JR四国『下灘往復きっぷ』10月9日発売、日本一海に近い駅がスマえきで割引に

交通・観光ニュース

JR四国が、予讃線の下灘駅へ向かう観光客向けに「下灘往復きっぷ」を2026年10月9日から発売します。発売期間・利用期間ともに区切りを設けない通年商品で、チケットレスアプリ「スマえき」で購入すると、窓口で買うよりも安くなる仕組みになっています。

下灘往復きっぷの内容

下灘往復きっぷは、松山駅と下灘駅を結ぶ普通列車の普通車自由席が利用対象です。「ゆき」「かえり」がセットになった往復きっぷで、利用当日限り有効です。

価格はスマえき専用と窓口発売用で異なります。スマえきで購入すると大人1,200円、小児600円です。窓口で購入すると大人1,260円、小児620円になります。松山から下灘までの片道運賃は630円なので、単純に往復すると1,260円かかります。つまり窓口発売用は通常の往復運賃と同額で、スマえき専用のほうだけが60円、率にして4.8%ほど安くなる設計です。

スマえきとは何か

スマえきは、JR四国が2024年3月から提供しているチケットレスサービス「しこくスマートえきちゃん」の略称です。クレジットカードやPayPayで決済してスマートフォンにきっぷを表示し、そのまま乗車できます。高松駅・高知駅にはスマえき専用の改札機が設置されていて、画面のQRコードを読み取らせることもできます。

利用するにはまずスマえきのアプリまたはウェブサイトで会員登録とクレジットカードまたはPayPayの登録を済ませておく必要があります。下灘往復きっぷはこのスマえき上の商品として販売されるため、紙のきっぷのように当日いきなり窓口で安く買うことはできません。

事業者の意図、赤字区間でのデジタル専用きっぷという選択

下灘駅があるのは、予讃線の向井原駅から伊予大洲駅までの区間で、JR四国は観光ブランドとして「愛ある伊予灘線」という名称を付けています。この区間は、JR四国が公表している2024年度の線区別収支で赤字が大きい線区の上位に入っています。営業係数は直接費だけで計算しても188、保線や管理にかかる共通費まで含めると379です。100円の収入を得るために、直接費だけで188円、共通費も含めると379円のコストがかかっている計算になります。

この区間でJR四国がすでに成果を上げているのが、観光列車「伊予灘ものがたり」です。2021年の運行開始から4年間で延べ9万人が利用し、年間で9,600万円の増収効果があったと報告されています。下灘往復きっぷも、この路線で観光需要を収益に変えてきた流れの延長線上にある商品と見てよさそうです。

ただし今回のきっぷは、割引額そのものは60円とわずかです。割引を目的にした商品というより、スマえきという自社のチケットレスサービスへ利用者を誘導することが主眼にあると考えられます。JR四国は2024年1月の「スマえき(か)しこく1日フリーきっぷ」や、2026年2月に発表した「スマえき若者限定四国フリーきっぷ」など、スマえき専用の商品を相次いで投入してきました。三島会社と呼ばれる経営基盤の弱いJR四国にとって、窓口業務を減らして人件費を圧縮することは重要な経営課題です。下灘駅のように知名度が高く、SNSでの発信も多い観光地に小口のデジタル専用きっぷを置くことで、話題性のある駅への訪問をそのままアプリ利用者の拡大につなげる狙いがあるのではないでしょうか。

下灘駅は「日本一海に近い駅」として知られる無人駅で、伊予灘を望むホームの景色が人気を集めています。SNS上では「#下灘駅」のタグを付けた投稿が2023年4月時点で10万件を超えていたという調査もあり、写真を撮りに訪れる観光客の多い駅です。1日あたりの平均乗降人数はおよそ60人程度とされ、地元の利用だけでは路線を支えきれない規模であることも、観光需要の取り込みに力を入れる理由になっています。

旅行者への影響と対処法

松山から下灘駅へ日帰りで訪れる場合、スマえきを使えば往復1,200円で済みます。紙のきっぷを窓口で買うよりも60円安くなるので、事前にスマえきの会員登録とカード登録を済ませておくと得です。登録自体はきっぷを使う前日までに完了させておくと当日の操作がスムーズになります。

下灘駅は無人駅で、駅前に売店やコンビニはありません。飲み物や軽食は松山駅や途中の伊予市駅などで用意しておくことをおすすめします。また下灘駅を通る普通列車は本数が多くないため、訪問前に時刻を調べて滞在時間と合わせておくと、長時間駅で列車を待つような事態を避けられます。夕方の時間帯は伊予灘に沈む夕日が駅のホームから見えることでも知られているので、日没の時刻に合わせて列車を選ぶのも楽しみ方のひとつです。

スマえきの利用に不安がある場合、窓口で購入する従来の往復乗車券(1,260円)も変わらず利用できます。スマートフォンの操作に慣れていない方や、同行者が多く個別にきっぷを用意したい場合は、窓口発売用を選んでも大きな不利益はありません。

ぴりか

地理や旅行が大好きな一般人。東京出身ですが、四国、九州など転々と移住し、今は北陸に住んでいます。学生時代に47都道府県を自転車で制覇。国内旅行業務取扱管理者の資格あり。JGC取得済み。

ぴりかをフォローする
交通・観光ニュース

コメント