ことでんが9月1日に駅の券売機を廃止|QRコードで買うデジタル方式は地方鉄道で全国初

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高松琴平電気鉄道(ことでん)は2026年8月19日、駅の自動券売機を一部の主要駅を除いて廃止し、スマートフォンできっぷを買う「ことでんデジタル券売機」に切り替えると発表しました。運用開始は2026年9月1日です。無人駅の券売機をなくして専用アプリの不要なウェブきっぷへ移行する取り組みは、地方鉄道では全国で初めてになります。さらに10月1日には運賃改定も控えており、この秋のことでんは、きっぷの買い方と運賃の両方が変わります。

駅に貼られたQRコードをスマホで読んで買います

新しい方式の手順は単純です。駅に設置されたQRコードをスマートフォンのカメラで読み取ると、ブラウザ上に購入画面が開きます。行き先を選んで決済すると、その場で画面にきっぷが表示されます。乗務員や駅係員に画面を見せて乗り降りする、いわゆる見せ券方式です。

仕組みとして使われているのは、レシップが提供するウェブアプリ型のモバイルチケットシステム「QUICK TRIP Ticket」です。専用アプリのダウンロードは必要ありません。ログイン状態を保っておけば、2回目以降は再ログインなしで買えます。初めてことでんに乗る観光客が、その場でQRコードを読むだけで買えるという設計です。

券売機がすべてなくなるわけではありません。一部の主要駅には残ります。廃止の対象は、主に無人駅を含む中小の駅です。

スマートフォンを持っていない場合はどうなるのでしょうか

スマートフォンを持たない利用者への対応も用意されています。運賃を乗務員か駅係員に直接手渡すか、駅に置かれた集札箱に入れることで乗車できます。きっぷを買わずに乗り、降りるときに運賃を払う形です。ワンマン運転のバスに近い流れと考えるとわかりやすいでしょう。

もうひとつ、既存の交通系ICカードという選択肢があります。ことでんは2005年から独自のICカード「IruCa」を導入していますが、それに加えて2018年3月3日から全国相互利用カードの片利用に対応しています。SuicaやICOCA、PASMOなど手持ちのカードをそのまま改札にかざして乗ることができます。旅行で訪れる方にとっては、これがいちばん手間の少ない方法です。逆にIruCa自体は、ことでんのエリア外では使えません。

10月1日には運賃改定も控えています

券売機の話とあわせて押さえておきたいのが、翌月に迫った運賃改定です。四国運輸局が2026年7月31日に認可し、10月1日から実施されます。

項目 内容
初乗り運賃(2キロまで) 200円から230円へ
初乗り以外の運賃 一律50円の値上げ
改定率 定期外15.4%、通勤定期15.6%、通学定期6.5%
定期券(1か月) 通勤で最大25%、通学で最大11.3%の値上げ
途中下車制度 廃止
志度線の特定運賃 廃止し通常運賃へ移行(一部区間は60円の値上げ)

ことでんは値上げの理由として、物価高、労務単価の上昇、設備投資や修繕工事のコストが約3年前の運賃改定時の想定を大幅に上回っていることを挙げています。あわせて、ことでんバスも10月1日から平均8.1%の値上げを行い、初乗り運賃が200円から210円になります。

見落とされがちですが、影響が大きいのは途中下車制度の廃止のほうかもしれません。これまでは一定の条件のもとで、途中の駅で改札を出てから同じきっぷで再び乗ることができました。10月1日からはできなくなります。琴平線で高松から琴電琴平へ向かう途中に栗林公園や仏生山へ寄る、といった使い方をしていた方は、区間を分けて買う必要が出てきます。

なぜ券売機をやめるのでしょうか

「値上げをするのに設備は減らすのか」と受け取られかねない話ですが、ことでんの数字を見ると、この2つは同じ問題の裏表だとわかります。

営業利益が1億円台の会社にとって、券売機の更新は重い

国土交通省が2024年6月27日に認定した「高松琴平電気鉄道琴平線の鉄道事業再構築実施計画」には、ことでんの経営数値が載っています。それによると琴平線の伏石〜琴電琴平間の営業損益は、2023年度が1億1800万円の黒字でした。計画が完了する2028年度の見込みでも1億3900万円です。会社全体でも、2024年度の営業収益は37億3000万円、純利益は3億3100万円という規模です。

一方、券売機は1台あたり数十万円から数百万円かかる設備です。しかも紙幣や硬貨のデザインが変われば読み取り部分の改修が必要になり、そのたびに費用が発生します。ことでんが持つ駅は琴平線が23駅、志度線が16駅、長尾線が16駅で、営業キロは3路線あわせて60.0キロです。この規模の駅に設置された券売機を一斉に更新する時期が来たとき、営業利益が1億円台の会社にとっては数年分の利益が飛ぶ計算になります。

削れる設備を削って、削れない設備に回す配分です

同じ再構築実施計画には、これから5年間で何にお金を使うかも書かれています。総額は96億8000万円です。

項目 事業費
省エネ性能の高い新造車両の導入と安全輸送設備の更新 72億円
太田〜仏生山間の複線化 9億8000万円
太田〜仏生山間の新駅整備 7億9000万円
高齢者割引および乗継割引等の実施 7億円

計画期間は2024年7月5日から2029年3月31日までの5年間で、香川県と高松市・丸亀市・さぬき市・三木町・綾川町・琴平町・まんのう町が財政的に支援します。

金額の内訳を見ると、7割以上が車両と安全輸送設備です。これは削れません。走行に関わる設備を後回しにする鉄道会社は存続できないからです。一方で券売機は、きっぷを売る手段のひとつにすぎず、代わりがある設備です。ICカードとスマートフォンがこれだけ普及した2026年に、現金を数えて紙のきっぷを出す機械を各駅に置き続ける必然性は薄くなっています。

つまり今回の判断は「サービスを削る」というより、限られた投資枠のなかで、代替のきく設備から代替のきかない設備へ資金を移す配分の話だと見るべきでしょう。ことでんは2001年に民事再生法の適用を申請し、2006年に再生計画を終えた経緯を持つ会社です。設備の優先順位に敏感なのは、その経験と無縁ではないはずです。

観光客にとってはむしろ買いやすくなる面があります

見落とされがちなのは、この方式が観光客に向いているという点です。ことでんの琴平線は、金刀比羅宮への参拝ルートのひとつです。琴電琴平駅は初めて香川を訪れる人がよく使う駅で、券売機の前で運賃表を見上げて戸惑う場面が生まれやすい場所でもあります。

QRコードを読んで行き先を選ぶ画面は、運賃表から金額を探して同額のボタンを押す作業より直感的です。専用アプリのダウンロードが不要という設計も、数日しか滞在しない旅行者には効いてきます。券売機に列ができる時間帯に、その列に並ばずに済むという利点もあります。

再構築実施計画では、2028年度の年間利用者数を830万2000人と見込んでいます。2023年度の747万3000人から11%増やす計画です。沿線人口が減るなかでこの数字を達成しようとすれば、通勤通学以外の利用、つまり観光客を取り込むしかありません。買い方を旅行者向けに作り替えることは、その目標と方向が一致しています。

旅行者への影響と、いま押さえておきたいこと

香川へ旅行する予定がある方が具体的に気をつける点を整理します。

9月1日以降、主要駅以外ではきっぷの券売機がなくなります。乗る駅で紙のきっぷを買うつもりでいると、当てが外れる可能性があります。スマートフォンを使う方は、駅に着いたらまずQRコードを探してください。ホームや改札付近に掲示されているはずです。

いちばん確実なのは、SuicaやICOCAなど手持ちの交通系ICカードを使う方法です。ことでんは2018年から片利用に対応しており、改札にかざすだけで乗れます。残高だけ確認しておけば、券売機があるかどうかを気にする必要はありません。

10月1日以降に香川を旅行する方は、運賃が上がる点と、途中下車ができなくなる点の2つを見ておいてください。初乗りが230円になり、それ以外の区間は一律50円上がります。琴平線で高松築港から琴電琴平まで乗る場合も値上げの対象です。途中の駅で降りて観光してから先へ進む行程を組んでいる方は、区間ごとに運賃がかかる前提で予算を立ててください。

スマートフォンを持たずに旅行される方も、乗れなくなるわけではありません。乗務員や駅係員に運賃を手渡すか、集札箱に入れる方法が案内されています。ただし小銭を用意しておいたほうがやりとりは早く済みます。

まとめ

ことでんは2026年9月1日から、一部の主要駅を除いて駅の自動券売機を廃止し、駅のQRコードをスマートフォンで読み取って買う「ことでんデジタル券売機」に移行します。専用アプリは不要で、無人駅の券売機を廃してウェブきっぷへ切り替える取り組みは地方鉄道で全国初です。スマートフォンを持たない方は、乗務員や駅係員への手渡し、または集札箱への投入で乗車できます。

10月1日には運賃改定も実施され、初乗りが200円から230円に、それ以外は一律50円上がります。途中下車制度は廃止され、志度線の特定運賃も通常運賃に移行します。

背景には、営業利益が1億円台という規模の会社が、5年で96億8000万円の設備投資を進めなければならない事情があります。うち72億円は車両と安全輸送設備で、これは削れません。代わりのきく券売機から、代わりのきかない設備へ資金を移す配分だと考えると筋が通ります。

香川を旅行する方は、SuicaやICOCAなど手持ちの交通系ICカードを持っていけば、この変更をほとんど意識せずに乗れます。10月以降に金刀比羅宮などを回る予定の方は、運賃の値上げと途中下車の廃止を前提に行程と予算を組んでください。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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