タイのLCC、タイ・エアアジアXが、長らく運休と短期運航を繰り返してきた日本路線を10月に立て直します。札幌/新千歳〜バンコク/ドンムアン線を2026年10月1日に、名古屋/中部〜バンコク/ドンムアン線を10月2日に、それぞれ定期便として再開します。新千歳線については12月から毎日運航に増やす計画も示されました。
北海道と中部という、タイからの旅行者に人気の高い2つのエリアに同時に戻ってくる形です。しかもどちらも週4往復から始まり、新千歳は冬に向けて増便します。ここ数年、この路線がどう扱われてきたかを踏まえると、この再開はかなり性格の違う動きに見えます。
新千歳線は10月1日に再開し、12月から毎日運航へ
札幌/新千歳〜バンコク/ドンムアン線は、2026年10月1日(木)から運航を再開します。当初は火曜日・木曜日・土曜日・日曜日の週4往復で、機材はエアバスA330-300型機です。
スケジュールは次のようになっています。
- XJ621便 新千歳12:20発 → バンコク/ドンムアン17:45着
- XJ620便 バンコク/ドンムアン01:55発 → 新千歳11:05着
そして12月からは、残る月曜日・水曜日・金曜日の運航を加えて毎日運航に切り替える計画です。10月から11月にかけては週4往復、12月以降は週7往復という二段構えになります。
この路線は2026年に入ってからほとんど動いていませんでした。定期便としては運休が続き、2026年7月2日(木)から7月26日(日)までの間だけ、週2往復(木曜日・日曜日)の期間運航が設定されただけです。3週間強の夏休み限定運航から、いきなり通年に近い運航体制へ戻すことになります。
中部線は10月2日に再開して週4往復
名古屋/中部〜バンコク/ドンムアン線は、2026年10月2日(金)から再開します。こちらは月曜日・水曜日・金曜日・日曜日の週4往復で、機材は新千歳線と同じA330-300型機です。
- XJ639便 中部10:30発 → バンコク/ドンムアン14:40着
- XJ638便 バンコク/ドンムアン00:45発 → 中部08:50着
中部線は2026年3月29日(日)から期間運休に入っていました。当初から10月に戻す前提の運休で、その予定どおりの再開ということになります。
中部空港とバンコクの間は、タイ国際航空がスワンナプーム空港発着で毎日運航しています。タイ・エアアジアXが週4往復で加わることで、10月以降は1日最大2往復の体制になります。空港が違うため単純な奪い合いにはなりませんが、選択肢が増えるのは確かです。
タイ・エアアジアXが運休と再開を繰り返してきた理由
この航空会社の日本路線は、他社と比べても運休・期間運航・再開の入れ替わりが激しく続いてきました。仙台線の運航期間延長、新千歳線の7月限定運航、中部線の半年運休と、路線ごとにばらばらのカレンダーで動いています。
その背景には、A330-300型機という機材の使い方があります。タイ・エアアジアXは中長距離用のワイドボディ機を限られた機数しか持っていません。座席数が多い機材は、埋まれば効率がよい一方、埋まらないと損失も大きくなります。だからこそ、需要が確実に見込める時期に機材を集中させ、そうでない時期は路線ごと畳んで別の路線に回す、という運用を選んでいると考えられます。日本路線を「通年で維持する資産」ではなく「季節ごとに配置し直す資源」として扱っているわけです。
7月限定の新千歳線がその典型でした。タイの学校が長期休暇に入る時期に合わせて3週間強だけ飛ばし、終われば引き上げる。路線を維持するコストを払わずに、需要のピークだけを取りにいく形です。
今回の再開が過去と違うのは、その「ピークだけ取る」やり方から一歩踏み出している点です。新千歳線を12月に毎日運航へ引き上げるということは、少なくとも冬の間はこの路線に機材を固定するという判断になります。短期運航の繰り返しでは取り込めなかった、乗り継ぎ需要や旅行会社経由の団体需要まで含めて狙いにいく体制です。
北海道のタイ需要が路線を後押ししている
数字を見ると、この判断には根拠があります。新千歳空港の2025年(暦年)の旅客数は2583万6515人で、前年比7.8%増と過去最高を更新しました。このうち国際線は23%増の434万人です。国別では韓国が184万人(14%増)、台湾が88万人(13%増)、中国が55万人(54%増)と続き、タイは34万人で4割増という高い伸びを示しました。
タイ市場全体でも勢いは続いています。2026年上半期(1〜6月)の訪日タイ人数は70万4600人で、前年同期の68万469人から3.5%増えました。コロナ前のピークだった2019年同期(68万3595人)と比べても3.1%多く、過去最高水準に戻っています。しかもタイからの旅行者はリピーター率が71.2%と高く、観光・レジャー目的が84.6%を占めます。一度日本に来た人が繰り返し訪れる市場です。
リピーターが多い市場では、東京・大阪といった定番からの移動が起こります。何度も日本に来ている人ほど、次は北海道、次は中部の山岳エリア、という選び方をします。新千歳と中部という組み合わせは、この動きにきれいに重なっています。
毎日運航の開始日が示すもの
新千歳線の毎日運航が12月1日(火)からという点も、狙いがはっきりしています。北海道の雪のシーズンの入り口です。
タイをはじめとする東南アジアからの旅行者にとって、雪は日本旅行の最大の目的の1つです。気温が氷点下まで下がり、まとまった雪が積もる時期に合わせて座席を最大化する。11月までは週4往復に抑え、雪が確実になる12月に一気に増やすという配分は、この市場を正面から取りにいく設計と言えます。
一方で、この設計は裏返せば依存の集中でもあります。特定の季節と特定の市場に大きく賭ける以上、雪不足の年やタイ側の景気・為替の変化が、そのまま路線の採算に響きます。この路線がこれまで通年運航に定着してこなかったこと自体が、その難しさを示しているとも言えるのではないでしょうか。
旅行者にとって何が変わるのか
日本発の旅行者にとって、この再開は選択肢が増える話です。ただし、時刻の性格をよく理解してから予約したほうがよい路線でもあります。
深夜発の復路をどう扱うか
注意したいのは復路です。バンコクを01:55(新千歳行き)、00:45(中部行き)に出る深夜便で、到着はどちらも午前中です。
つまり、バンコク最終日は空港へ夜遅くに向かうことになります。ホテルのチェックアウトが昼過ぎだとすると、その後の半日をどう過ごすかを計画に入れておく必要があります。バンコクの主要ホテルには時間貸しのレイトチェックアウトやシャワー付きラウンジの利用手段があり、ドンムアン空港にも仮眠できる施設があります。逆に言えば、この時間帯を活用できる人にとっては、現地の滞在時間を丸1日近く延ばせる便でもあります。
到着が新千歳11:05、中部08:50なので、その日のうちに国内線や新幹線で先へ移動することも十分可能です。復路で1日を無駄にしない組み方ができます。
往路は当日中に動ける時間帯
往路は新千歳12:20発でバンコク17:45着、中部10:30発で14:40着です。どちらも現地に明るいうちに着くため、到着日から動けます。空港からの移動手段を探すのに苦労しない時間帯という意味でも扱いやすい設定です。
予約前に確認しておきたいこと
まず、10月から11月にかけては週4往復である点です。新千歳線は火・木・土・日、中部線は月・水・金・日で、いずれも隔日に近い運航になります。旅行日程が2泊3日や4泊5日といった短めの場合、往復の曜日の組み合わせが限られます。12月以降に新千歳線が毎日運航になれば自由度は上がりますが、それまでは曜日から日程を逆算したほうが確実です。
次に、LCCであるという前提です。運賃には受託手荷物や機内食が含まれていない設定が基本で、必要なものを追加していくと総額が変わります。A330-300型機にはフルフラットになる上位クラスの設定もあるため、7時間前後のフライトを快適に過ごしたい場合は、そちらとフルサービスキャリアの運賃を比べてから決めるのが現実的です。
そして、この路線の運航実績です。過去数年、期間運休と短期運航を繰り返してきた路線であることは頭に入れておいたほうがよいでしょう。先の日程を押さえる場合は、旅程の変更・払い戻し条件を確認したうえで予約することをおすすめします。
まとめ
タイ・エアアジアXが札幌/新千歳〜バンコク/ドンムアン線を2026年10月1日に、名古屋/中部〜バンコク/ドンムアン線を10月2日に再開します。どちらも週4往復・A330-300型機での運航で、新千歳線は12月から毎日運航へ増やす計画です。
新千歳空港のタイ路線旅客が2025年に4割増の34万人まで伸び、訪日タイ人数もコロナ前のピークを超える水準に戻っていることが、この判断を支えています。12月の毎日運航化は、北海道の雪のシーズンを正面から取りにいく配分です。
北海道や中部からタイへ向かう人、あるいはバンコクを経由して東南アジア各地へ抜けたい人にとっては、地元の空港から直接乗れる選択肢が戻ってきます。深夜発の復路をうまく使えば、現地の滞在時間を大きく延ばすこともできます。10月から11月は週4往復のため、日程を決める前に運航曜日を確認しておくことをおすすめします。


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