国内線は伊丹線が23.8%減、搭乗率も3.2ポイント低下
国内線の路線別実績を見ると、新千歳(札幌)線だけが前年比6.2%増の41万2256人と前年を上回りました。これに対し、羽田~伊丹を結ぶ伊丹線は23.8%減の19万3029人と、国内線の中で最も大きな落ち込みとなっています。搭乗率も84.4%で前年同月より3.2ポイント下がりました。座席供給量(ASK)は4.6%減らしているにもかかわらず、有償旅客キロ(RPK)は8.1%減と、供給を絞るペース以上に需要が落ち込んでいる状況です。
国内線不振の裏にある「大阪・関西万博の反動」
伊丹線の大幅減を見ると新幹線への需要シフトを疑いたくなりますが、数字を細かく追うとそれだけでは説明がつきません。比較対象となる2025年8月のANA国内線は、旅客数が前年比107.5%・搭乗率87.6%という、むしろ異常に高い数字でした。これは2025年4月13日から10月13日まで開催されていた大阪・関西万博の需要が押し上げた結果です。万博来場者数は会期半年で約2557万8900人にのぼり、このうち67.1%が関西2府4県在住者という地元客中心の構成でした。お盆期間(2025年8月8~17日)には関西方面の搭乗率が93.3%に達しており、2025年8月はまさに万博特需のピークにあたる月でした。
つまり2026年8月の伊丹線23.8%減は、新幹線への恒常的な需要流出というより、前年にあった万博特需が消えたことによる反動減の側面が大きいと見られます。実際、山陽新幹線のお盆期間(2026年8月7~16日)の利用者数は192万9000人で前年比100%と横ばいにとどまっており、新幹線側に目立った増加は確認できません。「ANAの国内線客が新幹線に流れた」と単純に結論づけられる材料は見当たらないのです。
ただし、構造的な要因が並行して存在していることも見逃せません。ANAは国内線について、供給過多の状態にあり新幹線の存在によって運賃を上げにくいと説明しています。2026年度からの新中期経営計画では、2030年までに国内線の座席キロ(ASK)を1%削減する方針を掲げました。2026年度夏ダイヤでは関西国際空港発着の国内線を5都市12往復から羽田のみ5往復へと大幅に縮小し、需要をLCCのピーチへ移す、いわゆる「ピーチシフト」を鮮明にしています。さらに2026年度下期(10月25日以降)には、伊丹を増便する一方で羽田・福岡・松山・大分を減便する路線再編を予定しており、今回発表された8月の数字は、この下期の構造改革が本格化する前の段階のものです。万博特需の反動減と、ANA自身が進める供給抑制・路線再編という2つの要因が重なって、3カ月連続の前年割れという結果に表れていると見るのが妥当です。
国際線は欧州が牽引、インバウンドではなく日本人の海外需要
国際線では欧州方面が旅客数79,673人・前年比4.9%増、搭乗率84.9%と国際線の中で最も高い水準を記録しました。背景として考えられるのは、2026年2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃後に生じた中東情勢の混乱です。エミレーツ・カタール・エティハドといった中東3大キャリア経由で欧州へ向かうルートに運航の乱れが生じ、ドバイ・ドーハ・アブダビを経由しない日本発の欧州直行便へ需要がシフトした可能性が指摘されています。中東系キャリアは6月以降に運航を再開・増便していますが、年前半に生じた需要シフトの効果が8月時点でも残っていたとみられます。
一方で、2026年8月の訪日外国人数は309万8900人で前年比9.6%減となっており、中でも中国からの旅行者が59.0%減と急落しています(韓国は28.7%増、台湾は7.3%増と好調)。インバウンド全体はむしろ減少基調にあるため、ANA欧州線の伸びをインバウンド需要の拡大で説明することはできません。欧州線の好調は、日本人による海外渡航(アウトバウンド)需要や、中東経由ルートから直行便への乗り換えが主因と考えるのが筋が通ります。ANAは2026年度下期に国際線の運航便数を前年比104%まで拡大する計画で、羽田~ミラノ線は下期中に毎日運航化する方針も示しており、供給面でも欧州路線の強化を進めています。
旅行者への影響
国内線は今後も供給を絞る方向で進むため、2026年度下期に減便対象となる羽田・福岡・松山・大分や、繁忙期の伊丹線を含む関西方面を利用する予定がある人は、早めの予約が有利になります。逆に新千歳線のように需要が堅調な路線は、比較的席を確保しやすい状況が続く可能性があります。
国際線、特に欧州線は供給が拡大していく方向にあるため、座席は今より取りやすくなり、運賃面でも落ち着く方向に動く余地があります。ただし中東情勢の影響を受けやすい経由便を利用する予定がある人は、出発直前まで運航状況が変わる可能性があるため、公式サイトで最新情報を確認しておくことをおすすめします。

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