札幌市営地下鉄の全3路線49駅が「マイ駅」に登録できます
「マイ駅」は、よく使う駅をあらかじめ登録しておくと、その駅の時刻表や設備情報がアプリのホーム画面からすぐ確認できる機能です。登録できるのは3駅までとなっています。
今回のアップデートで対象に加わったのは、札幌市交通局が運営する地下鉄の全3路線49駅です。内訳は南北線16駅、東西線19駅、東豊線14駅で、さっぽろ駅や大通駅のように複数の路線が乗り入れる駅を1つと数えると46駅になります。
登録しておくと、アプリのホーム画面に「さっぽろ」「大通」「新さっぽろ」といった駅の発車時刻が並びます。たとえばさっぽろ駅を登録した場合、南北線の真駒内・自衛隊前方面の発車時刻が直近から順に表示され、そこから時刻表全体を開くこともできます。あわせて駅設備情報も見られるようになり、駅ごとの構内図をPDFで確認できます。さっぽろ駅のように出入口が20か所以上あり、地下街とつながっている駅では、これがかなり役に立ちます。
もうひとつ便利なのが、GPSを使った最寄り駅の自動判別です。スマートフォンの位置情報をオンにしておけば、いま自分がいる場所からもっとも近い駅の時刻表と駅情報が表示されます。札幌に着いたばかりで駅名がわからない状態でも、アプリを開けば近くの駅の情報が出てきます。
なお、WESTERアプリの動作環境はiPhoneがiOS 16.0以上、AndroidがOS 9.0以上です。
「マイ駅」の対象はこの1年で全国に広がってきました
今回の札幌市交通局の追加は、突然出てきた話ではありません。JR西日本は2025年から2026年にかけて、自社エリア外の鉄道事業者を次々と「マイ駅」の対象に加えてきました。
| 時期 | 追加された事業者 |
|---|---|
| 2024年6月 | Osaka Metro(列車走行位置サービスとの連携) |
| 2025年6月 | JR東海エリアの在来線全駅、東海道・山陽新幹線の列車走行位置表示 |
| 2025年12月16日 | 西日本鉄道 全2路線73駅 |
| 2026年3月30日 | 東京メトロ 全9路線180駅 |
| 2026年3月31日 | 京阪電車 全8路線89駅 |
| 2026年5月13日 | 東武鉄道 全206駅 |
| 2026年6月16日 | とさでん交通の全駅(電停) |
| 2026年8月12日 | 札幌市交通局 全3路線49駅 |
並べてみると、対象が「JR西日本の沿線」から完全に離れていることがわかります。東京メトロ、東武鉄道といった首都圏の大手私鉄が入り、高知のとさでん交通のような路面電車も入り、今回は北海道の公営地下鉄が加わりました。すでに岡山電気軌道、智頭急行、若桜鉄道、井原鉄道といった中小事業者とも連携しています。西日本の鉄道アプリという枠組みは、実質的にもう外れています。
なぜ大阪の鉄道会社が札幌の地下鉄を取り込むのでしょうか
ここが今回いちばん考える価値のある部分です。JR西日本は札幌で1メートルも線路を持っておらず、この対応で直接の運賃収入が増えるわけでもありません。
手がかりは会員数にあります。JR西日本のグループ共通ポイント「WESTERポイント」の会員数は、2025年2月末に1,000万人を突破しました。同社はこの会員基盤を軸に、鉄道だけでなくホテル、ショッピングセンター、EC、そして2025年度に始めた決済サービス「Wesmo!」までをつなぐデジタル戦略を掲げています。つまりWESTERは、切符を売るための道具というより、グループ全体の顧客接点として設計されています。
そう考えると、会員を増やす余地がどこにあるかが問題になります。近畿・中国・北陸のJR西日本沿線に住む人は、すでにかなりの割合が会員になっているはずです。1,000万人という数字は、JR西日本の在来線の1日あたり利用者数を大きく上回ります。ここから先の伸びしろは、沿線の外にいる人をどう取り込むかにかかっています。
そこで効いてくるのが「旅行先で使ってもらう」という発想です。関西から札幌へ向かう人は、新千歳空港に降りてから札幌市内へ移動し、そこで地下鉄を使います。このとき、乗換案内アプリを新たに入れるのではなく、普段からICOCAの残高確認に使っているWESTERアプリでそのまま地下鉄の時刻表が見られるなら、アプリを開く回数が増えます。アプリを開く回数が増えれば、そこに並んでいるきっぷの予約導線やポイント、クーポンに触れる機会も増えます。
実際、札幌市営地下鉄でICOCAはそのまま使えます。札幌市営地下鉄はSAPICAだけでなく、Kitaca、Suica、PASMO、manaca、TOICA、PiTaPa、ICOCA、はやかけん、nimoca、SUGOCAの全国相互利用対象カードに対応しているためです。逆にSAPICAはSuicaエリアなどでは使えません。関西から来た旅行者がICOCAをそのまま使い、WESTERアプリで残高と地下鉄の時刻表を同じ画面から確認する、という流れがきれいにつながります。
利用者の規模も十分です。札幌市営地下鉄の年間乗車人員は2025年で6,381万1,497人、1日平均でおよそ63万人が乗っています。JR北海道の札幌圏と並ぶ、北海道最大級の輸送機関です。ここに接点を持つことの意味は小さくありません。
なぜJR北海道ではなく札幌市交通局なのか、という点も考えどころです。観光や出張で札幌を訪れた人が実際に使うのは、市内の移動を担う地下鉄です。すすきの、大通、さっぽろ、円山公園、新さっぽろといった目的地は地下鉄で結ばれており、観光客の利用比率が高い路線だと考えられます。旅行者への接点を最短距離で確保するなら、市内交通を押さえるほうが合理的です。
さらに時期の意味もあります。北海道新幹線は新函館北斗〜札幌の延伸工事が進んでおり、開業すれば本州から札幌へ鉄道で直通できるようになります。開業時期は当初計画から大幅に遅れていますが、その日が来れば、JR西日本エリアから札幌への鉄道移動が現実的な選択肢に入ります。そのときに「札幌でもWESTERが使える」状態を先に作っておくのは、準備として理にかなっています。
旅行者にとって何が変わるのでしょうか
札幌旅行を予定している方には、実用面での効果があります。
まず、アプリを入れ替える手間が減ります。関西や中国地方から札幌へ行く場合、これまでは現地の乗換案内を別に用意するか、汎用の経路検索アプリを使うのが普通でした。普段使っているWESTERアプリでそのまま地下鉄の時刻表が見られるなら、その手間はなくなります。
次に、駅の構内図が事前に確認できます。さっぽろ駅、大通駅は地下街と直結していて出入口が多く、目的地に近い出口を選べるかどうかで地上での歩く距離がかなり変わります。宿や商業施設の場所が決まっているなら、出発前に構内図を見て出口の番号を控えておくと、着いてから迷いません。
使い方としては、旅行の前に「さっぽろ」「大通」など滞在中によく使う駅を「マイ駅」に登録しておくのが基本です。登録できるのは3駅までなので、宿の最寄り駅、繁華街の駅、目的地の最寄り駅という組み合わせで選ぶとよいでしょう。到着後は位置情報をオンにしておけば、登録していない駅にいても最寄り駅の情報が出てきます。
一方で、期待しすぎないほうがよい点もあります。今回追加されたのは時刻表と駅設備情報で、札幌市営地下鉄の列車走行位置がリアルタイムで見られるようになったわけではありません。東京メトロのように走行位置表示まで対応している事業者とは、提供される情報の深さが違います。また、地下鉄の運賃はWESTERアプリで決済できるわけではないので、改札は交通系ICカードか切符で通ることになります。
まとめ
WESTERアプリは2026年8月12日のアップデートで、札幌市交通局の全3路線49駅を「マイ駅」登録の対象に加えました。登録すれば地下鉄の時刻表と駅設備情報がホーム画面から確認でき、位置情報をオンにすれば最寄り駅も自動で表示されます。
JR西日本にとってこの対応は、路線を持たない土地で会員との接点を作る施策です。WESTERポイント会員1,000万人という基盤を沿線の外へ広げるために、東京メトロ、東武鉄道、とさでん交通と対象を増やしてきた延長線上に、今回の札幌があります。札幌旅行を計画している関西方面の方、そして普段からICOCAとWESTERアプリを使っている方には、そのまま使える道具が1つ増えたことになります。


コメント