岐阜県と一般社団法人岐阜県観光連盟、JR東海は2026年10月30日、HC85系車両を貸切利用した団体貸切列車「レストランカーぎふ号」を2027年2月17日(水)に運行し、これに合わせた専用旅行商品をJTB旅物語とクラブツーリズムから発売すると発表しました。岐阜の美食と生演奏を車内で愉しみながら高山へ向かう、片道のみの特別な列車旅です。この記事では運行概要から旅行商品の料金・コース比較、JR東海と岐阜県がこの企画に力を入れる背景、申込みの際に注意すべき点までを整理します。
「レストランカーぎふ号」の運行概要
団体貸切列車「レストランカーぎふ号」は、2027年2月17日(水)の1日限りで、名古屋駅から岐阜駅を経由して高山駅まで、下り方面のみ運行されます。使用車両は特急「ひだ」で活躍するHC85系の普通車で、この日は団体専用として貸切利用されます。
運行時刻は名古屋駅を10時20分頃に出発し、岐阜駅を10時55分頃に発車、高山駅には14時00分頃到着という行程です。名古屋から高山までおよそ3時間40分をかけて、車窓の景色とともに車内での特別な時間を愉しむ構成になっています。なお、復路については貸切列車は用意されておらず、各旅行商品とも特急「ひだ」号の普通車指定席を利用して帰る形です。
HC85系は2022年7月にデビューしたJR東海の新型特急車両で、エンジンで発電した電気とブレーキ時にためた電力の両方でモーターを駆動するハイブリッド方式を採用しています。先代のキハ85系と比べて燃費が35%以上向上しているほか、駅停車中のアイドリングストップによる静粛性、全席に設置された肘掛けのコンセントなど、快適性と環境性能を両立した車両です。
車内で愉しめる美食・音楽・濃姫のおもてなし
「レストランカーぎふ号」という愛称の通り、車内では食事の提供が中心的な企画になっています。岐阜グランドホテルの執行役員総料理長で「現代の名工」にも選ばれた森義雄氏が、「美濃・飛騨 味の饗宴」をテーマに監修した一折の弁当を座席で味わえます。提供されるのはウェルカムドリンク(ワイン、ソフトドリンク)、アペタイザー、ランチボックス、デザートの4品です。ワインはカップ一杯での提供、アペタイザーとデザートは個包装での提供となり、座席の背面テーブルをセットして食事をとる仕組みです。
食事と並ぶもう一つの目玉が、JR東海音楽クラブによる車内生演奏です。JR東海音楽クラブは駅員や車掌、運転士、車両・施設のメンテナンス担当など、普段は現場で働く社員によって構成される社内の音楽団体で、当日はクラリネットアンサンブルとサックスアンサンブルの2団体が車両内を巡回し、合わせて30分から40分程度演奏する予定です。
さらに、濃姫まつり実行委員会が選出した「濃姫」役が戦国時代の衣装で乗車し、乗降時のグリーティングや往路車内での沿線観光案内、トークショーを担当します。濃姫は岐阜ゆかりの戦国武将・斎藤道三の娘で、織田信長の正室と伝わる女性です。美食と音楽に加えて岐阜の歴史文化にも触れられる構成になっています。
JTBとクラブツーリズムの旅行商品比較
「レストランカーぎふ号」に乗車できるのは、JTB旅物語とクラブツーリズムが販売する専用旅行商品の参加者のみです。宿泊先や観光地の異なる3つのコースが用意されています。
| 商品名 | 旅行会社 | 宿泊施設 | 主な内容 | 旅行代金(税込) | 最少催行人員 | 発売期間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 団体貸切列車「レストランカーぎふ号」で行く 五感で愉しむ飛騨路 2日間 | JTB旅物語 | ヒルトン高山リゾート | 高山・下呂への立ち寄り、金山宿筋骨巡り | 46,800円(2名1室1人あたり、1名1室は+7,000円) | 20名 | 2026年10月30日~2027年1月31日 |
| 白銀の大瀑布・平湯大滝と新穂高スノーハイキング | クラブツーリズム | 平湯温泉 岡田旅館 | 平湯大滝(氷瀑)、新穂高ロープウェイ、スノーハイキング | 69,900円(3~4名1室1人あたり、2名1室は+5,000円、1名1室は+10,000円) | 25名 | 2026年11月1日~2027年1月31日23:59 |
| 絶景&音楽・グルメも堪能!Deep高山 | クラブツーリズム | メルキュール飛騨高山 | 高山陣屋・古い町並ガイド、舩坂酒造店見学と試飲、自然薯料理の昼食 | 69,900円(2名1室1人あたり、1名1室は+5,000円) | 25名 | 2026年11月1日~2027年1月31日23:59 |
JTBの商品は2026年9月にリブランドオープンした「ヒルトン高山リゾート」に宿泊し、高山と下呂、路地裏散策で知られる金山宿筋骨巡りを組み合わせたプランです。一方のクラブツーリズムは、雪山アクティビティを軸にした「新穂高スノーハイキング」と、酒蔵見学や高山の町歩きを軸にした「Deep高山」の2商品を用意し、客層の異なる需要を取り込む構成になっています。いずれも最少催行人員に達しない場合は催行中止となるほか、旅行代金には集合場所までの交通費は含まれません。
事業者の意図
今回の企画は単独の列車イベントではなく、岐阜県が2026年9月1日から2027年2月28日まで展開している「楽しすぎるぞ岐阜!岐阜県アウトドア観光キャンペーン」の一環として、岐阜県・岐阜県観光連盟・JR東海の3者が共同で打ち出した特別企画です。キャンペーン期間の終盤にあたる2月に目玉企画を配置することで、割引クーポンやスタンプラリーで集めた関心を、最終的に宿泊を伴う高単価な旅行商品の送客につなげる狙いがあると考えられます。
運行時期の2月中旬は、年末年始の帰省需要が一巡し、春の行楽シーズンにはまだ早いオフシーズンにあたります。この時期に「レストランカーぎふ号」という話題性のある企画を投入するのは、閑散期の高山線の利用を底上げするための需要創出策と見てよいでしょう。JR東海は2024年にも高山本線全線開通90周年を記念してHC85系の記念列車「高山本線全線開通90周年記念号」をイベント列車として運行しており、今回はその延長線上で、特定の記念日に限らずオフシーズンの集客施策として団体貸切列車の手法を定着させつつある段階だと考えられます。
運行区間が下り片道のみに絞られている点も特徴です。往復ではなく片道のみの貸切とすることで、車両の運用上の制約を抑えつつ、演出にかかるコストを最小限にした企画だとみられます。食事は岐阜グランドホテルという既存の取引先の総料理長が監修し、音楽は専属のプロ奏者ではなく社内の音楽クラブが担当するなど、外部コストをかけずに「非日常感」を演出している点からも、大規模投資を伴わない低リスクの集客企画として位置づけられていることがうかがえます。
さらに見逃せないのが、JTBの商品が宿泊先に指定した「ヒルトン高山リゾート」が、旧ホテルアソシア高山リゾートをJR東海グループがヒルトンブランドでリブランドした施設である点です。2026年9月に開業したばかりのこのホテルへの送客は、JR東海グループ内のホテル事業の稼働率向上にも直結します。JR東海の2026年3月期決算は売上高2兆62億円(前期比9.5%増)、純利益5,528億円(同20.6%増)と東海道新幹線の好調に支えられた過去最高の実績でしたが、収益の大半を新幹線に依存する構造には変わりありません。在来線の高山線沿線で、列車の話題性とグループホテルの送客を組み合わせた企画を展開することは、新幹線以外の収益源を育てる小さな一手として理解できます。
利用者への影響と対処法
「レストランカーぎふ号」に乗車するには、JR東海の通常の切符ではなく、JTBまたはクラブツーリズムの旅行商品に申し込む必要があります。申込みは両社のサイトまたはパンフレット掲載のQRコードから行い、JTBの商品は2026年10月30日から2027年1月31日まで、クラブツーリズムの2商品は2026年11月1日から2027年1月31日23時59分まで販売されます。いずれも発売期間内でも募集人数に達した時点で受付が終了するため、乗車を希望する場合は早めの申込みをおすすめします。
最少催行人員はJTBが20名、クラブツーリズムが25名で、これに届かない場合は旅行商品ごとに催行中止となる可能性があります。特に平日である水曜日の催行のため、参加できるのは休暇を調整しやすい方が中心になりそうです。キャンセルの可能性を踏まえ、宿泊先の変更が難しい予定(他の宿の予約や現地での用事)は、催行確定の連絡を受けてから組むほうが安心です。
コース選びでは、観光の方向性で選ぶとよいでしょう。町歩きや食事処を中心に巡りたい場合はJTBの「五感で愉しむ飛騨路」、雪山でのアクティビティを楽しみたい場合はクラブツーリズムの「新穂高スノーハイキング」、酒蔵見学や高山の町並みをじっくり歩きたい場合は同じくクラブツーリズムの「Deep高山」が適しています。スノーハイキングのコースに参加する場合は、防寒着や滑りにくい靴、手袋など雪道対策の装備を事前に準備しておく必要があります。酒蔵見学を含むコースは試飲が伴うため、お酒が苦手な方や運転の予定がある方は、無理に試飲せず雰囲気を楽しむ程度にとどめるとよいでしょう。
また、2月の飛騨地域は積雪や路面凍結が発生しやすい時期です。現地での移動や観光の際は、天候や道路状況に応じて時間に余裕を持った行動を心がけることが大切です。復路は貸切列車ではなく通常の特急「ひだ」号指定席となるため、帰りの時刻や乗り換えについても事前に旅行会社の案内を確認しておくと安心です。
まとめ
「レストランカーぎふ号」は、岐阜県のアウトドア観光キャンペーンとJR東海の在来線活性化策が重なって生まれた、2027年2月17日限定の団体貸切列車企画です。美食と生演奏、地域の歴史を織り交ぜたおもてなしは、高山線の旅を何度も経験しているリピーターにも新鮮な体験になりそうです。JTBとクラブツーリズムでコースの傾向が異なるため、宿泊先や観光内容を比較したうえで、早めに申込みを検討することをおすすめします。


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