ANAがビジネスクラスの入札アップグレードを開始 香港・韓国線でBid My Price拡大

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ANAが、エコノミークラスの航空券を持つ人が追加料金を入札してアップグレードできるサービス「Bid My Price」の対象を広げます。2026年8月下旬から、日本〜香港線と日本〜韓国線でビジネスクラスへのアップグレードが可能になります。

このサービスは2018年4月に始まって以来、アップグレード先がプレミアムエコノミーに限られていました。ビジネスクラスが対象に加わるのは今回が初めてです。しかも最初の対象が長距離の欧米路線ではなく、飛行時間の短い香港線と韓国線という点に、この施策の狙いが表れています。

ビジネスクラスへの入札対象は香港線と韓国線

ANAの公式サイトによると、ビジネスクラスへのアップグレードが可能になるのは、ANA運航の日本〜香港路線と日本〜韓国路線です。日本国内線は対象外です。

これまでのBid My Priceは、プレミアムエコノミーへのアップグレードのみを扱ってきました。その対象路線は、ANA運航の日本〜アメリカ・カナダ・ヨーロッパ・オーストラリア・シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・ベトナム・フィリピン・トルコ路線です。この一覧に香港と韓国は入っていません。

つまり、香港線と韓国線はこれまでBid My Priceの枠外にありました。今回のビジネスクラス追加によって、これらの路線でも初めて入札によるアップグレードができるようになります。

なお、旅程の開始国がインドまたはメキシコの場合は、サービス全体の対象外です。

対象になる航空券と入札の流れ

利用できるのは、ANAのウェブサイトで条件を満たす航空券を購入し、かつ案内メールを受け取った人に限られます。旅行会社経由で購入した航空券や、他社サイトで手配した航空券は対象になりません。

対象となる予約クラス

ビジネスクラスへのアップグレードでは、エコノミークラスの有償航空券のうち、予約クラスがY・B・M・U・H・Q・V・W・Sのものが対象です。

ここで注意したいのが、プレミアムエコノミーへのアップグレードとの違いです。プレミアムエコノミー向けはY・B・M・U・H・Q・V・W・S・L・Kが対象で、LとKが含まれています。ビジネスクラス向けではこの2つが外れており、対象がやや狭く設定されています。LとKは比較的安価な運賃に割り当てられることが多い予約クラスです。最も安い層の運賃からビジネスクラスへ跳ぶことはできない設計になっている、と読めます。

自分の航空券の予約クラスは、購入時の確認メールや予約詳細画面で確認できます。

入札から結果通知までの流れ

流れは4段階です。

まず、対象となる便の出発数日前に、ANAから入札の案内メールが届きます。送信元は「BidMyPrice@bid.ana.co.jp」なので、ドメイン指定受信を設定している場合は事前に受信できるようにしておく必要があります。

次に、メールの案内に従って入札します。入札画面には対象フライトが表示され、あらかじめ定められた金額の範囲内で自分の入札額を指定します。入札に使える通貨には日本円のほか、香港ドルや韓国ウォンも含まれています。入札の締め切りは各便の出発2日前、つまり48時間前です。

続いて、支払い情報を登録します。支払いはクレジットカードのみで、アップグレードが確定するまで請求は行われません。

最後に結果が通知されます。アップグレードは入札額の高い順に確定します。同額の入札が複数あった場合は、購入した航空券の予約クラス、ANAマイレージクラブの会員ステイタス、入札した日時の順で優先度が決まります。成功した場合は出発時刻の24時間前までにEMDの控えが届き、成功しなかった場合も24時間前までにメールで通知されます。入札が通らなければ請求は発生しません。

なお、このサービスはカナダのPlusgrade社との提携で提供されており、入札額と追加の税金・手数料は同社から請求されます。

なぜ最初の対象が香港線と韓国線なのか

ビジネスクラスへの入札を導入するなら、座席単価の高い欧米長距離線のほうが収益は大きくなりそうに思えます。それでも香港線と韓国線が選ばれたことには、いくつかの理由が考えられます。

プレミアムエコノミーがない路線だから

最も大きいのは、これらの路線にプレミアムエコノミーの設定がないという事情です。

Bid My Priceのプレミアムエコノミー対象路線の一覧に香港と韓国が入っていないことが、そのまま裏付けになっています。飛行時間が2時間半から5時間程度の路線では、機材の座席配置にプレミアムエコノミーを設けないのが一般的です。ANAの場合、これらの短距離国際線ではビジネスクラスとエコノミークラスの2クラス構成が基本になります。

そうなると、この路線帯ではプレミアムエコノミーへの入札という仕組み自体が成立しません。入札アップグレードを展開するには、アップグレード先をビジネスクラスにするしかないわけです。長距離線ではプレミアムエコノミーへの入札が既に機能しているため、あえてビジネスクラスまで開放して単価の高い座席を安く売るリスクを取る必要がない。この対比で見ると、香港線と韓国線から始めたのは自然な順序に見えます。

エコノミーが埋まる一方でビジネスは空きやすい

もう1つは、需要の構造です。

日本政府観光局が2026年8月19日に発表した7月の訪日外客数では、韓国が89万4700人で前年同月比31.9%増、香港が27万2500人で54.8%増でした。全体が344万2100人・0.1%増と横ばいだった中で、この2市場は突出して伸びています。一方、中国は42万8200人で56.1%減と半分以下になりました。

つまり、日本〜韓国線と日本〜香港線は、いま最も座席が埋まりやすい国際線です。ただし埋まるのはエコノミークラスです。短距離路線のビジネスクラスは、主に出張需要と上級会員のアップグレードで成り立っており、観光目的の旅行者が正規のビジネスクラス運賃を払って乗る例は多くありません。エコノミーが満席に近づく一方で、前方のビジネスクラスには空席が残る。この状態が常態化している路線ほど、入札アップグレードの効果は大きくなります。

空席のまま飛ばせば収入はゼロです。入札で数万円でも取れれば、追加の座席を用意することなく収益が増えます。エコノミークラスの座席も1つ空くため、直前の需要にも対応しやすくなります。伸びている市場でありながら上位クラスが売り切れていない、という条件がそろっているのが、この2路線だと考えられます。

入札通貨に香港ドルと韓国ウォンが用意されている点も、日本発の旅行者だけでなく、香港・韓国側から日本へ来る旅行者を明確に見込んでいることを示しています。訪日需要の伸びをそのまま単価に変える仕組み、という位置づけではないでしょうか。

使う前に知っておきたい注意点

便利な仕組みですが、通常のアップグレードとは扱いが違う部分がいくつかあります。予約前に把握しておいたほうがよい点をまとめます。

マイルとプレミアムポイントは元の運賃のまま

最も重要なのがここです。マイルの積算、ANAプレミアムポイントの積算、そして旅程を変更できるかどうかは、いずれも入札前に購入した航空券の運賃規則に基づきます。

つまり、入札でビジネスクラスに乗れたとしても、積算されるマイルとプレミアムポイントはエコノミークラスの航空券のままです。上級会員資格を目指してプレミアムポイントを積み上げている人にとって、このサービスは加算対象を増やす手段にはなりません。ビジネスクラスの座席に座ることと、ビジネスクラスの運賃を購入することは、ANAの制度上まったく別の扱いになります。

手荷物・座席指定・変更払い戻しの扱い

無料の預け手荷物の個数と重量も、アップグレード後のクラス基準ではなく、元のエコノミークラスの運賃に基づきます。荷物が増えることを前提に入札するのは避けたほうがよいでしょう。

座席も自分では選べません。空席状況によっては、出発時刻の24時間前からのオンラインチェックインで変更できる場合がありますが、確約はされていません。同行者と隣同士でエコノミーを予約していた場合も、アップグレード後の隣席は保証されません。

アップグレードが確定すると、その後の変更・払い戻しはできなくなります。マイルやポイントを使ったアップグレードも併用できません。また、確定した時点で元のエコノミークラスの座席は保証されなくなります。入札内容の変更・取り消しは出発2日前まで可能ですが、それより前にアップグレードが確定した場合は、その時点から変更できません。

同一予約に複数人がいる場合

同じ予約に複数名が含まれている場合、案内メールは代表者にだけ届きます。申し込むと同一予約内の全員が対象になり、合計金額には全員分の税金・手数料が含まれます。1人だけアップグレードするという使い方はできません。

同じ旅程に複数の対象便がある場合は、1通のメールですべてに入札できます。希望する便だけを選んで入札することも可能です。ただし、案内メールを受け取った後に予約を変更すると入札は無効になり、新しい便には引き継がれません。

まとめ

ANAが2026年8月下旬から、Bid My Priceのアップグレード先にビジネスクラスを追加します。対象はANA運航の日本〜香港路線と日本〜韓国路線で、日本国内線は含まれません。対象となるのはANAのウェブサイトで購入したエコノミークラスの有償航空券のうち、予約クラスがY・B・M・U・H・Q・V・W・Sのものです。

入札の締め切りは出発48時間前、結果通知は24時間前までで、通らなければ請求は発生しません。飛行時間の短いこれらの路線にはプレミアムエコノミーの設定がないため、入札アップグレードを展開するならビジネスクラスを開放するしかない、という事情が背景にあると考えられます。訪日客が急増してエコノミーが埋まる一方、ビジネスクラスには空席が残りやすいという需要構造も、この2路線が選ばれた理由でしょう。

香港や韓国への旅行で、往路か復路のどちらかだけでも快適に過ごしたい人には試す価値があります。ただし、マイルとプレミアムポイントはエコノミークラスの航空券のまま計算されます。上級会員資格を目指している人が搭乗実績を積む手段にはならない点を、必ず押さえたうえで検討してください。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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