JR四国と台湾鉄道観光協会が連携協定|同名の松山駅から13年、四国と台湾の往来が次の段階へ

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JR四国と台湾鉄道観光協会は2026年8月19日、「鉄道観光促進に関する連携協定」を締結しました。締結式は台湾・新北市のHilton Taipei Sinbanで行われ、JR四国の四之宮和幸社長と台湾鉄道観光協会の周永暉理事長が調印しています。立会人として台湾交通部の伍勝園政務次長と、日本台湾交流協会台北事務所の片山和之代表が同席しました。四国と台湾を鉄道でつなぐ取り組みとしては、2013年から数えて6件目の協定になります。

協定で取り組む6つの内容

今回の協定は、鉄道を軸にした四国と台湾の観光振興と相互交流の促進を目的としています。連携する事項として、次の6点が挙げられています。

  • 四国と台湾の鉄道観光に関する情報発信および相互PR
  • 鉄道を活用した観光商品の造成・販売促進
  • 四国と台湾双方への観光誘客および相互送客の促進
  • 鉄道観光に関するイベント・キャンペーン等の連携
  • 鉄道観光に関する情報・知見の共有
  • その他、両者が必要と認める鉄道観光促進に関する事項

具体的な商品名や実施時期はまだ示されていません。枠組みを先に作り、中身はこれから詰めていく段階です。

2013年の同名駅から積み上げてきた13年

JR四国と台湾の関係は、駅名の偶然から始まりました。JR四国の松山駅と、台湾鉄路の松山駅が同じ名前だったのです。2013年10月13日に両駅が友好駅協定を結んだのが最初の一歩でした。

そこからの流れは次のとおりです。

時期 内容
2013年10月13日 JR四国「松山駅」と台湾鉄路管理局「松山駅」が友好駅協定を締結
2016年2月25日 JR四国と台湾鉄路管理局が友好鉄道協定を締結
2019年7月18日 JR四国と台湾交通部観光局が鉄道観光協力に関する覚書を締結
2024年4月19日 「藍よしのがわトロッコ」と台湾鉄路「藍皮解憂號」が姉妹列車協定を締結
2025年3月15日 JR四国と台北メトロが友好協定および松山駅姉妹駅協定を締結
2025年7月14日 JR四国と台湾交通部観光署が鉄道観光協力に関する覚書を再締結
2026年8月19日 JR四国と台湾鉄道観光協会が鉄道観光促進に関する連携協定を締結

注目したいのは2024年の姉妹列車協定です。JR四国の「藍よしのがわトロッコ」と台湾鉄路の「藍皮解憂號」は、どちらも青い車体の観光列車で、窓を開けて風を受けながら川や海沿いを走ります。名前の偶然から始まった交流が、10年かけて「同じ性格の列車どうしの提携」という具体的な中身に育っていったことがわかります。

2025年3月には台北メトロとも協定を結んでおり、台湾側の相手は台湾鉄路、観光行政、地下鉄事業者と広がってきました。今回の台湾鉄道観光協会は、台湾で鉄道を使った観光の振興に取り組む団体です。鉄道事業者でも行政でもない、旅行商品を作る側に近い相手と組んだことになります。

なぜJR四国はここまで台湾に力を入れるのでしょうか

13年で6件という頻度は、他の事業者と比べても多いほうです。この熱心さの理由は、JR四国の決算を見ると見えてきます。

鉄道を運ぶだけでは赤字が埋まらない構造だからです

JR四国が2026年5月13日に発表した2025年度の連結決算は、営業収益788億円で前年度から235億円の増収、経常利益74億円、親会社株主に帰属する当期純利益48億円で3期連続の黒字でした。数字だけ見れば好調です。

ただし営業利益は103億円の赤字です。前年度から26億円改善しましたが、本業の段階では依然として大きく赤字になっています。それでも経常利益が74億円の黒字になるのは、営業外損益が178億円のプラスだからです。国からの支援による鉄道建設・運輸施設整備支援機構への貸付利息や、特別債券の利息といった営業外の収益が、本業の赤字を上回っている構造です。

セグメント別に見ると、運輸の営業収益は312億円で前年度の296億円から16億円増えました。瀬戸内国際芸術祭2025や大阪・関西万博の開催が効いています。逆に言えば、大きなイベントがあってようやくこの伸びです。四国には新幹線がなく、沿線人口は減り続けています。通勤通学の定期収入は自然には増えません。

この構造で運輸収入を伸ばそうとすれば、四国の外から人を連れてきて列車に乗ってもらうしかありません。しかも、都市間の移動だけを目的とする人ではなく、鉄道に乗ること自体を旅の目的にしてくれる人が望ましいわけです。台湾からの旅行者は、この層と大きく重なります。

四国と台湾は、すでに空でつながっているからです

協定が実効性を持つかどうかは、送客のパイプがあるかで決まります。四国の場合、3つの空港すべてが台湾と結ばれています。

区間 航空会社 運航状況
高松〜台北/桃園 チャイナエアライン 毎日運航
高松〜高雄 チャイナエアライン 2026年9月17日から2027年3月27日まで週3往復(月・木・土)の定期チャーター
松山〜台北/桃園 エバー航空 週3往復
高知〜台北/桃園 タイガーエア台湾 定期チャーター(水・土)、2026年10月24日まで運航期間を延長

高知線は搭乗率が9割を超える好調が続いており、当初は2026年3月28日までの予定だった運航期間が10月24日まで延ばされました。高松〜高雄線は9月17日に始まる新しい区間です。台湾側から見ると、四国は台北からも高雄からも直行便で入れる場所になっています。

台湾鉄道観光協会の周永暉理事長も、締結にあたって高松空港・松山空港・高知空港と台湾を結ぶ定期便が運航されていることに触れ、交流の基盤が整っていると述べています。空路があるところに鉄道商品を載せる、という順番です。

台湾からの旅行者の増え方が、四国の宿泊統計に表れています

四国運輸局のまとめによると、2025年の四国4県の外国人延べ宿泊者数は207万8790人で、前年比24.9%増でした。このうち香川県は112万7070人で24.3%増です。同じ期間に日本人の宿泊者数は減っており、四国の宿泊需要を押し上げているのは外国人旅行者ということになります。

台湾市場そのものも伸び続けています。2025年の訪日台湾人は676万3424人、旅行消費額は1兆2033億円で、いずれも2年連続の過去最高でした。2026年8月19日に日本政府観光局が発表した7月の訪日外客数では、台湾が76万3800人と単月として過去最高を記録し、初めて70万人を超えています。

台湾からの旅行者の特徴は、訪日回数が多いことです。何度も来ているので、東京・大阪・京都はすでに回り終えています。次にどこへ行くかを探している層が厚く、台湾側ではこうした旅を「深度旅遊」と呼んでいます。特定のテーマを決めて地方を深く歩く旅で、鉄道での周遊とは相性がよい旅行スタイルです。四国のように、鉄道に乗ること自体が目的になる観光列車を複数持っている地域にとっては、狙いを定めやすい相手だと言えます。

台湾側にも組む理由があります

この協定は片方が得をするだけの話ではありません。台湾鉄道観光協会の側から見ると、日本のローカル線が観光でどう生き残ってきたかは参考になる事例です。台湾でも利用が西部幹線に集中する一方、東部や南部の路線をどう活かすかという課題があります。姉妹列車の「藍皮解憂號」は、台湾南端の南廻線を枋寮から台東まで82.48キロ走る観光列車で、引退が近づいていた旧型客車を改装して仕立て直した列車です。既存の路線と車両の使い道を作り直した例だと言えます。

姉妹列車協定を結んだ相手が「藍よしのがわトロッコ」だったのも、偶然ではないでしょう。窓のない開放的な車両で川沿いをゆっくり走る列車という共通点があり、運営のノウハウをそのまま参照できます。日本から台湾へ送客するルートを作りつつ、運営の知見を持ち帰る。台湾側にとっての実利はそこにあると考えられます。

旅行者にとって何が変わるのでしょうか

現時点では、具体的な商品や割引が発表されたわけではありません。ただ、協定の連携事項に「鉄道を活用した観光商品の造成・販売促進」と「イベント・キャンペーン等の連携」が入っていますので、今後は次のような形で表に出てくると考えられます。

台湾から四国へ来る旅行者に向けては、台湾で販売する四国の鉄道パスや、観光列車の予約を組み込んだ旅行商品が想定されます。すでにJR四国は外国人向けのフリーきっぷを設定していますので、その販路が台湾側で広がる形になるでしょう。

日本から台湾へ行く側にとっても、無関係ではありません。藍皮解憂號のように、台湾側の観光列車の情報が日本語で手に入りやすくなることが期待できます。藍皮解憂號は駅の窓口では乗車券を売っておらず、運行を担う旅行会社のサイトや提携する予約サイトからしか買えません。日本の観光列車とは手順が違うため、個人で手配するには情報を集める必要がありました。相互PRが進めば、この壁は下がります。

四国を旅行する予定がある方に、いま実際に役立つ話をひとつ挙げると、四国発の台湾行き航空便は選択肢が増えています。高松からは台北へ毎日、9月17日からは高雄へも週3往復飛びます。松山からは台北へ週3往復、高知からは10月24日まで台北への定期チャーターがあります。関西空港まで出る前提で計画を立てていた方は、地元の空港から直行できないか確認してみてください。

まとめ

JR四国と台湾鉄道観光協会は2026年8月19日、鉄道観光促進に関する連携協定を締結しました。情報発信・商品造成・相互送客・イベント連携・知見共有の6項目で協力します。2013年の松山駅どうしの友好駅協定から数えて6件目の協定です。

JR四国がここまで台湾に力を注ぐのは、2025年度も営業段階で103億円の赤字を抱え、運輸収入を伸ばすには四国の外から旅行者を呼ぶしかないという構造があるからです。四国の3空港すべてが台湾と直行便で結ばれており、送客のパイプはすでに物理的に存在しています。台湾市場は2026年7月に単月過去最高の76万3800人を記録し、リピーターが地方を深く歩く旅行スタイルへ移りつつあります。

四国の鉄道旅行に興味がある方、あるいは台湾の観光列車に乗ってみたい方にとっては、今後1年ほどの間に具体的な商品や情報が出てくる可能性が高い分野です。四国から台湾へ飛びたい方は、高松・松山・高知の各空港から直行便が出ていますので、まず地元の空港を調べることをおすすめします。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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