2026年11月22日、JR東日本は東海道線・大船〜藤沢間に建設中の「村岡新駅(仮称)」に向けて、初めてとなる線路切換工事を実施すると発表しました。工事は22日の昼12時ごろから翌23日の朝5時ごろまでの約17時間にわたり、東海道貨物線の上下線を北側へ移設します。1925年の熱海駅開業以来、実に107年ぶりとなる東海道線の新駅計画が、いよいよ目に見える形で動き出します。
今回の工事で何が変わるのか
まず工事の中身を確認しておきます。今回移設されるのは旅客列車が走る東海道本線ではなく、貨物列車が走る東海道貨物線です。線路を北側へ振り替えることで、本線側に新駅のホームを設置するためのスペースを確保する狙いがあります。
工事実施日時は2026年11月22日(日)昼12時ごろ〜23日(月・祝)朝5時ごろの約17時間です。台風接近など悪天候で実施できなかった場合は、2027年1月10日(日)〜11日(月・祝)に延期されます。JR東日本によると、この工事にともなう東海道本線の運休は発生しませんが、一部列車で運転時刻の変更が生じます。また、村岡市民センター脇にある山崎(新藤沢)こ線橋は、工事と同じ時間帯に通行止めとなります。
今回はあくまで「第1回」の線路切換で、貨物線の移設が完了したあとには東海道本線の上り線を移設する「第2回」の切換が控えています。上り線を動かして生まれたスペースに、実際のホームを建設していく計画です。新駅の開業までには、こうした段階的な線路切換工事が複数回にわたって繰り返されることになります。
なぜ今、新駅が必要なのか
湘南貨物駅跡地に浮かぶ研究開発拠点構想
村岡新駅(仮称)が建設されるのは、1985年に廃止された旧国鉄・湘南貨物駅の跡地です。藤沢駅から東へ約2km、大船駅から南西へ約2.6kmの位置にあり、藤沢市村岡地区と鎌倉市深沢地区にまたがっています。
この一帯では、神奈川県・藤沢市・鎌倉市・JR東日本の4者が中心となり、「村岡・深沢地区」の一体的なまちづくりが進められています。新駅から徒歩圏には、製薬大手が集積する研究開発拠点「湘南アイパーク」があり、慶應義塾大学をはじめとする学術機関を含めて100社以上の企業・団体が入居しています。すでに新棟の増築計画も動いており、新駅はこの研究開発拠点をさらに拡大させるための交通結節点として位置づけられています。単なる住宅地開発ではなく、ライフサイエンス分野の産業集積地として湘南エリアを売り出す狙いが、新駅計画の根底にあります。
事業費155億円、自治体とJRの負担割合
新駅設置にかかる事業費は約155億円で、内訳は神奈川県が30%、藤沢市と鎌倉市がそれぞれ27.5%、JR東日本が15%を負担する枠組みです。自治体側の負担が全体の85%を占めており、鉄道会社よりも地元自治体が主導する形で計画が進んでいる点が特徴です。これに加えて、藤沢市は駅の南北を結ぶ自由通路(幅7m・長さ77.5m)の整備費として、約18.7億円を別途負担します。
新駅の開業予定は2032年頃、想定される1日あたりの乗降客数はおよそ65,000人とされています。これは大船駅や藤沢駅に匹敵する規模ではないものの、JR東日本にとっては大きな追加投資なしで新たな需要を取り込める立地であり、自治体側にとっては巨額の税収・雇用を生む研究開発拠点への投資回収を早める効果が期待できます。JR東日本の負担割合が15%にとどまっているのは、鉄道単体の採算というより、沿線価値の向上という地域政策の色合いが強い事業であることを裏付けています。
旅行者への影響と対策
今回の工事そのものは深夜早朝を中心とした17時間で、東海道本線の運休はありません。ただし工事当日に大船〜藤沢間、あるいはさらに広い区間で東海道線・上野東京ライン・湘南新宿ラインを利用する予定がある場合は、事前に運転時刻の変更内容を確認しておくことをおすすめします。JR東日本の公式サイトや駅の掲示、乗り換え案内アプリでは、工事の1〜2週間前を目安に詳細なダイヤが案内される見込みです。
また、村岡市民センター付近を車や徒歩で通行する予定がある場合は、山崎(新藤沢)こ線橋が工事時間帯に通行止めとなる点にも注意が必要です。江の島・鎌倉方面へ大船駅や藤沢駅を経由して向かう旅行者にとっては、当日の夜間から翌朝にかけて多少のダイヤの乱れが生じる可能性があるため、深夜バスや始発列車を利用する予定がある方は特に確認しておくとよいでしょう。
長い目で見ると、2032年頃に村岡新駅が開業すれば、大船・藤沢の間に新たな下車駅が生まれることになります。江の島や鎌倉への観光ルートが直接広がるわけではありませんが、湘南モノレール(大船〜江ノ島間約14分)や江ノ島電鉄(藤沢〜江ノ島間約11分)への乗り継ぎ拠点が一つ増える可能性があり、混雑する大船駅・藤沢駅の乗り換え客を分散させる効果も見込まれます。研究開発拠点への出張・視察で訪れる人にとっても、現状は大船駅や藤沢駅からバス・タクシーで向かうしかない湘南アイパーク周辺へ、鉄道で直接アクセスできるようになる意味は大きいといえます。今後は2026年11月22日の第1回工事、その後に予定される第2回工事と、開業までの進捗を追っていく価値があるテーマです。


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