7月の訪日客は344万人で過去最多|台湾が初の70万人超、中国は56%減が続きます

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日本政府観光局(JNTO)は2026年8月19日、2026年7月の訪日外客数の推計値を発表しました。総数は344万2100人で、前年同月比0.1%増です。伸び率はごくわずかですが、4か月ぶりに前年を上回り、7月としては過去最高になりました。目を引くのは中身です。台湾が単月として過去最高の76万3800人を記録して初めて70万人を超えた一方、中国は42万8200人で前年同月から56.1%減っています。国別の顔ぶれが1年前とは別物になりつつあります。

7月の数字を整理します

主要な市場の内訳は次のとおりです。

国・地域 2026年7月 前年同月比
韓国 89万4700人 31.9%増
台湾 76万3800人 26.4%増
中国 42万8200人 56.1%減
米国 28万6200人 3.3%増
香港 27万2500人 54.8%増
総数 344万2100人 0.1%増

7月として過去最高を記録した市場は17あります。韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、北欧地域、中東地域です。このうち台湾だけは、7月に限らず全ての月を通じた単月の過去最高でした。

年の累計で見ると景色が変わります。2026年1〜7月の訪日外客数は2452万7200人で、前年同期の2495万5693人から1.7%減っています。月別では1月・4月・5月・6月が前年割れでした。7月に前年を上回ったのは4か月ぶりです。つまり2026年の訪日市場は、年間を通せばまだマイナス圏にあります。

日本人の出国者数も同時に発表されています。7月は119万1300人で1.2%減、1〜7月の累計は813万5900人で4.1%増でした。訪日側が前年割れで推移する一方、日本から海外へ出る人は着実に戻っています。

台湾が初めて単月70万人を超えました

台湾の76万3800人は、月単位では過去に例のない水準です。台湾の人口は約2340万人ですので、単純計算で人口の3.3%が1か月のうちに日本へ来たことになります。2025年通年の訪日台湾人は676万3424人、旅行消費額は1兆2033億円で、いずれも2年連続の過去最高でした。2026年はこのペースをさらに上回っています。

台湾からの旅行者は、東京・大阪・京都だけを回る段階をとうに過ぎています。地方空港との直行便が増え、初めての訪日ではない層が特定のテーマを決めて地方を歩く形が増えました。日本側の観光関係者が「深度旅遊」という台湾側の言葉をそのまま使うようになったのも、この数年の変化です。

中国は前年の半分以下という状態が続いています

中国の42万8200人は、前年同月から54万人以上減った計算になります。この落ち込みは7月に始まったものではありません。2025年11月以降の日中関係の冷え込みを受けて、中国政府が国内の航空会社に日本路線の減便を指示し、渡航自粛の呼びかけが続いてきました。2026年1〜5月の中国からの訪日客は前年同期比で56%減っており、7月の56.1%減はその水準がそのまま続いていることを示しています。

航空便のほうも数字で裏づけられています。2026年1月時点で、中国大陸発の日本行きフライトのキャンセル率は40.4%に達しました。中国系航空会社は日本路線の計画座席数を、緊張が高まる前の水準の半分以下まで削っています。2026年の夏ダイヤでは、日本発着の国際線座席供給が新型コロナ後で初めて前年を下回りました。減った分のほとんどが中国便です。

中国が半減しても総数が前年並みなのはなぜでしょうか

ここが今回の発表でいちばん考えるべき点です。7月だけで中国の旅行者が54万人以上減ったにもかかわらず、総数は前年比0.1%増でした。差し引きすると、他の市場が合計で54万人分以上を積み増したことになります。

空いた座席と発着枠が台湾・韓国路線に回っています

航空会社の側から見ると、中国路線の縮小は「使わなくなった機材と時間帯」を生みます。地上係員も駐機スポットも、路線が止まれば余ります。この余った資源を捨てる会社はありません。近距離で確実に売れる路線へ振り向けます。それが台湾線と韓国線でした。

直近1か月に発表された日本発着路線の動きを並べると、方向がはっきりします。

発表内容 開始時期
スターラックス航空 名古屋/中部〜台中線を開設 2026年10月25日
スターラックス航空 沖縄/那覇〜台北/桃園線を週11往復へ増便 2026年9月1日〜10月23日
チャイナエアライン 高松〜高雄線を定期チャーターで開設 2026年9月17日
日本トランスオーシャン航空 那覇〜台北/桃園線を1日2往復へ増便 2026年10月25日
チェジュ航空 鹿児島〜ソウル/仁川線を毎日運航で再開 2026年10月25日
エアプサン 鹿児島〜釜山線を開設 2026年10月25日
パラタ航空 札幌/新千歳〜ソウル/仁川線を毎日運航へ 2026年12月1日

新千歳、高松、鹿児島、広島、那覇、中部と、並んでいるのは地方空港ばかりです。羽田や成田の発着枠は元から埋まっていますので、増やそうとすれば地方空港に向かうしかありません。そして地方空港から2〜3時間で飛べる海外は、台湾と韓国にほぼ限られます。中国路線の縮小と地方空港の余力が重なった結果、台湾線と韓国線の増便が同時多発的に起きているという構図です。

一極集中の相手が入れ替わっただけかもしれません

ただし、この数字を素直に喜んでよいかは別の問題です。7月の韓国と台湾を足すと165万8500人で、訪日客全体の48.2%を占めます。1年前は中国だけで全体の3割近くを占めていました。中国への依存が薄まった代わりに、韓国と台湾という2つの市場への依存が深まっています。

依存先が変わっただけで、構造は変わっていません。韓国も台湾も、日本との関係が政治的な事情で急に冷え込む可能性がないとは言えない地域です。2025年11月からの中国の事例が示したのは、旅行者数が政治判断で一夜にして半減しうるということでした。同じことが韓国や台湾で起きたとき、いまの訪日市場は7月の実績で言えば約半分を失います。中国のときよりも打撃は大きくなります。

もう一点、人数と消費額は別に考える必要があります。中国からの旅行者は買い物の比率が高く、1人あたりの消費額が大きい市場でした。人数が56%減ったとき、消費額が同じ幅で減るとは限らず、逆にそれ以上に減っている可能性もあります。台湾・韓国からの旅行者は訪日回数が多いリピーターの比率が高く、1回あたりの買い物額は中国の団体客より小さい傾向があります。人数の穴が埋まったことと、金額の穴が埋まったことは、分けて見たほうがよいでしょう。

旅行者への影響と、いま取れる対策

日本から海外へ出る立場で考えると、影響は3つの方向に出ます。

中国方面へ行きたい方にとっては、直行便の選択肢が減った状態が続いています。上海や北京への便は減便が続いており、地方空港発の中国路線は運休したままの区間が少なくありません。中国への渡航を計画するなら、便数が限られる前提で早めに押さえるか、羽田・成田・関西など便数が残る空港まで出る計画にしたほうが確実です。

台湾・韓国へ行きたい方にとっては、しばらく買い時が続きます。冬ダイヤに向けて増便が相次いでいるということは、座席の供給が需要より先に増えるということです。供給が先に増えれば運賃は下がりやすくなります。とくに地方空港発の路線は、就航直後に記念運賃が出ることが多いので、発売開始のタイミングを見ておくと安く買えます。お住まいの地域の空港から台湾・韓国へ直行便が飛んでいないか、一度確認してみてください。羽田や関西まで移動する前提で組んでいた行程が、地元の空港発で完結するようになっている場合があります。

国内を旅行する方にとっては、混雑と宿泊料金の高止まりが続くと考えておいたほうがよいでしょう。訪日客の総数は前年並みで、減っていません。中国の団体客が減った分、京都や大阪の一部では以前ほどの混み方ではないという声もありますが、台湾・韓国からの個人旅行者は地方に散る傾向があります。これまで空いていた地方の観光地や宿が取りにくくなる形で、混雑の場所が移動しています。人気の宿は早めに押さえてください。

まとめ

2026年7月の訪日外客数は344万2100人で前年同月比0.1%増、7月としては過去最高でした。台湾が単月過去最高の76万3800人で初めて70万人を超え、韓国は89万4700人で31.9%増、一方の中国は42万8200人で56.1%減です。1〜7月の累計は2452万7200人で、前年同期比1.7%減という状態が続いています。

中国が半減しても総数が前年並みを保っているのは、中国路線で余った機材と時間帯が台湾線・韓国線に振り向けられ、地方空港発の増便が相次いだからです。ただし韓国と台湾の2市場で全体の48.2%を占めており、依存の相手が入れ替わっただけという見方もできます。

海外旅行を計画している方は、台湾・韓国方面なら地方空港発の新規路線と就航記念運賃を狙う価値があります。中国方面なら便数が限られる前提で早めに動いてください。国内旅行を計画している方は、訪日客の総数が減っていないことを前提に、宿と交通の予約を前倒しすることをおすすめします。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

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