が倍増したからこそ、単価の取れる列車が要る

なにわ筋線の総事業費が約6,500億円へ膨らんだことで、新たな税金投入の議論も出ています。これだけの投資を回収するには、既存の需要を新線に付け替えるだけでは足りません。追加料金を払ってでも乗りたいと思わせる列車を用意し、単価と乗車率の両方を引き上げる必要があります。空港特急に特別なデザインを与えるという判断は、この収支面の要請とも整合しています。

旅行者への影響と、いま関西空港へ向かうときの選び方

次期空港特急が走り出すのは早くても2031年春以降で、それまではラピートが引き続き空港特急を担います。現行の50000系をいつ置き換えるのかは発表されていないため、「もうすぐ乗れなくなる」と決めつける必要はありません。ただ、後継車両の存在が公式に示された以上、現在の車両に乗る機会は無限にあるわけではないという見方はできます。

いま関西空港と大阪市内を行き来する場合、選択肢は次のようになります。

手段 区間 所要時間 料金
南海 ラピート(レギュラーシート) なんば〜関西空港 約37分 1,670円(関空トク割1,560円)
南海 ラピート(スーパーシート) なんば〜関西空港 約37分 1,880円(関空トク割1,740円)
南海 空港急行 なんば〜関西空港 約44分 970円

なんば・心斎橋エリアに宿を取るなら南海が有利で、荷物が多い日や到着が深夜に近い日は指定席のラピートを選ぶ価値があります。逆に梅田や京都に向かうのであれば、乗り換えが発生しないJRの「はるか」のほうが現状は楽です。この使い分けは2031年春まで基本的に変わりません。

「関空トク割ラピートきっぷ」は、なんば・新今宮・天下茶屋・堺の各駅と関西空港駅の間で発売されており、利用開始日から連続2日間有効です。駅窓口のほか、ピンク色とグレー色の券売機(営業時間は平日・休日とも午前5時から午後11時)でも購入できます。スマートフォンで事前に買えるデジタルきっぷも用意されているため、到着後に窓口へ並びたくない場合は出発前に手配しておくと動きがスムーズになります。

2031年春以降を見据えるなら、大阪駅や新大阪駅の周辺に泊まる旅程でも南海が現実的な選択肢に入ってくることを覚えておくとよいでしょう。関西空港の発着枠は増え続けており、鉄道側の選択肢が増えることは、繁忙期に片方が混雑しても別のルートに逃げられるという意味でも旅行者にとってプラスに働きます。

まとめ

今回の発表は、車両の中身がまだ何も出ていない段階の「予告」です。それでも、関西空港のアクセスが2031年に大きく変わることと、南海がその変化に合わせて看板列車を作り直すことがはっきりしました。関西空港をよく使う人、ラピートの独特なデザインが好きな人は、今後発表されるデザインとコンセプトを追いかけておくと、2031年の開業をより楽しめるはずです。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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