中国東方航空は2026年10月30日、東京/羽田~北京/大興線を増便すると発表しました。現在は水曜日と日曜日の週2便体制ですが、2026年11月27日からは月曜日と金曜日の運航を追加し、週4便体制になります。すでに増便分の航空券の販売も始まっています。
日中間の航空路線は2025年11月以降、政治的な緊張を背景に地方都市を結ぶ便を中心に大幅な減便が続いてきました。そうした流れのなかで、羽田と北京を結ぶ基幹路線が増便されるのはどういう意味を持つのか、本記事では運航スケジュールの詳細から増便の背景、利用者が知っておくべき予約と空港アクセスの実務まで整理します。
増便の概要
今回の増便は、羽田発・北京大興発のどちらも曜日を2日追加する形です。現行と増便後のスケジュールを比較すると次のようになります。
| 項目 | 現行 | 2026年11月27日以降 |
|---|---|---|
| 運航曜日 | 水曜・日曜(週2便) | 月曜・水曜・金曜・日曜(週4便) |
| 便名(羽田発) | MU790 | MU790 |
| 便名(大興発) | MU789 | MU789 |
| 羽田発大興着 | 16:40発→19:50着 | 16:40発→19:50着(月水金日) |
| 大興発羽田着 | 11:10発→15:10着 | 11:10発→15:10着(月水金日) |
| 使用機材 | A321 | A321 |
使用機材は単通路のA321で、中距離国際線向けの機体です。羽田発は16時40分発なので、午前中に都内で用事を済ませてから出発できる時間帯になっています。大興発は11時10分発で、北京を午前に出発して羽田に昼過ぎに到着する設定です。
羽田~北京大興線はすでに中国南方航空がデイリー運航を行っており、今回の中国東方航空の増便分を合わせると、この路線全体では週11便体制になります。1日あたり1往復以上が確保される計算で、羽田から北京大興へのアクセスは曜日を選びにくくなっていた状況から、かなり改善されることになります。
北京大興国際空港というもう一つの北京の空
増便先の北京大興国際空港は、2019年9月25日に開港した比較的新しい空港です。北京には従来から北京首都国際空港(PEK)があり、国際線・国内線とも長年ここに集中していました。首都空港の処理能力が限界に近づいたことを受け、中国政府は北京市南部に大興国際空港(PKX)を新設し、首都圏の航空需要を2つの空港に分散させる体制に切り替えました。
ここで重要なのは、2つの空港の役割分担です。中国国際航空は首都空港を拠点とし続け、大興空港では保有スロットが全体の1割程度にとどまります。一方、中国東方航空と中国南方航空は大興空港を主要拠点に据え、国内線・国際線のネットワークを大興側に集約してきました。中国東方航空にとって大興空港は、国際航空連合スカイチームのハブ空港という位置づけでもあります。つまり、羽田から北京に向かう場合、どの航空会社を使うかによって到着する空港自体が変わるという、日本国内の感覚ではあまりない状況になっています。羽田~北京首都線は中国国際航空が運航しており、羽田~北京大興線とは別路線として扱う必要があります。
事業者の意図
今回の増便をどう読むかを考えるうえで欠かせないのが、2025年11月以降の日中関係の悪化です。当時の高市早苗首相の台湾有事に関する発言に対して中国政府が強く反発し、日本への渡航自粛を国民に呼びかけたことで、中国の航空各社は日本路線の削減に相次いで動きました。2025年11月27日時点では、12月の日中間の便のうち16%にあたる904便が運休となったと報じられており、この削減は現在も続いています。
ただし、この減便の内容を詳しく見ると、大連~関西、南京~関西、大連~福岡といった地方都市を結ぶ路線に集中していることがわかります。上海発の日本路線では、札幌・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・那覇以外の便がまとめて運休になるなど、削減の対象は主要空港以外の地方路線に偏っています。逆に、羽田や成田、関西、中部といった主要空港を結ぶ基幹路線は、便数の削減を比較的免れている傾向が見えます。
この構図から考えると、中国東方航空が今回羽田~北京大興線を増便したのは、日中関係の緩和を示すものではなく、路線網の選別が進んだ結果とみるのが実態に近いと考えられます。東京と北京という双方の首都を直結する路線は、ビジネス出張や政府・経済関係の往来など、政治情勢に左右されにくい需要を一定量抱えています。航空会社としては、収益性や需要の安定性が見込みにくい地方路線を切り、需要の厚い基幹路線に機材とスロットを集中させる方が合理的です。さらに、大興空港を自社のスカイチームハブとして育てていく中国東方航空にとって、首都圏同士を結ぶ羽田線は国際線ネットワークの骨格にあたる路線であり、ここへの投資を絞る理由がありません。今回の増便は、日本路線全体を縮小する流れの中で、数少ない「残す・伸ばす」路線として羽田~北京大興線が選ばれたという、路線ポートフォリオの最適化の一環だと捉えるのが妥当です。
もう一つ見落とされがちな要因が、日本人の訪中需要です。中国政府は日本人を含む46の国・地域を対象にした30日以内の短期ビザ免除措置を2026年末まで延長しており、この措置はビジネス出張や個人旅行での訪中の心理的・費用的な障壁を大きく下げています。中国人の訪日が政治情勢の影響で伸び悩む一方、日本発・中国着の需要はビザ免除の効果もあって底堅く推移しているとみられ、羽田~北京大興線の増便はこうした片側の需要を取り込む狙いもあると考えられます。
利用者への影響と対処法
実際にこの路線を利用する場合に気をつけたいポイントを整理します。
まず、増便分の航空券はすでに販売が始まっています。2026年11月27日以降に月曜日・金曜日発の便を使いたい場合は、早めに予約画面で空席と価格を確認しておくと安心です。月曜・金曜の便が加わったことで、水曜・日曜しか選べなかった従来よりも週末前後の日程調整がしやすくなります。出張で北京に数日間滞在し、同じ週のうちに戻りたいという使い方も、曜日の組み合わせによっては実現しやすくなります。
次に、空港の取り違えに注意してください。羽田から北京へ向かう直行便には、中国東方航空・中国南方航空が使う北京大興国際空港(PKX)行きと、中国国際航空が使う北京首都国際空港(PEK)行きの2系統があります。チケットを予約する際は、搭乗する空港がどちらなのか、そして北京到着後の目的地(ホテルや訪問先)から見てどちらの空港が便利なのかを事前に確認しておく必要があります。北京首都国際空港は市街地北東側、大興国際空港は市街地南側に位置しており、同じ「北京着」でも市内までの移動時間や移動手段が変わってきます。
大興国際空港から市内への移動は、地下鉄の大興機場線が便利です。空港直結の大興空港駅から、地下鉄10号線・19号線に接続する草橋駅までは約22分、料金は35元です。大興空港駅発の終電は23時27分、始発は5時58分のため、羽田発16時40分の便で19時50分に大興着というスケジュールの場合、到着後の入国審査・荷物受け取りを済ませても終電には十分間に合います。タクシーやライドシェアを使う場合は、市内中心部まで1時間前後かかることもあるため、到着時間帯の道路状況によって余裕を持った計画を立てることをおすすめします。
また、羽田~北京大興線は中国南方航空のデイリー運航と合わせて週11便体制になるとはいえ、曜日によって運航する航空会社が異なります。中国東方航空のマイレージプログラム「イースタンマイル」やスカイチームの提携航空会社のマイルを貯めている方は、搭乗する曜日次第で利用できる便の運航会社が変わる点を踏まえてスケジュールを組むとよいでしょう。価格面では、同じ週でも曜日によって運賃が異なることが多いため、複数の曜日で比較してから予約することで、無駄なく予約できます。
まとめ
中国東方航空は2026年11月27日から、羽田~北京大興線を週2便から週4便に増便し、中国南方航空のデイリー運航と合わせて路線全体は週11便体制になります。日中間では地方路線を中心とした減便が続くなかでの増便であり、背景には基幹路線への需要の集中と、北京大興国際空港を自社ハブとして強化する戦略があると考えられます。羽田から北京へ出張や旅行に出かける予定がある方は、搭乗する空港が大興国際空港か首都国際空港かを必ず確認したうえで、曜日ごとの運航会社や価格を比較して予約することをおすすめします。


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