トキエアが9月1日から「システム利用料」1区間100円を導入 名古屋〜札幌線の運休と同じ日に始まる理由

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新潟を拠点とする地域航空会社のトキエアは2026年7月31日、「システム利用料」を新たに導入すると発表しました。金額は1名1区間あたり100円(税込)で、2026年9月1日以降に取得した新規予約から適用されます。

100円という金額だけを見れば、旅行の費用にほとんど影響しない水準です。ただ、この100円が始まる9月1日は、トキエアが名古屋/中部〜札幌/丘珠線を運休する日でもあります。同じ日に路線の整理と新しい料金の導入を並べてきたところに、この会社が置かれている状況が表れています。

導入される料金の中身

システム利用料は、1名につき1区間あたり100円(税込)です。往復すれば200円、家族4人で往復すれば800円という計算になります。予約時の決済で支払う形です。

対象は2026年9月1日以降に取得した新規予約で、それより前に取っている予約には適用されません。9月1日より前に予約を済ませておけば、9月以降の搭乗であっても追加の負担は生じないことになります。

トキエアはこの料金を導入する理由として、予約・発券システムの安定運用、情報セキュリティ対策の強化、予約サイトの利便性向上を挙げています。オンラインでの予約・購入環境への期待が高まるなかでシステムへの継続的な投資が欠かせなくなっており、今後のデジタルサービスの拡充に向けた基盤づくりとして決めたと説明しています。

100円で埋まる穴ではない、それでも導入する意味

この料金がトキエアの収支をどれだけ変えるのかを、実際の数字で見てみます。

トキエアの2026年3月期の決算は、売上高が11億7990万円で前期比32.3%の増収でした。旅客数は9万9628人、2025年4月から2026年3月までの平均搭乗率は59.7%で、どちらも前年を3割以上上回っています。伸びてはいるのです。ところが航行費や航空機材費といった費用がそれ以上に膨らみ、経常損益は25億6475万円の赤字、最終赤字は約24億円となりました。2026年3月末時点で約29億円の債務超過となり、2期連続で債務超過の状態が続いています。

ここに100円を掛け合わせてみます。年間の旅客が約10万人ですから、全員から1区間100円を取ったとして年間約1000万円です。24億円の赤字に対して、0.5%にも届きません。収支を立て直す手段としては、桁が違います。

つまりこの100円は、赤字を埋めるための施策ではないと考えられます。ではなぜ導入するのでしょうか。

費用の性格を分けにいったのではないか

ひとつ考えられるのは、システムに関わる費用を運賃と切り離し、利用者負担であることをはっきりさせる狙いです。

航空券の予約システムは、機材や燃料と違って便を飛ばさなくても維持費がかかり続けます。しかも決済、セキュリティ、不正利用対策、多言語対応と、要求される水準は年々上がります。この費用を運賃に溶かし込んでしまうと、運賃を下げにくくなり、セールを打つときの足かせになります。逆に手数料として切り出しておけば、運賃そのものは市場に合わせて動かしながら、システム費用は別建てで確保できます。

この手法自体は珍しいものではありません。国内のLCCでは、ピーチがクレジットカード決済で1人片道640円から、ジェットスターが同じく660円からの支払手数料を設定しています。これらと比べれば、トキエアの100円はかなり低い水準です。トキエアはLCCを名乗っているわけではありませんが、料金の組み立て方としてはLCCに近い方向に一歩踏み出したことになります。

将来の値上げ余地を作っておく意味

もうひとつ考えられるのが、料金の項目を作っておくこと自体に価値があるという見方です。

いま存在しない料金項目を新設するときには、必ず利用者の反発が伴います。しかし一度100円で定着させてしまえば、後から金額を見直すときのハードルは大きく下がります。実際、LCCの支払手数料も導入当初はもっと低い水準からじわじわと上がってきました。100円という金額は、反発を招かずに項目を通すための入口として、絶妙な設定と読むこともできます。

もちろんこれはトキエアが公式に述べていることではありません。ただ、収支への寄与がほぼゼロに近い料金をわざわざこのタイミングで導入する合理性を考えると、いま100円を集めることより、仕組みを作っておくことに意味があると見るのが自然ではないでしょうか。

9月1日という日付が重なっている

そしてもうひとつ見逃せないのが、導入日です。

トキエアは2026年9月1日から、名古屋/中部〜札幌/丘珠線を運休します。同じ9月1日に、新潟〜札幌/丘珠線を1日1往復から2往復へ増便します(10月24日まで)。より需要と利益が見込める新潟発着の路線に機材を振り向けるためと説明されています。

トキエアが現在運航しているのは、新潟〜札幌/丘珠、新潟〜名古屋/中部、新潟〜神戸、名古屋/中部〜札幌/丘珠の4路線です。このうち唯一、新潟を通らない路線が名古屋〜札幌線でした。新潟を拠点とする会社にとって、拠点を経由しない路線は機材の回し方が難しく、トラブル時の代替も効きにくくなります。それを整理して新潟発着に集約するのは、限られた機材で稼働率を上げるうえで理にかなった判断です。

この会社の課題ははっきりしています。2026年3月期の機長は7人で、機材の稼働率はおよそ50%にとどまっていました。飛行機は飛ばなければ収益を生まないのに、費用は発生し続けます。トキエアは機長を11〜12人まで増やして機材をフルに近い状態で動かす方針で、2028年3月期の黒字化を目指しています。

こうして見ると、9月1日はトキエアにとって収支構造を組み替える節目の日だと分かります。飛ばない路線を止め、飛ぶ路線に機材を集め、あわせて費用の性格を整理する。システム利用料の導入は、その一連の動きの一部として位置づけられていると考えられます。

旅行者への影響と、いまできること

負担額そのものは小さいものです。片道100円、往復200円ですから、旅の計画を変えるほどの金額ではありません。

そのうえで、実務的に効くポイントが1つあります。この料金が適用されるのは9月1日以降に取得した新規予約です。すでに秋以降の旅程が決まっている人は、8月31日までに予約を済ませてしまえば、搭乗が9月以降であっても100円はかかりません。家族やグループで複数区間を予約する場合、人数と区間数の掛け算で金額が増えていくため、早めに押さえておく価値は少しだけあります。

もう1点、路線の変更のほうが旅行者への影響は大きいと考えられます。名古屋/中部〜札幌/丘珠線は9月1日から運休します。この路線で北海道へ行く予定を組んでいた人は、代替の手段を考える必要があります。中部国際空港からは他社の新千歳線がありますが、丘珠空港は札幌市内に近く、新千歳空港とは市街地までの所要時間が異なります。丘珠着の利便性を目的に選んでいた場合は、新千歳からのアクセス時間を旅程に足しておかなければなりません。

逆に、新潟〜札幌/丘珠線は9月1日から10月24日まで1日2往復に増えます。新潟と札幌を往復する人にとっては、日帰りに近い使い方や、滞在時間を長く取る組み方が選びやすくなります。紅葉の時期の北海道を新潟から訪れるなら、選択肢が広がるタイミングです。

まとめ

トキエアのシステム利用料は、金額としては旅行の判断を左右するものではありません。ただ、赤字24億円・債務超過29億円という状況の会社が、収支への寄与がほぼない100円をあえて導入した点には、料金体系を作り替えていく意思が見て取れます。

このニュースで実際に動くべきなのは、秋以降にトキエアを使う予定が決まっている人と、名古屋から丘珠空港を利用する予定だった人です。前者は8月31日までの予約で100円を回避できます。後者は9月1日からの運休を前提に、新千歳空港経由への切り替えを含めて旅程を組み直しておく必要があります。新潟と札幌を行き来する人にとっては、増便によって使いやすくなる期間が訪れます。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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