東武鉄道「TJライナー」に顔認証乗車サービス、11月5日開始

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東武鉄道は2026年10月29日、東上線の座席指定列車「TJライナー」(池袋駅発下り列車)に、顔認証だけで改札を通過できる乗車サービスを2026年11月5日から導入すると発表しました。スマートフォンもICカードも取り出さずに乗車できるサービスで、日立製作所と共同開発した生体認証プラットフォーム「SAKULaLa(サクララ)」を使います。

どう使うサービスなのか

利用の流れはこうです。まず東武のチケットレスサービス「トブチケ!」で、TJライナーの座席指定券を事前に購入します。この購入時に入力した「TOBU POINT ID」を、SAKULaLaの会員ページに登録しておくと、当日は改札を通るときに顔を向けるだけで本人確認と乗車が完了します。切符を見せる、スマートフォンの画面を出す、ICカードをタッチするといった動作がすべて不要になります。

SAKULaLaは、東武鉄道と日立製作所が共同開発した生体認証の共通プラットフォームです。日立独自の「Public Biometric Infrastructure(PBI)」という技術で、顔や指などの生体情報を復元できない形に暗号化して扱う仕組みが特徴です。もともとは2024年に「とうぶストア」で指静脈認証による決済サービスとして始まったもので、その後ファミリーマートや上新電機なども加わり、2026年までに全国100カ所以上で使われるようになっています。東武百貨店池袋本店には、2026年11月1日から2027年3月31日までの期間限定でSAKULaLaの体験コーナーも設けられ、セルフレジやホテルのセルフチェックイン機などを実際に試せるようになっています。

事業者の意図を考える

改札だけで終わらない「手ぶら生活」戦略

東武鉄道はこのサービスを「手ぶら生活の実現」というキーワードで説明しています。ここで重要なのは、SAKULaLaが鉄道の改札だけに使われる技術ではないという点です。すでに店舗の決済や入退管理にも使われており、今回のTJライナーへの導入は、東武が進めている生体認証基盤を鉄道というもう一つの生活シーンに広げる動きだと見ることができます。日立製作所にとっても、一つの技術を複数の業種・複数の企業に横展開できれば、開発コストを分散しながら事業を広げられるメリットがあります。東武と日立が共同でこの基盤を育てているのは、鉄道会社の改札システムとして売り切るより、生活のあらゆる場面で使われる認証基盤として定着させる方が、双方にとって長期的な収益機会が大きいという判断があるはずです。

「鉄道業界初」ではなく、先行する京成を追う形

今回の発表で注意したいのは、座席指定列車での顔認証乗車が「鉄道業界で初めて」というわけではない点です。京成電鉄は2025年1月24日から「スカイライナー」で顔認証乗車サービスを始めており、これは京成自身が「座席指定列車では国内初」と発表しているサービスです。東武のTJライナーは、それから約1年10カ月後に同種のサービスを導入する、後発の立場になります。

一般の改札(定期利用など)における顔認証では、大阪メトロが2026年春にほぼ全駅で導入し、JR東日本も新潟駅・長岡駅の新幹線改札で実証実験を進め、JR西日本も2023年から大阪駅・新大阪駅で試験導入しています。つまり顔認証による改札通過は、すでに複数の事業者が別々の技術で取り組んでいる分野です。東武がここに加わる意味は、改札単体の技術競争に勝つことではなく、SAKULaLaという業種横断の基盤を鉄道というわかりやすい利用シーンで実証し、利用者に「顔認証は普通のこと」と認識してもらう入り口を作ることにあると考えられます。TJライナーは通勤時間帯に満席になることも多い人気の座席指定列車で、毎日同じ利用者が繰り返し使う路線でもあるため、顔認証を定着させる実証の場として選びやすかったという面もあるでしょう。

利用者への影響と気をつけたいこと

TJライナーを普段使っている人にとって、このサービスは利用必須ではありません。これまでどおりトブチケ!できっぷを購入し、画面を見せたりICカードをタッチしたりする乗車方法も引き続き使えます。顔認証を使いたい場合だけ、SAKULaLaへの事前登録という一手間が必要になります。登録自体は東武百貨店池袋本店の体験コーナーで試すこともできるので、仕組みがよく分からない場合はまず店舗で体験してみるのも一つの方法です。

一方で、顔認証のような生体認証技術の鉄道への導入については、日本弁護士連合会が「監視社会化」のリスクを指摘する声明を出しているなど、慎重な意見があることも知っておく必要があります。公共交通という、ほかに選びにくい移動手段に生体認証が広がっていくと、利用者が実質的に使わざるを得ない状況になるという懸念です。東武・日立はPBI技術によって生体情報を復元不可能な形で暗号化していると説明していますが、第三者機関による検証結果や、情報が保管される期間・用途についての詳しい説明は、現時点では公式発表の中に十分には示されていません。プライバシーが気になる人は、無理に顔認証サービスへ登録する必要はなく、従来のきっぷやICカードでの乗車を選べるという点を覚えておくとよいでしょう。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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