JR西日本は2026年10月26日、能登半島の復興に向けた取り組みを発表し、七尾線に新しい観光特急を導入する計画を明らかにしました。あわせて、現在運行中の観光列車「花嫁のれん」については、車両の経年を理由に2028年夏ごろ運行を終了する方針も示されています。
新しい観光特急は、現行の特急「能登かがり火」に使われている683系の3両編成2本を改造して使用します。3両のうち1両は特別車両として設定される予定です。車両デザインは、七尾市和倉町出身のデザイナー・モリモトシンゴ氏(株式会社ボスコ代表)が監修し、和倉温泉観光協会など地元関係者との共創を進めながら列車の詳細を詰めていくとしています。運行開始は1編成目が2029年前半を目標とし、運転区間は金沢駅~和倉温泉駅間、2編成体制がそろった後は平日を含めて毎日運転する計画です。列車名や運行時刻などの詳細は今後あらためて発表されるとしています。
一方の「花嫁のれん」は2015年10月の運行開始から、輪島塗や加賀友禅、金沢金箔といった北陸の伝統工芸をイメージした内外装で親しまれてきました。震災後は減便が続いていましたが、2026年10月からは1日2往復体制に戻っています。それでも車両の経年を理由に2028年夏ごろでの運行終了が発表されたことで、新観光特急へのバトンタッチを前提とした世代交代であることがうかがえます。
このほか、現在金沢~和倉温泉間で運行している「能登かがり火」型車両を使い、関西方面から直接能登へ向かう団体臨時列車も計画されています。運行区間は大阪駅発~和倉温泉駅着で、新大阪駅・京都駅からも乗車が可能です。運行時期は2027年の春・夏・秋の各シーズンに1本ずつで、所要時間は大阪~和倉温泉間でおよそ5時間半を見込んでいます。具体的な運転日・時刻は決定次第発表され、旅行会社が設定するツアー商品への参加というかたちで乗車する仕組みです。
なぜ今、能登への送客強化を打ち出すのか
今回の発表の土台には、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震と、同年9月21日から23日にかけて発生した令和6年奥能登豪雨という、1年のうちに2度能登を襲った大きな災害があります。JR西日本は発表文の中で「震災の記憶と能登の『今』を伝え」「風化を防ぎ」という表現を用いており、発災から2年以上が経過するなかで、被災地への関心が薄れていくことへの危機感を明確に示しています。
観光列車という手段を選んだ点も、事業者の狙いを考えるうえで重要です。新しい列車そのものをニュースとして発信することで、能登に向けた話題を継続的につくり出し、メディア露出による実質的な広告効果を得られます。車両は新造ではなく、既存の「能登かがり火」型車両を改造して使う計画であり、大規模な新造投資を避けながら話題性を確保する、比較的低リスクな手法だといえます。団体臨時列車についても、関西圏という沿線人口の多いエリアから能登へ直接送客できる商品を用意することで、個人旅行だけでは掘り起こしにくい団体・ツアー需要を取り込む狙いがあると考えられます。
旅行者への影響と対処法
新しい観光特急は2029年前半のデビューを目標としており、すぐに乗車できるわけではありません。一方で「花嫁のれん」は2028年夏ごろまでの運行となるため、現行車両での能登観光を希望する方は、今後1~2年のうちに乗車計画を立てておく必要があります。2026年10月以降は1日2往復に増えているため、以前より予約の選択肢は広がっています。
関西方面から能登へ向かう団体臨時列車は、2027年の各シーズンにそれぞれ1本しか運行されない希少な企画です。運転日・時刻が決まり次第、旅行会社のツアー情報として発売されるとみられるため、能登への直行需要がある方はJR西日本や関連旅行会社の発表を定期的に確認しておくとよいでしょう。大阪~和倉温泉間を鉄道だけで直通できる機会は限られているため、通常のルート(大阪から特急サンダーバードや新幹線・在来線特急を乗り継ぐ方法など)とあわせて、スケジュールの選択肢として押さえておくことをおすすめします。


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