JR四国は2026年10月29日、訪日外国人向け周遊パス「ALL SHIKOKU Rail Pass」(12月1日から正式名称「四国鉄道共通フリーパス」)の効力と価格を変更すると発表しました。同じ日にもう一つ、国内利用者向けの「自由席特急回数券」「学生トク割2枚回数券」の発売終了も発表されています。どちらも2027年春に予定されている特急「しおかぜ」「南風」の全席指定席化に関連した動きで、四国で特急列車を使う人にとっては見逃せない内容です。
何がどう変わるのか
四国鉄道共通フリーパスは、2026年12月1日発売分から効力が「自由席」から「普通車指定席」に変わります。あわせて価格も、3日間用が12,000円から15,000円に、7日間用が20,000円から23,000円に上がります。JR四国・土佐くろしお鉄道全線の特急・快速・普通列車の普通車指定席のほか、阿佐海岸鉄道・高松琴平電気鉄道・とさでん交通も乗り降り自由という内容自体は変わりません。
発売・引換の窓口も縮小されます。琴平駅と日本旅行Tis岡山支店では、2026年11月30日限りで国内発売を終了します。12月1日から2027年2月28日までは、11月30日までに発行済みの引換証(MCO)を持っている人だけが引換できる扱いになります。
もう一つの変更として、指定席券売機やみどりの券売機プラスを使った自分での指定席予約は、1枚のパスにつき6回までに制限されます。これはJR西日本の訪日外国人向けネット予約「WEST-TR」での予約と合算した回数です。7回目以降は、みどりの窓口など有人窓口での対応になります。KlookやTrip.comで購入したQRチケット利用者は、そもそも券売機での指定席発行ができず、最初から窓口対応のみとなっている点も覚えておく必要があります。
同じ10月29日、JR四国は「自由席特急回数券」(6枚つづり)と「学生トク割2枚回数券」も2026年11月30日限りで発売終了すると発表しました。利用自体は2027年2月28日まで可能です。これらの回数券は高松・徳島間や松山・宇和島間など、特急の自由席を割安に利用できるきっぷでしたが、今後はチケットレスアプリ「スマえき」のきっぷに置き換わっていきます。JR四国が示した比較では、高松・徳島間はスマえきSきっぷが2,550円に対し自由席特急回数券は1枚あたり2,555円、松山・宇和島間はスマえきSきっぷ2,880円に対し回数券1枚あたり2,888円と、ほぼ同額に調整されています。一方で学生トク割は、高松・松山間でスマえきトク割きっぷ3,900円に対し学生トク割2枚回数券が1枚あたり3,650円と、回数券の方が割安なケースも残っています。
| 区間 | スマえきの新きっぷ | 従来の回数券(1枚あたり) |
|---|---|---|
| 高松・徳島 | 2,550円 | 2,555円 |
| 松山・今治 | 1,650円 | 1,655円 |
| 松山・八幡浜 | 2,360円 | 2,366円 |
| 松山・宇和島 | 2,880円 | 2,888円 |
| 高知・須崎 | 1,560円 | 1,565円 |
| 高松・松山(学生トク割) | 3,900円 | 3,650円 |
なぜ今、この見直しなのか
特急の自由席がなくなっていく四国
JR四国とJR西日本は、2027年春から特急「しおかぜ」(岡山〜松山)と「南風」(岡山〜高知)の自由席を廃止し、全席指定席にすることを既に発表しています。しおかぜは現行5両編成のうち4・5号車が自由席、南風は3両編成のうち3号車が自由席ですが、これらがすべて指定席に切り替わります。満席時は自由席特急券と同額の立席特急券を発売する仕組みも用意されています。四国鉄道共通フリーパスが自由席効力から指定席効力に変わるのも、自由席特急回数券が廃止されるのも、この全席指定席化に合わせて「自由席という選択肢そのものを前提にしない」きっぷ体系に四国全体を移行させる作業の一環と見られます。
自由席の廃止は四国だけの動きではありません。JR東日本は房総特急「しおさい」「わかしお」で2024年3月に自由席を廃止し、JR西日本も同じ年に「サンダーバード」を全席指定化しました。JR東海・JR西日本の「ひだ」「しなの」「南紀」でも期間限定の全席指定席化が進み、北海道の特急も自由席が消えつつあると報じられています。発売管理の手間や自由席を求めて並ぶ混乱を減らし、指定席料金分の収入を安定して確保できることが、各社がこの方式に動く共通の理由です。四国の今回の見直しは、この全国的な流れに四国の特急・きっぷ体系を合わせる動きと位置づけられます。
増収増益でも値上げに向かう事情
JR四国の2026年3月期連結決算は、営業収益788億円(前期比42.6%増)、経常利益74億円(73%増)という、3期連続の増収増益・過去最高クラスの数字でした。ただしこの伸びにはM&Aによる連結範囲の拡大が効いており、鉄道事業そのものの収益力が急に改善したわけではありません。実際、JR四国単体の鉄道事業は137億円規模の営業赤字という構造を抱えたままです。経営側は2026年に入り「運賃上げをできるだけ早く」という方針も示しており、きっぷ全般の値上げに向かう姿勢がうかがえます。
四国鉄道共通フリーパスは、2026年8月の発表では3日間用が12,500円から12,000円に、7日間用が20,500円から20,000円に下がったばかりでした。それからわずか2カ月後の今回の発表で、3日間用は15,000円、7日間用は23,000円まで上がり、8月の値下げ分を大きく上回る値上げになっています。8月の改定は「国内価格を海外販売価格に統一する」という販路整理が主な目的だったのに対し、今回は効力そのものを自由席から指定席に引き上げたうえでの値上げであり、単純な価格改定ではなく「指定席という上位サービスに合わせて価格も上げる」という性格の変更だと分かります。
四国への外国人訪問需要自体は伸びています。2025年の四国4県の外国人延べ宿泊者数は206万人泊で、比較可能な2011年以降で過去最多でした。四国ツーリズム創造機構は2030年までにこれを2025年比2倍以上に増やす目標を掲げています。訪日需要が拡大基調にあるタイミングだからこそ、周遊パスを単なる割引きっぷから、指定席が確実に取れる上位サービスへと位置づけ直し、収益性を高めておく判断をしたとも考えられます。
利用者が気をつけること
四国鉄道共通フリーパスを使う予定がある人は、まず自分の旅行が11月30日までの発売・引換か、12月1日以降の発売かを確認してください。11月30日までに琴平駅や日本旅行Tis岡山支店で引換証を発行してもらえば、2027年2月28日までは旧料金・自由席効力のまま引換ができます。12月以降に新規購入する場合は、3日間用で3,000円、7日間用で3,000円の値上げを前提に旅程を組む必要があります。
指定席効力になることで、乗りたい列車の指定席を事前に確保しておく計画性がこれまで以上に重要になります。特に券売機での自己予約が6回までという制限があるため、短期間に特急を頻繁に乗り継ぐ旅程を組んでいる人は、窓口での予約も組み合わせる必要が出てきます。KlookやTrip.comでQRチケットを購入する人は、最初から窓口対応が前提になるので、みどりの窓口の営業時間や混雑状況を事前に調べておくと安心です。
自由席特急回数券や学生トク割2枚回数券を普段使っている四国在住の人は、2027年2月28日の利用期限までに使い切るか、スマえきのチケットレスきっぷへの切り替えを検討してください。高松・徳島間や松山・今治間などは価格差がほとんどないため、紙の回数券にこだわらずスマートフォンでの購入に慣れておく方が、今後のきっぷ体系の変化にも対応しやすくなります。


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